ハリケーンランプづくりの音/文香づくりプロジェクト
- 2019/09/08
大阪府八尾市 日本で唯一のハリケーンランプづくりの音
音と手紙で日本を旅する「SUNDAY’S POST」。今回、お届けするのは、あるものづくりの音です。それは……。小山「このランプですね?」
宇賀「はい、これは“ハリケーンランプ”というものです」
小山「古い山小屋の軒先に吊るされていたり、丸太小屋の中で灯っているようなイメージですよね」
宇賀「オイルランプの一種で、船とか馬小屋とか、主に屋外で使われてきたランプ。嵐の中でも消えないということで、ハリケーンランプと呼ばれているそうです」
最近のアウトドアブームもあって、キャンプで使うため、そしてインテリア用に人気を集めているハリケーンランプなのですが……。
宇賀「ただ、日本でこのランプを作ることができる工房は、いま、たった1軒しかないそうです」
小山「これ、パッと見は日本製には見えない感じですよね。ヨーロッパらしい感じ」
宇賀「工房があるのが、大阪の八尾市です。大正13年で、名前は『WINGED WHEEL』。代表は5代目の別所由加さん。20歳で工房に入って、現在30歳。まだお若いんですね」
小山「女性の方なんですね。どうやって作っているんですかね?」
日本で唯一、ハリケーンランプの製造を行なっているWINGED WHEEL(ウィングド・ウィール)。工房があるのは、大阪府八尾市の町工場のはずれ。5代目の別所由加さんは今、お母様と2人で工房を切り盛りしています。
「元々は大阪の金物問屋さんが、海外製のハリケーンランプを扱っている会社さんで。もっといい日本製のものが欲しいっていうことで、私のひいおじいちゃんのおじいちゃんに話が行ったんですけど、その時は難しくてできなくて。そのあと、私のひいおじいちゃんが『じゃあ10年はかけていいもの作ったろ』ということで生まれたのが、WINGED WHEELのハリケーンランプなんです」
会社は成長を重ねるものの、倒産の危機を迎えたことも。その時は4代目で由加さんのお母さん、二三子さんが、なんとか再建したと言います。
ブリキの一枚板から、専用の機械と手の加工でパーツを作り、組み立てていくハリケーンランプ。完成までの工程は300もあると言われるほど、手間と労力がかかります。
由加さんは元々、音楽大学でドラムの勉強をしていましたが、20歳の時に、工房を継ぐと決めて中退。当時、お母さんには猛反対されました。
「私がランプ屋という家業を継ごうと思ったのは、母がやってきたことをずっと見ていたから。あんまり本人には言わないですけど。ランプ屋というのはどういう仕事なのかを、母がずっと教えてくれたというか、先代がどういう気持ちでやってきたのかを見せてくれたんですよね」
機械は生きている、機嫌がある、と由加さんは言います。「今日、作業できてても明日はまったくできひんていうことがザラにあるんですよ、うちの子らは。あ、子らなんて言ったら怒られるわ、機械は私よりも先輩なんで(笑)。この方々が、私を見て、選んでいると思うので。私の機嫌が悪いのもすぐに見抜いてヘソ曲げはるし。仲良くなっていかんと」
油の匂いが染み込んだ先輩達に囲まれて、大正13年からの歴史がある、ハリケーンランプを作り続ける、由加さんとお母さん。でも、ある時、2人の前に、大きな壁が立ちはだかりました。
それは、ランプの製造のコツもつかみ、売れ行きも順調だった頃に起こりました。先代から作りだめがしてあったランプのパーツを使いきり、金型で新しいものを作ろうとしたところ……なんと、金型そのものが壊れていたのです。
「なんでこんなにグチャグチャなん? って金型を見た時に思って。大型と面型って上下があるんですけど、その組み合わせがよくわからないままで、欠けているものがわーっと出てきたんです。
おそらくですけど、1回で作るパーツの量が何千個とかの世界なんですね。最後に金型が摩耗しても、次に作る時は何年も先だから……その時には職人の代が変わっていて、先延ばし先延ばしで、私の代で回ってきたのかもしれない」
状態のあまりの酷さ、そして修理にかかる金額の大きさに、一時は「もう作ることができない。」と絶望した由加さん。
しかし、その後はクラウドファンディングで修理に必要な資金を募り、金型はなんとか再生にも成功! 危機を乗り越えました。でも、まだまだ揃っているパーツは3分の2ほどだと言います。
「でもまあ、3分の2はあるんで。行けるっていう自信はあるんで、なんとか。でもまだまだ道のりは長いですね。今はお金が貯まったらまた修理をして、っていう状態で。また新しいパーツを作る時に、蓋を開けてみたら金型が潰れていた、っていうこともあるんでね」
苦労のバトンを託してきた先代のことを、由加さんは今、どう思っているのか、聞いてみると……。
「私が死んだら、上のどっかで会うだろうから、その時は全員、一人ずつ殴っていく!(笑) おじいちゃんもやし、みんなデータを残さないで……すごく感謝はしているけど、こんな素晴らしいものをずっと作り続けて。でも、それ以外でめちゃめちゃ腹も立っているんで、みんなシバいていく!って(笑)」
最後に、由加さんとお母さんに、大正13年から受け継いできたハリケーンランプへの想いを聞いてみました。
まずはお母さんから。「父がいつも言っていたんですけど、火を囲んで男女が向かい合って座ったら、炎が瞳に映って恋が生まれる、って。それに尽きると思います。だからもう、ハリケーンランプじゃなくて、直火ですわ、もう。それを続けていきたいです」
由加さんは……「大正13年から続いてきて、形を変えることはこの先もないんですけど、うちの一番の魅力は、炎なんですよ。どれだけ美しく炎を灯せるかっていうことに尽きます。海外製品よりもいいものを作ろうというのは、『美しく保つ炎を作りたい』っていう先代の想いがそこにあるんです。私もすごく、純粋に炎が大好きなんですよ。せやから、うまく言えないけど、ハリケーンランプを守っていくっていうのは……(お母さんと)一緒やなあ、直火の炎を守っていきたいんですよ。それにしかない魅力がほんまにあるので。今、替えがない、唯一無二の魅力を守っていきたい。それがいちばんの想いですね」
小山「さっき、ディレクターがランプを持ってきた時に『話を聞くと欲しくなりますよ』って言っていたんですけど……本当に欲しくなりましたね」
宇賀「なりましたよね。ただ、今は予約販売のみで……なんと2年待ちだそうです」
小山「2年待ち!? これ、炎は見れないんですか?」
宇賀「つけてみましょう!」
薫堂さんに、ランプに火を灯してもらいました。
小山「これ、2つに炎が割れている状態ですね。少し芯を下げていくと……」
宇賀「あ、小さくなった。いいですね、きれい!」
スタジオの明かりも落として、いい雰囲気に。
小山「炎がハートの形みたいになるんですね。宇賀さんの瞳に炎が……あ、映ってますね!」
宇賀「炎を見つめる瞳ですよ」
小山「なんかこう、好きになってしまいそうな(笑)」
宇賀「(笑)」
小山「あの由加さんも面白かったですね。ご先祖様に会ったらシバきたいって」
宇賀「ねえ、面白い人でしたね。
実は、WINGED WHEELでは創立95年を記念して、限定ランプの販売をおこなう予定だそうです。9月下旬を予定しているそうです」
別所由加さん、お母さん、ありがとうございました!
95周年記念限定ランプの情報も含めて、WINGED WHEELの情報はこちらから。
「WINGED WHEEL」
宇賀「ただ、日本でこのランプを作ることができる工房は、いま、たった1軒しかないそうです」
小山「これ、パッと見は日本製には見えない感じですよね。ヨーロッパらしい感じ」
宇賀「工房があるのが、大阪の八尾市です。大正13年で、名前は『WINGED WHEEL』。代表は5代目の別所由加さん。20歳で工房に入って、現在30歳。まだお若いんですね」
小山「女性の方なんですね。どうやって作っているんですかね?」
日本で唯一、ハリケーンランプの製造を行なっているWINGED WHEEL(ウィングド・ウィール)。工房があるのは、大阪府八尾市の町工場のはずれ。5代目の別所由加さんは今、お母様と2人で工房を切り盛りしています。
「元々は大阪の金物問屋さんが、海外製のハリケーンランプを扱っている会社さんで。もっといい日本製のものが欲しいっていうことで、私のひいおじいちゃんのおじいちゃんに話が行ったんですけど、その時は難しくてできなくて。そのあと、私のひいおじいちゃんが『じゃあ10年はかけていいもの作ったろ』ということで生まれたのが、WINGED WHEELのハリケーンランプなんです」
会社は成長を重ねるものの、倒産の危機を迎えたことも。その時は4代目で由加さんのお母さん、二三子さんが、なんとか再建したと言います。
ブリキの一枚板から、専用の機械と手の加工でパーツを作り、組み立てていくハリケーンランプ。完成までの工程は300もあると言われるほど、手間と労力がかかります。
由加さんは元々、音楽大学でドラムの勉強をしていましたが、20歳の時に、工房を継ぐと決めて中退。当時、お母さんには猛反対されました。
「私がランプ屋という家業を継ごうと思ったのは、母がやってきたことをずっと見ていたから。あんまり本人には言わないですけど。ランプ屋というのはどういう仕事なのかを、母がずっと教えてくれたというか、先代がどういう気持ちでやってきたのかを見せてくれたんですよね」
機械は生きている、機嫌がある、と由加さんは言います。「今日、作業できてても明日はまったくできひんていうことがザラにあるんですよ、うちの子らは。あ、子らなんて言ったら怒られるわ、機械は私よりも先輩なんで(笑)。この方々が、私を見て、選んでいると思うので。私の機嫌が悪いのもすぐに見抜いてヘソ曲げはるし。仲良くなっていかんと」
油の匂いが染み込んだ先輩達に囲まれて、大正13年からの歴史がある、ハリケーンランプを作り続ける、由加さんとお母さん。でも、ある時、2人の前に、大きな壁が立ちはだかりました。
それは、ランプの製造のコツもつかみ、売れ行きも順調だった頃に起こりました。先代から作りだめがしてあったランプのパーツを使いきり、金型で新しいものを作ろうとしたところ……なんと、金型そのものが壊れていたのです。
「なんでこんなにグチャグチャなん? って金型を見た時に思って。大型と面型って上下があるんですけど、その組み合わせがよくわからないままで、欠けているものがわーっと出てきたんです。
おそらくですけど、1回で作るパーツの量が何千個とかの世界なんですね。最後に金型が摩耗しても、次に作る時は何年も先だから……その時には職人の代が変わっていて、先延ばし先延ばしで、私の代で回ってきたのかもしれない」
状態のあまりの酷さ、そして修理にかかる金額の大きさに、一時は「もう作ることができない。」と絶望した由加さん。
しかし、その後はクラウドファンディングで修理に必要な資金を募り、金型はなんとか再生にも成功! 危機を乗り越えました。でも、まだまだ揃っているパーツは3分の2ほどだと言います。
「でもまあ、3分の2はあるんで。行けるっていう自信はあるんで、なんとか。でもまだまだ道のりは長いですね。今はお金が貯まったらまた修理をして、っていう状態で。また新しいパーツを作る時に、蓋を開けてみたら金型が潰れていた、っていうこともあるんでね」
苦労のバトンを託してきた先代のことを、由加さんは今、どう思っているのか、聞いてみると……。
「私が死んだら、上のどっかで会うだろうから、その時は全員、一人ずつ殴っていく!(笑) おじいちゃんもやし、みんなデータを残さないで……すごく感謝はしているけど、こんな素晴らしいものをずっと作り続けて。でも、それ以外でめちゃめちゃ腹も立っているんで、みんなシバいていく!って(笑)」
最後に、由加さんとお母さんに、大正13年から受け継いできたハリケーンランプへの想いを聞いてみました。
まずはお母さんから。「父がいつも言っていたんですけど、火を囲んで男女が向かい合って座ったら、炎が瞳に映って恋が生まれる、って。それに尽きると思います。だからもう、ハリケーンランプじゃなくて、直火ですわ、もう。それを続けていきたいです」
由加さんは……「大正13年から続いてきて、形を変えることはこの先もないんですけど、うちの一番の魅力は、炎なんですよ。どれだけ美しく炎を灯せるかっていうことに尽きます。海外製品よりもいいものを作ろうというのは、『美しく保つ炎を作りたい』っていう先代の想いがそこにあるんです。私もすごく、純粋に炎が大好きなんですよ。せやから、うまく言えないけど、ハリケーンランプを守っていくっていうのは……(お母さんと)一緒やなあ、直火の炎を守っていきたいんですよ。それにしかない魅力がほんまにあるので。今、替えがない、唯一無二の魅力を守っていきたい。それがいちばんの想いですね」
小山「さっき、ディレクターがランプを持ってきた時に『話を聞くと欲しくなりますよ』って言っていたんですけど……本当に欲しくなりましたね」
宇賀「なりましたよね。ただ、今は予約販売のみで……なんと2年待ちだそうです」
小山「2年待ち!? これ、炎は見れないんですか?」
宇賀「つけてみましょう!」
薫堂さんに、ランプに火を灯してもらいました。
小山「これ、2つに炎が割れている状態ですね。少し芯を下げていくと……」
宇賀「あ、小さくなった。いいですね、きれい!」
スタジオの明かりも落として、いい雰囲気に。
小山「炎がハートの形みたいになるんですね。宇賀さんの瞳に炎が……あ、映ってますね!」
宇賀「炎を見つめる瞳ですよ」
小山「なんかこう、好きになってしまいそうな(笑)」
宇賀「(笑)」
小山「あの由加さんも面白かったですね。ご先祖様に会ったらシバきたいって」
宇賀「ねえ、面白い人でしたね。
実は、WINGED WHEELでは創立95年を記念して、限定ランプの販売をおこなう予定だそうです。9月下旬を予定しているそうです」
別所由加さん、お母さん、ありがとうございました!
95周年記念限定ランプの情報も含めて、WINGED WHEELの情報はこちらから。
「WINGED WHEEL」
手紙文化を盛り上げよう! ポスト会議#17
全国におよそ2万4千局ある郵便局と連携を取りながら、新しいムーブメントを作ったり、商品開発をしていく企画コーナー「ポスト会議」。今回は、番組オリジナルノベルティ「文香」づくりの続報をお届けします。ご協力いただいている、香りのクリエーションカンパニー「LUZ」の代表、天田徹さんをお迎えしました。
文香とは、手紙に同封して香りを届けるアイテムのこと。前回は、薫堂さんと宇賀さん、それぞれがイメージする香りを天田さんにオファー。それを元に、天田さんの会社で試作品を作ってきていただきました。
小山「僕たち、すごく漠然としたことを言いましたよね?」
宇賀「私はシャンパンの香り。お酒が好きだから」
小山「僕は夕焼けの香りって言いましたね。ちょうど番組の時間、夕焼けに匂いがついていたらどうなんだろうっていう……これ、無茶振りですよね? 難しくなかったですか?」
天田「前回、一応ベースの香りと、足したい香りをみていただいたので、それをベースに作らせていただきました」
まずはシャンパーニュをイメージした宇賀さんの香りから。
宇賀「わあ、爽やか! フルーツの感じと、ちょっと甘さもありますね」
天田「前回はムスクを少し足したいとおっしゃっていたので。それとシャンパンを混ぜて、作らせていただきました」
宇賀「私、これ好きです。甘いけど、甘いだけじゃない香りがいいですね」
小山「僕も好きですね、これ」
宇賀「もうちょっとこうしたい、っていうところが全くないです!」
天田「ないときは、これで完成になります」
宇賀さんは理想通りの香りに大満足! 続いては、薫堂さんの「夕焼けの香り」ですが……どうなったのでしょうか?
天田「2種類、ご用意しています。前回、お持ちした香りを混ぜ合わせるだけだと、夕日のイメージにはならないのですが……まずは、その時のものを混ぜた香りです」
宇賀「(かいで)あー……」
小山「『あー』って、自分のときと明らかに違うじゃないですか!(笑)」
宇賀「(笑)なんだろう、森っぽくないですか?」
天田「前回はウォーターリリーを選ばれていたので、ちょっと夕日とは違う感じですよね」
小山「確かに……」
天田「夕日、ということで、こちらでイメージしたものも作りました」
もう1つの香りをかぐと……。
小山「こっちの方がいい!」
天田「夕日が沈んでいくような、ちょっと切なさのある感じを出しました」
宇賀「これ、いいですね!」
小山「ちょっと切ない感じがありますね。これ、いただきます!
こうしてみると、きっとそれぞれ、手紙の内容も変わってきますよね。パッションというか『押せ押せ!』のときは、宇賀さんの香り。別れ話の手紙のときとかは僕の夕焼けの香りで……」
宇賀「ネガディブですね(笑)。天田さん、香りが決まった次は、どうすればいいんですか?」
天田「文香をどういう形状にするか、ですね」
小山「紙でいいんでしたっけ?」
天田「紙に香りを含浸させるかたちですね」
小山「普通はただの四角とかなんですか?」
天田「栞とか、紙を花びらの形に抜いたりとか、タイプはいろいろあるので。どういうものがいいのかを考えていただければと思います」
宇賀「私はシャンパングラスのかたちがいいな〜」
天田「紙を抜けばできますよ」
小山「夕焼けはどうしようかな、ポストにしようかな?」
宇賀「グラスに金のつぶつぶを入れたいんですよね」
香りは決まったものの、デザインに迷い始める2人。
それぞれどんなかたちの文香になるのか、続報をお楽しみに!
今週の後クレ
今回のメッセージは、青森県にある<弘前郵便局>の、対馬力さんでした!「ある配達の日が吹雪で、眉毛が凍ったり鼻毛が凍ったりする日だったんですね。で、小学校に配達さ行った時に子供たちがちょうど下校時間だったんですけども。”郵便屋さんホッカイロあげる!”って言われたんですよ。すごく嬉しいなって思ったんだけども、逆に、私はしんどい顔をしてたっていう事なんですよね。なんで、それがあってから自分が配達する時、むしろ元気づけてあげられるような、そういう配達をしなければならないと思いました。」
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