VOL.282「八女提灯」
福岡県八女市が誇る、伝統的工芸品、「八女提灯」。
江戸時代、お盆に飾る灯りとして作られたのがはじまりで、
先祖への供養の心とともに、長年、受け継がれてきました。
もともと、八女は古くからの和紙の産地。
さらに、竹林も多くあり、提灯に使われる素材に恵まれていたことから、
この地で提灯づくりが栄えました。
八女提灯の特徴は、その美しい絵柄にあります。
絵師は、下書きをせずに、直接、筆を入れて、
故人が好んだ花や風景を提灯に描いていきます。
竹の骨組みに貼った和紙の表面には、丸みや凹凸があるため、
美しい筆運びで絵を描くのは、至難の業。
熟練の技が必要です。
八女提灯の絵師で、
伝統工芸士の山口勲(やまぐち・いさお)さんのお話です。
「人間の手でつくるもの、手仕事というんでしょうかね。
いま、機械が本当に発達していますが、手仕事って何か違うと思うんです。
何か大切なものがあると思うんです。」
現在、50代の山口さんは、絵師で4人いる、八女提灯伝統工芸士の最年少。
職人の高齢化も進み、担い手は不足しているといいます。
そんななか、山口さんが一番伝えたいのは、若い人たち。
歴史のあるクラシックのものに、関心を持ってもらいたいと考えています。
「より、良いものを、若い人や子どもたちに見てもらいたいんですね。
子どもたちに合ったものを見せるのではなくて、
良いものをみてもらったほうがいいと思うんです。
何か感じることがあると思うんですね。
細やかさとか繊細さとか、手の、人間が描く生命感というんですかね。
良いものを見せる、ということですね。」
盆提灯とはいえ、お盆時期だけでなく、
一年を通して、飾ってもらえたら嬉しい。
そんな風に語る山口さん。
地域を背負う伝統工芸士として、若い世代に八女提灯の魅力を伝えながら、
これからも製作に励み続けます。