Every Sunday 12:30-12:55 JFN 38stations
2010年4月11日(日)
笠置シズ子
「東京ブギウギ」
笠置シズ子
日本で『ブギの女王』という愛称で親しまれた笠置シヅ子さん。
1914年、大正3年に香川県で生まれた彼女は、生後すぐに大阪の薪を商う商家へ養女に出されます。小さいころから歌が大好きで、小学校を卒業と共に宝塚歌劇団を目指しますが、身長が足りずに不合格。しかし、大阪松竹の養成所に合格し、13歳の時に、三笠静子という芸名で初舞台を踏みます。ステージでは、濃いめのまつ毛にぱっちりとした目、軽快なステップを踏みながら、自信満々に歌う彼女は、当時、直立不動で歌うことが常識であった舞台において驚きをもって迎えられ、人気が爆発。その後、名前を笠置シヅ子へと変え、1938年に旗揚げされた『松竹楽劇団』に参加し、日本を代表する作曲家、服部良一と共に、次々とヒットを飛ばしていきます。
当時24歳だった笠置さんの素顔は、とても地味なものだったそうです。それが、いざステージに上ると、三センチもあるかという付けまつ毛をつけ、オーケストラの音楽に合わせて、掛け声もかけながら、激しく歌い踊る人でした。その派手な動きとスウィング感は、他の女性を近寄せないほどのオーラを放っていたと言います。そんな彼女は、一作ごとに能力を発揮し、彼女の力量が増せば増すほど、作曲陣も彼女の魅力を引き出すように、新たなアレンジの曲を作っていきました。
「ジャングル・ブギ」
笠置シズ子
そのパワフルなステージは、戦争の影が迫る中、政府に目をつけられ、1939年には、丸の内の劇場への出入りを禁止されてしまうほど。そして、激しく踊らないようマイクから1メートル以内で歌うようにと指導されてしまいます。
そして時代は、戦争を経て、戦後へ。戦争で疲弊した日本に元気を与えたのは、やはり彼女でした。「東京ブギウギ」が、戦争に疲れた人々の心を開放し、大ヒットとなります。そして黒沢明監督の映画「酔いどれ天使」の主題歌として歌われた「ジャングル・ブギ」。この曲にも、彼女の斬新なアイデアがギュッと詰め込まれています。
戦時中には、慰問楽団を引き連れて各地を回り、戦後はそのパワフルな歌声とステージで暗い時代に生きる人々を励まし続けた笠置さん。常に明るい笑顔を見せていた彼女ですが、戦後間もなく婚約者をなくし、私生活はつらい日々を送ります。忘れ形見となった我が子を連れて、連日の舞台をこなしながら、撮影の合間や舞台の幕合には、子どもの育児に追われる、母親としての姿があったそうです。人々に夢を与える忙しい日々の中で、一生懸命に生きる彼女の姿は、多くの人々の心をとらえ戦後の天才と呼ばれ、戦後最初に東大総長となった南原繁を会長とする後援会が誕生し、小説家や女優など、文化人もたくさん名前を連ねていました。
「買物ブギー」
笠置シズ子
1950年には、上方落語をヒントに書かれた「買物ブギー」が誕生。軽快な大阪弁でまくしたてるこの曲は、『おっさん・おっさん』と連呼するところや笠置が練習中につぶやいた言葉を歌詞にするなど、斬新な内容に仕上っています。
その後、海外公演も果たすなど、音楽の幅を広げますが、ブギが下火になったのを機に歌手を引退。女優業に専念してからは、放送局を訪ね歩き、歌手の頃のギャラでは高くて使っていただけないので、ギャラを下げて結構ですので使ってくださいと、頭を下げて回ったそうです。女一人で子どもを育てるには、働き続けるしかない。歌手を引退してからは、鼻歌さえも歌わなかったという程、プロ意識の高いエンターテイナーでした。そんな彼女は、1980年3月30日、70歳でこの世を去ります。
軽快なブギのリズムに乗って、日本語で楽しくスウィングする笠置さん。時代を超えても、彼女の持つ歌声のパワーは変わりません。どの歌も歌詞がよく練られていて、とても楽しくなるものばかり。今一度「酔いどれ天使」の笠置さんの姿を見たくなりました。
今夜は、笠置シヅ子さんをピックアップしました。
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