音が止まり、拍手が鳴りやむと、照明は、キーボードの前にいる一人の少女だけを優しく照らす。

「次の曲は、私が昔、ソロの弾き語りで、初めてライブをした時に演奏した思い出の曲です」

そう言って彼女は、キーボードの鍵盤を、優しくなぞり始める。

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美しい旋律。"ピアノガール"。くるりの2ndアルバム "図鑑" 収録。つまりカヴァー。優しいメロディーにのって、まるで、ダークファンタジー映画のようなストーリーが物語られる。蒼山 幸子はそれを、痛みに耐えながら必死になって紡 (つむ) いだ、自分の物語であるかのように歌う。いや、そうとしか聴こえない。痛い。少女の歌は、観客の心にキリキリと迫る。美しいメロディーと共に。

そして美しい旋律はそのまま流れを増し、勢いをつけた音流は、徐々に一つの花を形作る。

"ばらの花"

誰もが知っている、あのイントロ。ステージ上には、再び "ねごと" の姿。"くるり" と "ねごと" の3文字が重なる、歴史的瞬間。トゲのある花は、普段よりも少しだけ甘い香りで会場を満たす。観客は、その危険な悦びに震える。

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一夜の夢物語は、静かに一つのピークを迎えた。

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そして、"NO"、"カロン"。夢から目覚める時間を逆算するかのように、フィナーレに向かって観客の心を揺さぶり続けるステージ上の4人。

最後は、"夕日"。

美しい陽が地平線に溶け込み、少し切なくなったところで、僕の "夢" は途切れた。
汗ばんだ体に残されていたのは、心地よい虚脱感と、確かな "夢" の記憶。

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text by サワカリー先生



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