こもり校長&ぺえ元教頭
SPECIAL課外授業
その後、ステージ上には、イスが用意される。ここまでのライブとは違う、少し違った雰囲気に、会場に少しだけ緊張が。
こもり校長が椅子に腰を掛け、もう一つの椅子がステージに残っている。
校長が語り始める。
「ここからは、ある人と一緒にお届けしようと思っているんだけど、
その人とは、去年の12月29日から会っていません。
で、今日。キズナ祭で久しぶりに会うんだけど、楽屋にも挨拶に行っていないから、このステージで初めてなのね。
だから、生徒のみんなと同じ状況なのね。もしかしたら、今まで感じたことの無い感情になって、おかしくなっちゃうかもしれないけど、そのときは優しくしてね。
では、呼んでみましょう。
ぺえ教頭ー!
そう声をかけると、「あー!お久しぶりです♪」という声が。
現れたのは、SCHOOL OF LOCK!の5代目教頭・ぺえ教頭だ!
「ヤダ、校長もお久しぶり♪」
そう言って握手を求める、ぺえ元教頭。
校長はそれに応えるとすぐさま「ねぇ、手震えてるんだけど!」と気づく。
昨年12月末をもって、教頭を退任したペえ教頭。
コロナ禍ということもあり、生徒の前でこうして2人が並んだ姿を見せることもなかったまま退任を迎えたぺえ元教頭。
たくさんの歓声と拍手で迎え入れられたステージからの景色をかみしめて「こんなに歓声を浴びたのは人生で初めて。
改めてここが私の居場所だって、再確認しました。」と感慨深そうに話してくれた。
ぺえ教頭から「ちょっと緊張してる?」と聞かれたこもり校長は、
「緊張してるよ!一人でやってるんだよ!?」と答えた。
ほんの少しのやりとりが、2人の生放送教室を思い起こさせる。
校長「久しぶりに揃ったわけなんだけども。2人で何やろうか、とかもいろいろ考えたのよ。」
ぺえ「はい。」
校長「俺ら2人がさ、生徒の前に現れる!みたいなこともなかなかなかったからさ。」
ぺえ「そうね。できなかったわよね。」
校長「ちょっと、久しぶりに“SCHOOL OF LOCK!”やろうよ!」
(会場から、「おー!!」という声が)
ぺえ「ちょっと、どういうこと…?ワタシ、ここにきて本当に何をやるか伝えられていないんだけど。
一回もリハもしてないよ?」
校長「僕たちが普段平日22時からSCHOOL OF LOCK!っていう生放送授業をしていたけど、
どんな風に授業していたか、目の前の生徒に見てもらおうよ!今日だけは「教頭」に戻ってさ!」
ぺえ「あら、いいかしら?みんな?」
(会場が大きな拍手で応える)
校長「ってことで、スタッフーーー!台本!!!」
ぺえ「ヤダ、できるかしら?」
校長「俺も、不安(笑)」
ぺえ「でも、やってみるわ。」
校長「おれちょっと座り直していい?準備いい? じゃあいくよ!SCHOOL OF LOCK!始めます。」
こもり校長の合図で、高らかとマーチングバンドの鼓笛の音が聞こえる。
「SCHOOL OF LOCK!」開講の合図だ!
校長「TOKYO FMから全国38局をネットしてお届け!SCHOOL OF LOCK! 校長のこもりです。」
教頭「ロックのスペルはエルオーシーケー! 教頭のぺえです。」
校長「さあ、今夜のSCHOOL OF LOCK!は、キズナ祭のステージ上を教室にお届けしていきます。」
校長「目の前には2000人近い生徒が集まっています!」
教頭「すごいね~。みんなありがとうございます。」
校長「どう?生徒のみんな、「生・ぺえ」はどう?」
(会場から「かわいいー!!」の合唱が)
教頭「ええ、うれしいー!」
校長「…うそだ。」
教頭「嘘だはおかしいだろ。可愛いって言ってんだから認めてよ。」
不安そうにしていたはずの2人なのに、始まった途端から息ピッタリの掛け合いが会場を包む。
校長「書き込みもたくさん来てます!」
職員さん、こもり校長、素敵なイベントをありがとうございます…!
抱きしめられたい笑
続けて掲示板に書き込まれたメッセージの中から
気になる生徒に電話をする番組内コーナー「掲示板逆電」をスタート。
校長「さあ、SCHOOL OF LOCK!今夜の授業は!」
「掲示板逆電!」
校長「SCHOOL OF LOCK!のスタンダード授業「掲示板逆電」
掲示板に書き込まれたメッセージの中から気になる生徒に、電話をしていきます。」
教頭「電話?このステージから?」
校長「職員いわく、機材的には70%ぐらいの確率で電話つながるって!」
教頭「そうなの?高いようで不安(笑)。」
校長「だってここさっきまでライブやってたところだからね!」
校長「さあ、つながるのか?つながらないのか?・・・もしもし???」
??「もしもーし!」
教頭「おお、すごい!そうなの?高いようで不安(笑)。」
校長「校長のこもりです!」
教頭「教頭のぺえです。」
??「広島県 14歳 RN 音響マンゴーです。」
校長「いまどこにいるの?」
音響マンゴー「いま、自分の部屋にいます。」
校長「今日はキズナ祭だったんだけど…」
音響マンゴー「行きたかったんですが。遠かったので断念しました。」
校長「14歳ってことは学年は?」
音響マンゴー「中学3年生です。」
校長「あれ、卒業式はいつ?」
音響マンゴー「昨日でした!」
(会場全体から祝福の拍手が。それを校長・教頭がマイクを傾け拾う)
校長「いまの聴こえた?」
音響マンゴー「聴こえました!」
教頭「なかなかないわよ、この人数から祝われるのは。」
校長「卒業式はどうだったの?」
音響マンゴー「私は、卒業生代表として答辞を読みました。」
教頭「答辞って優秀な生徒しか読めないイメージなんだけど…」
校長「そうことなんじゃないの?」
音響マンゴー「…たぶん。」
校長「ま、あんまり自分から「優秀です!」とは言いづらいよね(笑)。答辞は、どんなことを話したの?」
音響マンゴー[この3年間は、コロナ禍だったけど、とても充実してました、ってことを話しました。」
校長「コロナが始まったころに入学ってことだったんだよね?」
音響マンゴー「はい。1年生の頃は「ほかのクラスに行ってはいけない」とか、「給食は黙食です」とか制限がたくさんあって、アクリル板が壁みたいでした。」
校長「いま、ステージから会場を見てると、音響マンゴーの話にすごく深くうなずいてる子もたくさんいるね。」
教頭「みんな共感してるわね。」
校長「中学3年間の一番の思い出は?」
音響マンゴー「一番は、修学旅行でした。」
校長「お!行けたんだ!」
教頭「どこに行ったの?」
音響マンゴー「京都でした。」
教頭「いいわねぇ。恋はしたの?中学3年間で。」
音響マンゴー「恋はしてないけど、かけがえのない親友に出会えました。」
教頭「すごいね。そうハッキリと言い切れるってことはすごい充実した3年間だったんだなって思うし、制限のあるなかでよく頑張ったね。」
校長「ホントにそうだね。その親友っていうのは、どういう友達?」
音響マンゴー「小学校のときの後輩で、中学に慣れてもらうために一杯話してました。」
校長「後輩ってことは何個下?」
音響マンゴー「2個下です。」
校長「そうなんだ!その子が中学に来てからの3年生の間で、いろいろ充実したんだ?」
音響マンゴー「はい!」
校長「どんなことしたの?」
音響マンゴー「その親友と、ほかの友達と遊びに行ったり、放課後にこっそり学校に残って、いろいろ話したりしました。」
教頭「「こっそり」っていうのは学生時代の醍醐味だよね。」
校長「高校では、どんなことしたいとかはあるの?」
音響マンゴー「そうですね、「大人になってからやりたいこと」を見つけたいです。」
教頭「これから楽しいわよ、きっと。」
校長「これから高校生活が始まって、まだ見ぬ景色と、まだ見てない新しい友達ともたくさん出会うと思うから、悔いなく3年間を全力で楽しんでね!」
教頭「親友との絆もね、さらに深めて欲しいし。少し距離は離れちゃうだろうけど。」
音響マンゴー「はい!」
校長「じゃあ、最後に!ここの会場には音響マンゴーと同じSCHOOL OF LOCK!の生徒がたくさんいるから。」
ちょっとみんなで音響マンゴーに「卒業おめでとう!」って言いたいんだけど、みんなオッケー?」
(会場から「オッケー!」とたくさんの声が集まる)
校長「じゃあ、いくよ!音響マンゴー!!せーのっ!」
会場「卒業、おめでとう~~~~!!!!!!」
音響マンゴー「ありがとうございます!!」
校長「すてきな高校生活送れよー!」
教頭「すごい。繋がったわね。広島と。」
校長「俺たちがやってきたことってこういうことだったんだね。久しぶりにやると来るものがあるね。」
みんなぺえ教頭、どうだったー?」
(会場、一斉に拍手)
校長「あっという間に黒板の時間です。」
教頭「SCHOOL OF LOCK!授業の最後は、いつも黒板にメッセージを書いて、その日の授業を終えています。」
校長「なんだけど!このあと、俺ちょっと別件があって。」
教頭「ほう。」
校長「なので、ぺえさん!このあとの時間は、ぺえ教頭と生徒の時間にしてください!」
そう言って、こもり校長はステージを後にする。
ぺえ「じゃあちょっと変わりまして、私ぺえが時間をいただきました。
黒板を書く前に少しだけ話させてもらいますね。
SCHOOL OF LOCK!を聴いていた生徒のみんなは、私の退任のタイミングですごくびっくりさせてしまったり、
悲しませたりしてしまったと思うんだけど。私自身もSCHOOL OF LOCK!の時間を思い出すと胸がいっぱいになるような、
みんなの愛をたくさんいただけて…もう少しいたいなとか、みんなの前から消えたくないなとか思ったんですけど、
自分のタイミングで自分の勇気を見せることがみんなへのメッセージになるかなと思って、退任しました。
でも、こうして退任した後もこうして温かい場所をこうしてくれて、みんなと関わる時間をいただくことができて、すごく幸せです。
なので、今日は緊張するけど黒板書きますね。この黒板って、大切なもので大変なものだから、丁寧に書きたいと思います。」
そう言ってぺえ元教頭は、黒板にチョークを当てる。
書いた言葉は、「まっすぐな愛」。
黒板について話そうとしたぺえ元教頭は、会場に来たRN はるかはやかと目が合う。目には涙を浮かべていた。
ぺえ元教頭が語りかけるように会場全員に、一人ひとりに話し始める。
「ごめんね。ありがとね。たくさん泣いていいんだからね。ごめんよ、独りにさせてしまって。
でもこの黒板の通り、あなたと私はまっすぐな愛で繋がってると信じて、ね。
たくさんの仲間とたくさんの友達と、恋人と家族と、これからもたくさん泣いてください。
誰かと一緒に涙したときに、その人とのキズナや愛が深まります。いま目の前にいる大切な人を思いっきり愛してください。
キズナはいくら使っても、ボロボロになりません。大切な人と、あなたのキズナをたくさん繋げてください。
まっすぐな愛をね、誰かに向けることって、すごく怖いことだし苦しいことだと思います。
まっすぐな愛を誰かにぶつけることを、私自身も恐れずに生きていきたいと思うし、
みんなにも恐れずに生きていって欲しいなと思って、この黒板を書かせてもらいました。」
ぺえ元教頭は、さらに続ける。ある思いを打ち明ける。
「ここにいる人たちだけに話すと。アタシ、恋をしています。
たくさんの人の前で話すことじゃないから言わないようにしようと思ってたんだけど、
ここにアタシが座ったときに、家族とか親友とかと同じ温かさを感じて。だから、なんかそんなことを話したくなったの。
アタシもいま恋をしている中で、まっすぐな愛をその人に持ってはるんだけど、それを相手にぶつけるのがすごく怖くて。
自分が傷つくんじゃないかとか、この愛を伝えたらすべてが壊れるんじゃないか、とか。すごく怖いの。
でも、人生は一度きりしかないし、その愛している人がいつ目の前から消えるかわからないから、
しっかりと今、
その人にしっかりと愛を伝えて欲しいなと思いました。
これだけ言えたら、十分。
改めて、本当にありがとうございました。
またね、SCHOOL OF LOCK!とね、みんなとのね関係が終わるとは思っていませんので。
いつか気楽にね、みんなの前で言葉を届けられたらなと思うから、その時までしっかりとみんなも生きるのよ。
人生で一番大切なことは生きるということなので、生きてるだけで大丈夫だから。
これからも、こもり校長とSCHOOL OF LOCK!を愛してあげてください。
じゃあね。この後は校長が「本来の姿」で現れるから。
私とはここでお別れです。
またどこかでお会いましょう。」
そう名残惜しそうに、でもしっかりと足を踏みしめて、ぺえ元教頭は拍手で見送られ、ステージから降りた。