- 2017.07.30
大竹英洋さんインタビュー 2
今週も、カナダとアメリカの国境付近にある「ノースウッズ」という森をフィールドにオオカミをはじめ、森の姿を撮り続ける写真家の大竹英洋さんのお話です。
<br />大学卒業後、写真家を目指していた大竹さんは、撮影テーマを探す中で、『ブラザーウルフ』というオオカミの写真集とその撮影者・ジム・ブランデンバーグというフォトグラファーの存在と出会います。
そして、ナショナル ジオグラフィックを中心に、世界的に活躍するこのフォトグラファーに弟子入りしたいと決意。彼が暮らし、撮影を続けているという ノースウッズへ単身わたりました。
弟子入りして2年、3年彼の元でいろいろ覚えたかったのですが、実は弟子入りはできなかったんですね。僕の思いを伝えたのですが、彼は弟子を取っていなくて。でも「自然の写真を撮るには、自分ひとりで自然と向き合う必要がある。君もすぐ撮り始めたほうがいい。いい作品を撮れるようになるには時間がかかるから、今すぐに撮り始めなさい。」って行ってくれたんです。
僕は、一番安いチケットで来たので、帰りの日が動かせないチケットで、3ヶ月間アメリカにいなきゃいけなかったんですね。6月の頭にジムに会ったのですが、8月の終わりまでアメリカにいることは決まっていたんです。ジム・ブランデンバーグは自分の家の周りに敷地を持っていて、そこで撮影をしているのですが、そのなかに空小屋もあって、「そこに泊まっていればいい。すぐに撮影し始めなさい。それでたまに会って写真の話をしよう」と言ってくれて、そこから2ヶ月半、彼のそばで暮らしながら撮影をして、何回か写真を見てもらったりしました。
ジム・ブランデンバーグといえば、80年代、90年代に活躍した、世界トップの自然写真家の方です。彼に根掘り葉掘りテクニックを教えてもらったことはないんですが、暮らしぶりを間近に見ることができて、肌で感じることができたというのは、とても大きなものがありました。
~真夏に差し掛かる頃のノースウッズの森はどんなふうなんですか?
かなり緯度が高いので、高原気候です。日本ほど蒸し暑くはないのですが、結構30度くらいまで気温が上がることもあります。太陽も、白夜になるまで北ではないのですが、10時くらいまで明るいんですね。ですから、真夏の太陽を浴びて、ブルーベリーが森中にたくさん実る、そんな季節ですね。それを狙ってクマたちがベリーを摘みに来る。そんな季節だと思います。木の葉が茂ってくるので、動物に会うのはなかなか難しくなってはきますが、非常に豊かな季節だと思います。
~その撮影の日々のなかで、忘れがたい出会いなんかありましたか?
ここに子鹿の写真があるのですが、子鹿が身を伏せて、じっと目を閉じている、非常に安らかな寝顔の写真です。

これは僕が森の中の獣道をあるいていて、倒木を乗り越えるために足を上げたその向こうに、この子鹿が横たわっていたんです。で、驚いて飛び退いて、パシャ、パシャっと撮影していたら、この子が目を開けて、こちらをじっと見たんです。僕は至近距離でこの子鹿と見つめ合ったんですが、その目が本当に黒くて、大きくて、吸い込まれるような瞳で、こっちをじっと見ていて、ぜんぜん怯える様子もありませんでした。人間を見たことがなかったのかもしれませんが、きょとんとこっちを見ていて、周りをキョロキョロっと見渡して、また寝ちゃったんですね。
最初、なんで逃げないんだろう、ケガでもしているのかな、生きているのかなと心配だったのですが、周りをキョロキョロっと見てまた寝ちゃったので、元気だし、生きているなと思って。ただ、この周りにお母さんがきっといるはずで、僕がここにいたら怖くて戻ってくれないだろうと思って、その場を後にしたのですが、あとで調べると、生まれたばかりの子鹿は死んだふりをするそうなんですね。身に危険を感じると、すっと伏せて、呼吸数も少なくなって、心拍数も少なくなって、本当に穏やかになります。ある種の仮死状態といいますか、本当に静かに石のようになって危険をやり過ごす。この森にはオオカミもいるので、その場ですっと伏せて、静かにして、狸寝入りならぬ子鹿寝入りをする。そして、お母さんはたまに戻ってきて授乳するらしいんです。誰に教わったわけでもなく、自分の命を守るために懸命に知恵を働かせて、伏せている。そういう子鹿の写真なんだなと思うと、またちょっと見え方が変わってきますね。
~逆に、危険な目に遭うこともありましたか?
野生動物というのは何が起こるかわからないので、常に気をつけていなければいけない。距離のとり方や、彼らの一挙一動に神経を張り巡らせて、どこまでできることなのか、どこまで近づけるかというのは常に考えていなければいけない。でもこれは僕のミスなのですが、獣道に荷物をおいて、花を静かに撮影していて、ちょっと長い間静かにしすぎたんですね。で、終わって荷物をとりに行ったら、そこにクマが来ていたらしくて、目の前の茂みがガサガサっと動いたんです。びっくりして逃げていってくれたのでよかったのですが、逃げたといってもすぐそこで立ち止まって、犬のようにワウって吠えてきたんです。そのときは、もうちょっと自分の存在を教えて置かなければいけなかったなと思いましたね。僕は、彼らの場所に伺って、見せてもらっているという立場です。彼らを不用意に刺激しないように、ただ見せてもらいたいなと思ってお願いして行くことなので、なるべく気をつけないといけないなと思います。
今回のお話、いかがだったでしょうか。来週も引き続き大竹英洋さんのお話です。次回は大竹さんが出会ったオオカミのお話を伺います。
お楽しみに!

「そして、ぼくは旅に出た。 はじまりの森 ノースウッズ」あすなろ書房
イベント情報: http://hopnews.exblog.jp
Facebook: https://www.facebook.com/HidehiroOtakePhotography/
Instagram: https://www.instagram.com/hidehirootake/
【今週の番組内でのオンエア曲】
・My Mind Is For Sale / Jack Johnson
・大空で抱きしめて / 宇多田ヒカル
<br />大学卒業後、写真家を目指していた大竹さんは、撮影テーマを探す中で、『ブラザーウルフ』というオオカミの写真集とその撮影者・ジム・ブランデンバーグというフォトグラファーの存在と出会います。
そして、ナショナル ジオグラフィックを中心に、世界的に活躍するこのフォトグラファーに弟子入りしたいと決意。彼が暮らし、撮影を続けているという ノースウッズへ単身わたりました。
弟子入りして2年、3年彼の元でいろいろ覚えたかったのですが、実は弟子入りはできなかったんですね。僕の思いを伝えたのですが、彼は弟子を取っていなくて。でも「自然の写真を撮るには、自分ひとりで自然と向き合う必要がある。君もすぐ撮り始めたほうがいい。いい作品を撮れるようになるには時間がかかるから、今すぐに撮り始めなさい。」って行ってくれたんです。
僕は、一番安いチケットで来たので、帰りの日が動かせないチケットで、3ヶ月間アメリカにいなきゃいけなかったんですね。6月の頭にジムに会ったのですが、8月の終わりまでアメリカにいることは決まっていたんです。ジム・ブランデンバーグは自分の家の周りに敷地を持っていて、そこで撮影をしているのですが、そのなかに空小屋もあって、「そこに泊まっていればいい。すぐに撮影し始めなさい。それでたまに会って写真の話をしよう」と言ってくれて、そこから2ヶ月半、彼のそばで暮らしながら撮影をして、何回か写真を見てもらったりしました。
ジム・ブランデンバーグといえば、80年代、90年代に活躍した、世界トップの自然写真家の方です。彼に根掘り葉掘りテクニックを教えてもらったことはないんですが、暮らしぶりを間近に見ることができて、肌で感じることができたというのは、とても大きなものがありました。
~真夏に差し掛かる頃のノースウッズの森はどんなふうなんですか?
かなり緯度が高いので、高原気候です。日本ほど蒸し暑くはないのですが、結構30度くらいまで気温が上がることもあります。太陽も、白夜になるまで北ではないのですが、10時くらいまで明るいんですね。ですから、真夏の太陽を浴びて、ブルーベリーが森中にたくさん実る、そんな季節ですね。それを狙ってクマたちがベリーを摘みに来る。そんな季節だと思います。木の葉が茂ってくるので、動物に会うのはなかなか難しくなってはきますが、非常に豊かな季節だと思います。
~その撮影の日々のなかで、忘れがたい出会いなんかありましたか?
ここに子鹿の写真があるのですが、子鹿が身を伏せて、じっと目を閉じている、非常に安らかな寝顔の写真です。

これは僕が森の中の獣道をあるいていて、倒木を乗り越えるために足を上げたその向こうに、この子鹿が横たわっていたんです。で、驚いて飛び退いて、パシャ、パシャっと撮影していたら、この子が目を開けて、こちらをじっと見たんです。僕は至近距離でこの子鹿と見つめ合ったんですが、その目が本当に黒くて、大きくて、吸い込まれるような瞳で、こっちをじっと見ていて、ぜんぜん怯える様子もありませんでした。人間を見たことがなかったのかもしれませんが、きょとんとこっちを見ていて、周りをキョロキョロっと見渡して、また寝ちゃったんですね。
最初、なんで逃げないんだろう、ケガでもしているのかな、生きているのかなと心配だったのですが、周りをキョロキョロっと見てまた寝ちゃったので、元気だし、生きているなと思って。ただ、この周りにお母さんがきっといるはずで、僕がここにいたら怖くて戻ってくれないだろうと思って、その場を後にしたのですが、あとで調べると、生まれたばかりの子鹿は死んだふりをするそうなんですね。身に危険を感じると、すっと伏せて、呼吸数も少なくなって、心拍数も少なくなって、本当に穏やかになります。ある種の仮死状態といいますか、本当に静かに石のようになって危険をやり過ごす。この森にはオオカミもいるので、その場ですっと伏せて、静かにして、狸寝入りならぬ子鹿寝入りをする。そして、お母さんはたまに戻ってきて授乳するらしいんです。誰に教わったわけでもなく、自分の命を守るために懸命に知恵を働かせて、伏せている。そういう子鹿の写真なんだなと思うと、またちょっと見え方が変わってきますね。
~逆に、危険な目に遭うこともありましたか?
野生動物というのは何が起こるかわからないので、常に気をつけていなければいけない。距離のとり方や、彼らの一挙一動に神経を張り巡らせて、どこまでできることなのか、どこまで近づけるかというのは常に考えていなければいけない。でもこれは僕のミスなのですが、獣道に荷物をおいて、花を静かに撮影していて、ちょっと長い間静かにしすぎたんですね。で、終わって荷物をとりに行ったら、そこにクマが来ていたらしくて、目の前の茂みがガサガサっと動いたんです。びっくりして逃げていってくれたのでよかったのですが、逃げたといってもすぐそこで立ち止まって、犬のようにワウって吠えてきたんです。そのときは、もうちょっと自分の存在を教えて置かなければいけなかったなと思いましたね。僕は、彼らの場所に伺って、見せてもらっているという立場です。彼らを不用意に刺激しないように、ただ見せてもらいたいなと思ってお願いして行くことなので、なるべく気をつけないといけないなと思います。
今回のお話、いかがだったでしょうか。来週も引き続き大竹英洋さんのお話です。次回は大竹さんが出会ったオオカミのお話を伺います。
お楽しみに!

「そして、ぼくは旅に出た。 はじまりの森 ノースウッズ」あすなろ書房
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Facebook: https://www.facebook.com/HidehiroOtakePhotography/
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【今週の番組内でのオンエア曲】
・My Mind Is For Sale / Jack Johnson
・大空で抱きしめて / 宇多田ヒカル