- 2017.07.09
「都市鳥」のお話 1
今週は、東京をはじめとした都市部、市街地を「森の代わりに」住処にしている鳥たちのお話です。
これは「都市鳥」と呼ぶそうなんです。
もしかすると気づいている方もいるかも知れませんが、この「都市鳥」の代表、スズメなどの鳥が減っているということが言われています。その理由をはじめ、都市鳥たちの様々なお話を日本野鳥の会東京研究部長で都市鳥研究会 代表 川内博さんに伺っていきます。

「都市鳥」というのは私が30年以上前につくった造語です。都市という環境は生物にとっては非常に生きにくい環境ですが、どうやって彼らは生きているのだろうかということを研究しているのが都市鳥研究になります。
そしてもう一つの定義は、人と何らかの関わり合いを持っている鳥たち。街の中に住むには人間を無視して生きてはいけないわけですよね。ですから、都市に住む鳥たちは、何らかの人との関わりを持っているわけです。それは食べ物であったり、営巣場所であったり。
たとえば、ツバメだとか、スズメとか、こういうものが減っているというようなことがよく言われていますが、その要因の一つとして、営巣場所の問題があります。ツバメというのは、人家の玄関などに巣をつくっていましたよね。そういう場所がなぜいいのかというと、人通りがあって、人目がある。ある程度人間がたくさんいるところには天敵が近づかないんですね。そういうことをうまく利用して、彼らは子育てをしてきたわけなんです。
ことろが、人がいつもいるというところは、いまは少ないわけです。かつてはタバコ屋にいつもおばあちゃんが座っていて、まあ特にツバメには興味はないけれども、外をいつも見ていると。そうそうると、そういう場所は安心してツバメが巣をつくることができる。駅の改札なんていうのもそうだったんです。駅員がずっといて、切符を切っている。そういう場所がよかったのですが、いまはそういうところから人がいなくなってしまったんです。それから、東京都心のピカピカの外壁のビルには、泥で作った巣はくっつかないので、巣を作ることができない。そういう状況になっているんです。

まもなく巣立ちするツバメのヒナ(営巣場所が減って、減少の一途) 撮影者 : 川内博
スズメの場合は人屋根瓦の下の隙間などに藁屑で巣を作っていたのですが、いまは屋根瓦の下に隙間がない。そういった理由で彼らは数を減らしているんです。
また、鳥の場合には、子育てのときには動物質の食べ物が必要なことが多い。具体的にいうとミミズだとかの、生きている動物を与えるんですけれども、そういものが得にくいんです。そういうことから、子どもが少なくなっているんです。
その一方で、カワセミなんかは増えています。冬に都内の水辺を半日歩いていると、一羽か二羽見ることができます。ブルーとグリーンと赤っぽい色で、日本の中では綺麗な鳥の第一位ですね。そういう鳥が、昔はいろいろな水辺にいたといわれていたのですが、ちょうど第一回目の東京オリンピックのころには23区からいなくなってしまった。それが80年代になって復活したんです。で、復活したばかりか、かつては下町にいなかったのが、下町まで進出してきました。いまはどこにいってもいます。

カワセミの雄(秋から冬にかけては、都内の水辺でよく見られるようになった)撮影者 : 川内博
カワセミが一時減ったのは、ひとつは川が下水道や農薬で汚染されて、食べ物である餌がなくなったんです。それが、水質が改善されていったということがあります。カワセミというと清流というイメージがありますが、清流だと魚に見つかりやすいので、魚が逃げてしまう。それが少し濁っていると、上から見つけやすく、魚の方からは見つかりにくい。だから、ちょっと濁っているところのほうがいいんですが、そういうところにモツゴだとかの小さな魚が大量に増えたということが、いまのところわかっています。
また、ウミネコも増えていますが、それはちょっと問題なんです。というのは、ウミネコは本来東京あたりでは繁殖していなかったカモメなんです。諸説ありますが、おそらく怪我したウミネコを上野公園のあたりで放した、もしくは逃げたんだろうと。それでだんだん増えてきたんです。
ウミネコはマンションだとか、ビルの屋上で繁殖していますが、、声だとか糞で非常に住民の方が困っています。ウミネコは、雑食性で繁殖力旺盛なんですよね。ですから、彼らが増えるということは決していいことではない。そういうふうに見て、ずっと追っているんです。

ウミネコ(伊豆諸島などで繁殖する鳥だが、東京下町などのビル街でふえている)撮影者 : 川内博
ウミネコはかつては都市鳥ではなかったのですが、いまは都市鳥のなかに入れなければいけない。ビルの屋上がいま無人化されていて、安全な繁殖場所になっている。そういう人とのかかわり合いが出てきていて、ウミネコも都市鳥になっています。
今回のお話いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!
【今週の番組内でのオンエア曲】
・SLIDE FEAT. FRANK OCEAN & MIGOS / Calvin Harris
・To The Sky / Owl City
これは「都市鳥」と呼ぶそうなんです。
もしかすると気づいている方もいるかも知れませんが、この「都市鳥」の代表、スズメなどの鳥が減っているということが言われています。その理由をはじめ、都市鳥たちの様々なお話を日本野鳥の会東京研究部長で都市鳥研究会 代表 川内博さんに伺っていきます。

「都市鳥」というのは私が30年以上前につくった造語です。都市という環境は生物にとっては非常に生きにくい環境ですが、どうやって彼らは生きているのだろうかということを研究しているのが都市鳥研究になります。
そしてもう一つの定義は、人と何らかの関わり合いを持っている鳥たち。街の中に住むには人間を無視して生きてはいけないわけですよね。ですから、都市に住む鳥たちは、何らかの人との関わりを持っているわけです。それは食べ物であったり、営巣場所であったり。
たとえば、ツバメだとか、スズメとか、こういうものが減っているというようなことがよく言われていますが、その要因の一つとして、営巣場所の問題があります。ツバメというのは、人家の玄関などに巣をつくっていましたよね。そういう場所がなぜいいのかというと、人通りがあって、人目がある。ある程度人間がたくさんいるところには天敵が近づかないんですね。そういうことをうまく利用して、彼らは子育てをしてきたわけなんです。
ことろが、人がいつもいるというところは、いまは少ないわけです。かつてはタバコ屋にいつもおばあちゃんが座っていて、まあ特にツバメには興味はないけれども、外をいつも見ていると。そうそうると、そういう場所は安心してツバメが巣をつくることができる。駅の改札なんていうのもそうだったんです。駅員がずっといて、切符を切っている。そういう場所がよかったのですが、いまはそういうところから人がいなくなってしまったんです。それから、東京都心のピカピカの外壁のビルには、泥で作った巣はくっつかないので、巣を作ることができない。そういう状況になっているんです。

まもなく巣立ちするツバメのヒナ(営巣場所が減って、減少の一途) 撮影者 : 川内博
スズメの場合は人屋根瓦の下の隙間などに藁屑で巣を作っていたのですが、いまは屋根瓦の下に隙間がない。そういった理由で彼らは数を減らしているんです。
また、鳥の場合には、子育てのときには動物質の食べ物が必要なことが多い。具体的にいうとミミズだとかの、生きている動物を与えるんですけれども、そういものが得にくいんです。そういうことから、子どもが少なくなっているんです。
その一方で、カワセミなんかは増えています。冬に都内の水辺を半日歩いていると、一羽か二羽見ることができます。ブルーとグリーンと赤っぽい色で、日本の中では綺麗な鳥の第一位ですね。そういう鳥が、昔はいろいろな水辺にいたといわれていたのですが、ちょうど第一回目の東京オリンピックのころには23区からいなくなってしまった。それが80年代になって復活したんです。で、復活したばかりか、かつては下町にいなかったのが、下町まで進出してきました。いまはどこにいってもいます。

カワセミの雄(秋から冬にかけては、都内の水辺でよく見られるようになった)撮影者 : 川内博
カワセミが一時減ったのは、ひとつは川が下水道や農薬で汚染されて、食べ物である餌がなくなったんです。それが、水質が改善されていったということがあります。カワセミというと清流というイメージがありますが、清流だと魚に見つかりやすいので、魚が逃げてしまう。それが少し濁っていると、上から見つけやすく、魚の方からは見つかりにくい。だから、ちょっと濁っているところのほうがいいんですが、そういうところにモツゴだとかの小さな魚が大量に増えたということが、いまのところわかっています。
また、ウミネコも増えていますが、それはちょっと問題なんです。というのは、ウミネコは本来東京あたりでは繁殖していなかったカモメなんです。諸説ありますが、おそらく怪我したウミネコを上野公園のあたりで放した、もしくは逃げたんだろうと。それでだんだん増えてきたんです。
ウミネコはマンションだとか、ビルの屋上で繁殖していますが、、声だとか糞で非常に住民の方が困っています。ウミネコは、雑食性で繁殖力旺盛なんですよね。ですから、彼らが増えるということは決していいことではない。そういうふうに見て、ずっと追っているんです。

ウミネコ(伊豆諸島などで繁殖する鳥だが、東京下町などのビル街でふえている)撮影者 : 川内博
ウミネコはかつては都市鳥ではなかったのですが、いまは都市鳥のなかに入れなければいけない。ビルの屋上がいま無人化されていて、安全な繁殖場所になっている。そういう人とのかかわり合いが出てきていて、ウミネコも都市鳥になっています。
今回のお話いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!
【今週の番組内でのオンエア曲】
・SLIDE FEAT. FRANK OCEAN & MIGOS / Calvin Harris
・To The Sky / Owl City