そして、イベント後半。サカナクションのステージは、「EARTH×HEART LIVE 2012、サカナクション!」という山口一郎の言葉とともに「RL」でスタートし、重低音が響くサウンドで会場の空気を一変させた。「モノクロトウキョー」「セントレイ」とテンポを上げていき、序盤から1万人の観客を自分たちのペースに巻き込んでいく。
「メンバー一同、フィッシュマンズを聴いてきたので、まさか同じステージに立てるとは思ってもいませんでした。僕ら的にも、ものすごく気合いが入っているので、みなさんも最後まで楽しんでいってください!」
中盤はゆったりとしたテンポの「アンタレスと針」でクールダウンさせた後に、心地よいテンポ感の「years」を演奏し、緩急をつける構成でグイグイと引っ張っていく。「years」の緑のレーザービームによる演出は幻想的な世界を作り出していた。
後半は聴きごたえのあるコーラスワークも印象的な「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」をはじめ、クラフトワークのようにメンバーが横一列になって演奏する「DocumentaRy」、最後はシングル曲「ルーキー」「アルクラウンド」「アイデンティティ」をたたみ掛けるように聴かせて本編が終了した。およそ70分、全14曲で構成されたステージは、このイベントのためだけに彼らが描いたひとつの大きなストーリーのように感じられた。
盛大な拍手と「アンコール!」の呼び声によって、再びステージに登場したサカナクションのメンバーたち。
山口が代表して「フィッシュマンズとサカナクション、魚繋がりで(イベントに)取り組ませてもらいましたが、音楽ができることっていろいろあると思うんです。みなさんの背中を押すとか、自分のために曲を作るとか。でも僕は、純粋に音楽を楽しむ時は楽しんだほうがいいと思うんだよね。音楽を楽しむことで、自然に誰かの役に立ったり、何かを支えることになったりしたら、そんな素晴らしいことはないと思いますから。
フィッシュマンズと同じステージに立つ機会をくれたこのイベントに感謝したいし、観にきてくれたみんなにも感謝します。それで地球環境が取り戻せるというのも、音楽の力だと思うんですよ。2012年ってどういう年になるのか、もう4月になりますけどまだ分かりません。僕らも一生懸命音楽を作っていきますし、みなさんの元に新しい音を運んだり、ライブを届けたり、みなさんの力になれたらいいなって思っております。マジメくさくてホントに申し訳ないんですけど、今後もミュージシャンは一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします!」と語り、初期の代表曲のひとつで、ドラマティックな展開で聴かせる「ナイトフィッシィングイズグッド」でイベントを締めくくった。
フィッシュマンズとサカナクションによる "サカナ対バン" という形で開催された「EARTH×HEART LIVE 2012」。それぞれのバンドが音楽に自分たちのメッセージを乗せて、1万人のオーディエンスに "音楽の力" と "音楽ができること" を伝えてくれた。会場でステージを観た人はもちろん、放送を通じて彼らのライブを体感した人たちにも、彼らの想いはしっかりと届いたのではないだろうか。
なお、このイベントの模様はWOWOWライブチャンネルにて「ミュージックスタイル JAPAN フィッシュマンズ×サカナクション」として6月17日(日)22:30から放送される予定。
WOWOW「フィッシュマンズ × サカナクション」
文 : 田中隆信
写真 : 古溪一道