広大な牧草地と、のんびり草を食む牛たち・・・
北海道ならではの田園風景のひとつです。
農業だけでなく畜産も盛んな北海道。
そんなこの場所に、世界最先端技術で
日本の畜産を支える研究施設が
あると聞いて訪ねました。
「JA全農ET研究所」。
「ET」とは、
「Embryo(エンブリオ)Transfer(トランスファー)」
の略で、「受精卵移植」という意味。
受精卵移植によって、一頭でも多く牛を
産ませるための研究施設です。
「受精卵移植」とは、いったいどういうものなんでしょうか。
所長の大野さんに伺いました。
「本来、牛は人間と同じで1個しか排卵しません。
そこで、ホルモン剤を使って、複数個排卵させた雌牛に人工授精を施します。
そうすることで、受精卵が複数個できるわけですね。
で、その受精卵をいったん体外に取り出して、その中から良質なものを選抜します。
そして、そのうちの1~2個を再び雌牛の体内に戻して、
残りの受精卵は畜産農家さんに販売する、というものです。」
全てが初めて耳にする話ばかりで、
川瀬良子も興味津々!
そもそも一体なぜ、こういう取り組みを
行う必要があるのでしょうか?
「おいしい黒毛和牛は、本来、限られた牛からしか産まれません。
ですので、他の牛を借りてでも多く産ませたいんです。
牛の発情周期は20日。もし受胎しなければ、その20日間のエサ代がロスになります。
そこで、“受精卵移植”という技術を使って、確実に産まれる手助けをしている、というわけなんです。」
牛は自然に妊娠しているわけではなかったんですね!
全国の畜産農家の数が減っている一方で、
私たちの「食」への想いは減ることがありません。
そんな中、こうした陰の努力が私たちの食卓を
彩り豊かなものにしてくれていたのです。
「畜産農家があっての研究所。
1頭でも、1%でも、多く産ませたい。
そのために日々、頑張っています。」
“その道のプロ”達のチームプレイが、明日の「食」を支える。
これぞ日本農業の底力!
生き物が相手なのでほとんど家にも帰れない、
それでもこの仕事について楽しそうに話す
大野さんの笑顔がとても印象的でした。
北海道の大自然、そして、人の温かさと情熱に触れながら、
大事なことをたくさん気づかせてもらった今回の旅。
取材させて頂いた皆さん、どうもありがとうございました!