みらい図鑑

Vol.29 「染色村」 茨城県

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茨城県常総市の“ある村”が今回のタカラモノです。 その名も「染色村」。

手描き友禅や藍染め、ろうけつ、江戸小紋など、
多種多様な”染色”の技術を持った職人たちが集まって暮らしている全国でも珍しい地域です。




昭和36年に東京に住む染色家有志120名が、水海道(現、常総市)に染色村を建設し、
古代より受け継がれてきた伝統ある染色の維持発展に努めてきました。

職人たちは、ここでお互いに刺激し合い、技術を高めあいながら、
日本の伝統である”染物”を世界へと発信されています。

この土地で暮らして35年になる染色作家、
石山修(いしやま・おさむ)さんにお話を伺いました。

「私は染織作家として生きているわけですが、すべてオリジナルで仕上げていくわけですね。
ですから、自分と向き合う贅沢な生き方ですから、
空の広さと豊かな水っていうのがあるんですよね。
茨城っていいなと感じたところですね。」




職人の数は、多い時で120人。
伝統技術とともに新しい技術を取り入れながら、それぞれの工房で個性ある着物やインテリア、小物等を創作し、現代に生きる工芸を追求してきました。
現在は6人ほどに減ってしまいましたが、
石山さんは、素晴らしい“染物”を未来へつなげていきたいと話します。

「どんな古い家であっても、新しい家であっても、コンクリの打ちっぱなしの部屋であれ、
布を一枚かけるだけでそこにドラマが生まれてくると。
ですから、伝統を、殻を破るような発想が、私は外から欲しいと思っているんです。」

衰退してきてしまった染め物の伝統を守りながらも、伝統という殻を破った発想で、
日本のモノヅクリを次の世代へつなげていきたいという石山さん。
工房で時に作品作りを、時に一般の方を迎えて体験会を開いています。

100年後の未来に伝えていきたい日本の文化、“染色”。
染色村が目指しているものを携えて、石山さんの挑戦はどこまでも続きます。

Vol.28 「つげ櫛」 京都

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今回は、日本人の美の象徴のひとつ、「髪の毛」にまつわるものづくり。
万葉の歌にも詠まれてきた”つげ櫛”に注目します。

鹿児島の指宿で採れる「薩摩つげ」という木を材料にして、
明治時代からおよそ130年、つげ櫛の製造・販売を行っているお店が京都にあります。



「十三や」、5代目・竹内伸一さんのお話です。

「薩摩つげというのは、なかなか木が大きくならない、
樹齢が最低でも35年くらい経たないと櫛にならない木なんです。
それをまた最低10年ぐらい木を乾燥させて、加工していく。
製造に時間のかかる商品なので、
少しでもお客さんにも長く使い続けて頂きたいという気持ちで作っています。」

木に粘りがあって硬いことから、判子にも使われている「薩摩つげ」。
細かい細工も出来る緻密な木なので、装飾の面からも櫛づくりに適しているんだとか。



美しい黄色が使うほどに、琥珀色に変わってくるのも「つげ櫛」の魅力。
髪と櫛の刃の摩擦で刃が磨かれ、滑りが良くなって、
使う人の髪にどんどん馴染んでくる「つげ櫛」は、日本全国に多くのファンがいます。

「木の櫛は、日本は木の文化と言われますが、使えば使うほど自分の髪に馴染み、
愛着が湧くものだと思うので、
そういう木の櫛を少しでも長く守っていきたいと思っています。」

汚れても水や洗剤で洗うことができない「つげ櫛」のメンテナンスは椿油。
櫛に油を漬けて一ヶ月に一回、一晩漬け込みます。
こうすることで、常に櫛の表面に油膜ができ、櫛通りも良く、髪の汚れも付き難くなり、
何十年も使えるんだそうですよ。

椿油を髪に漬け、黒髪を大事にしてきた昔の日本女性。
良質の素材を大事に使い込んでいくことが、美にもつながっていく・・・
100年先もそんな日本文化と美意識が受け継がれているといいですね。
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みらい図鑑

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茨城県常総市の“ある村”が今回のタカラモノです。 その名も「染色村」。

手描き友禅や藍染め、ろうけつ、江戸小紋など、
多種多様な”染色”の技術を持った職人たちが集まって暮らしている全国でも珍しい地域です。




昭和36年に東京に住む染色家有志120名が、水海道(現、常総市)に染色村を建設し、
古代より受け継がれてきた伝統ある染色の維持発展に努めてきました。

職人たちは、ここでお互いに刺激し合い、技術を高めあいながら、
日本の伝統である”染物”を世界へと発信されています。

この土地で暮らして35年になる染色作家、
石山修(いしやま・おさむ)さんにお話を伺いました。

「私は染織作家として生きているわけですが、すべてオリジナルで仕上げていくわけですね。
ですから、自分と向き合う贅沢な生き方ですから、
空の広さと豊かな水っていうのがあるんですよね。
茨城っていいなと感じたところですね。」




職人の数は、多い時で120人。
伝統技術とともに新しい技術を取り入れながら、それぞれの工房で個性ある着物やインテリア、小物等を創作し、現代に生きる工芸を追求してきました。
現在は6人ほどに減ってしまいましたが、
石山さんは、素晴らしい“染物”を未来へつなげていきたいと話します。

「どんな古い家であっても、新しい家であっても、コンクリの打ちっぱなしの部屋であれ、
布を一枚かけるだけでそこにドラマが生まれてくると。
ですから、伝統を、殻を破るような発想が、私は外から欲しいと思っているんです。」

衰退してきてしまった染め物の伝統を守りながらも、伝統という殻を破った発想で、
日本のモノヅクリを次の世代へつなげていきたいという石山さん。
工房で時に作品作りを、時に一般の方を迎えて体験会を開いています。

100年後の未来に伝えていきたい日本の文化、“染色”。
染色村が目指しているものを携えて、石山さんの挑戦はどこまでも続きます。

Vol.28 「つげ櫛」 京都

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今回は、日本人の美の象徴のひとつ、「髪の毛」にまつわるものづくり。
万葉の歌にも詠まれてきた”つげ櫛”に注目します。

鹿児島の指宿で採れる「薩摩つげ」という木を材料にして、
明治時代からおよそ130年、つげ櫛の製造・販売を行っているお店が京都にあります。



「十三や」、5代目・竹内伸一さんのお話です。

「薩摩つげというのは、なかなか木が大きくならない、
樹齢が最低でも35年くらい経たないと櫛にならない木なんです。
それをまた最低10年ぐらい木を乾燥させて、加工していく。
製造に時間のかかる商品なので、
少しでもお客さんにも長く使い続けて頂きたいという気持ちで作っています。」

木に粘りがあって硬いことから、判子にも使われている「薩摩つげ」。
細かい細工も出来る緻密な木なので、装飾の面からも櫛づくりに適しているんだとか。



美しい黄色が使うほどに、琥珀色に変わってくるのも「つげ櫛」の魅力。
髪と櫛の刃の摩擦で刃が磨かれ、滑りが良くなって、
使う人の髪にどんどん馴染んでくる「つげ櫛」は、日本全国に多くのファンがいます。

「木の櫛は、日本は木の文化と言われますが、使えば使うほど自分の髪に馴染み、
愛着が湧くものだと思うので、
そういう木の櫛を少しでも長く守っていきたいと思っています。」

汚れても水や洗剤で洗うことができない「つげ櫛」のメンテナンスは椿油。
櫛に油を漬けて一ヶ月に一回、一晩漬け込みます。
こうすることで、常に櫛の表面に油膜ができ、櫛通りも良く、髪の汚れも付き難くなり、
何十年も使えるんだそうですよ。

椿油を髪に漬け、黒髪を大事にしてきた昔の日本女性。
良質の素材を大事に使い込んでいくことが、美にもつながっていく・・・
100年先もそんな日本文化と美意識が受け継がれているといいですね。
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