VOL.258「細寒天」
岐阜県恵那市山岡町。
この町の冬の風物詩は、寒天の天日干しです。
寒天は寒天でも、この地で作られているのは「細寒天」。
一般的に知られている「角寒天」よりも強度が高く、
羊羹などの和菓子に使われている“細い”寒天です。
そもそも「寒天」の原料は、「天草(てんぐさ)」と呼ばれる海藻。
天草を釜で煮詰めて固め、冬空の下にさらして水分の凍結と解凍を繰り返し、
乾燥させることで、パリパリの状態に仕上げていきますが、
「細寒天」は、固めたあとに、まず、羊羹状に切ったものを筒に入れて、
ところてんのように細く突き出してから、よしずの上に広げて乾燥させます。
寒天の原料は海産物ですが、寒天づくりの適地は山間部。
天草の水分を蒸発させるためには、雪が少なくて、
夜の冷え込みが厳しく、昼はカラッと晴れる山あいの気候風土が必要です。
そんな条件を満たしているのが、
風が少なくて、昼夜の温度差が激しい山岡町。
細寒天の生産量8割を占める名産地となっています。
山岡町で細寒天づくりが始まった当初から操業している、「山一寒天産業」。
3代目・代表の西尾幸久(にしお・こうきゅう)さんにお話を伺いました。
「細寒天は、工場内でつくる工業製品ではないんですね。
外で天日干しをして、凍結させて乾燥させるという、
職人の技で作られる手作りの製品ですね。
昭和30年代は、山岡町でも80ぐらいの会社があったでしょうか。
それが今は8つだけ。
規模は10分の1に減っていますが、
それでも、90年近く、脈々と続いた地場産業を続けていきたいと思います。」
豊かな自然環境と熟練の職人技。
その両方があって、はじめて生まれる天然の食材、「細寒天」。
羊羹だけでなく、いろんなレシピが楽しめるので、
ぜひ、多くの方に食べてほしい、と西尾さんは語ります。
食物繊維が豊富なヘルシー食材、
是非、「おうちごはん」に取り入れてみてはいかがでしょうか。