VOL.296「家庭用の金継ぎ体験キット」
割れてしまった器を、漆と金粉で修復する「金継ぎ」。
その歴史は長く、
海外でもそのまま「KINTSUGI」と呼ばれている、
日本ならではの伝統文化です。
一見、難しそう、と思われがちなこの技術を気軽に体験できるのが、
家庭用の「金継ぎキット」。
コロナ禍のおうち時間で、人気を集めています。
壊れた部分は“天然の漆”で繋ぎ合わせて、
仕上げは“純金の粉”で装飾。
そんな本格的なキットを作っているのは、
京都にある「堤浅吉漆店(つつみあさきちうるしてん)」。
漆を精製する明治42年創業の漆専門店です。
縄文時代から受け継がれてきた、世界最古の天然塗料である「漆」。
漆の成木から牛乳瓶1本分ほどしか採れない樹液は、
大変貴重な天然資源です。
創業から1世紀以上経った現在も、
「漆を一滴も無駄にしてはならない」というのが、「堤浅吉漆店」の社訓。
産地から届けられた漆を精製・調合し、乾きや粘度、色合いや艶の調整など、
ニーズに合わせた様々な漆を丁寧に製造しています。
漆の魅力を、金継ぎ体験によって、たくさんの人に伝えていきたい、
そう話すのは、同店・森住健吾(もりずみ・けんご)さん。
「有名人の方がやっていて、YouTubeで観て、自分もやってみたい、、、と。
きっかけは、それでいいと思うんですね。
よくあるのは、それで一回始めてみると、
それにハマっていく方は、年齢を問わずたくさんいるんです。」
器の“欠け”や“ひび”を隠す修復ではなく、
敢えて目立つ「金」で装飾する、日本独特の美意識、「金継ぎ」。
「ステキだな、オシャレだなと思って金継ぎをはじめて、
それから、自分たちの価値観や、
いまの暮らしを考えるきっかけになっていくのではないかと。
それが、金継ぎの魅力なんだと、個人的には思っています。」
自宅での金継ぎ体験をとおして、
モノを大切にする気持ちを育みながら、漆の魅力にも触れられる。
自分で完成させた金継ぎの器、新たな愛着がわきそうですね。