青ヶ島酒造
[青ヶ島村]

秘島で育まれた独特の味わい
杜氏によって味が変わる‶幻の焼酎〟
‶東京最後の秘境〟と呼ばれ、辿りつけるかは運次第といわれる‶絶海の孤島〟——。それが太平洋に浮かぶ離島『青ヶ島』です。東京から約360キロの場所に位置し、本土からの直行便はありません。八丈島を経由してヘリコプターか船で現地まで行けるのですが、それぞれ1日1本しか発着しておらず、船は霧や波の影響を受けやすいため高確率で欠航してしまうというのです。それが、秘境と呼ばれるゆえんなのですが、上陸できたときの喜びはひとしお。想像をはるかに超えるダイナミックな自然と、幻想的な星空、そして二重式カルデラ火山によって形作られた不思議な地形。望む景色すべてが美しく、海外から「死ぬまでに見たい世界の絶景」に選出されたのにも頷けます。
そんな青ヶ島には‶幻の焼酎〟と呼ばれ、一時期は入手不可能とまで言われた、焼酎ファン垂涎の神秘的な逸品があります。それが「青ヶ島酒造」で作られる『青酎』です。日本で一番人口が少ない村でもある青ヶ島村で、醸されるお酒とは一体どんな味なのか、そして何故、幻の焼酎と呼ばれているんでしょうか? 謎多き青酎について、青ヶ島酒造・広報担当の松原さんにをお話を聞きました。


自分の家で飲むものは、自分で作る。‶家庭の味〟が焼酎とは珍しいですよね。そして、その各家庭の味をそのまま商品にすることになったので、同じ「あおちゅう」という冠でも、ラベルに書いてある杜氏の名前ごとに異なる味の焼酎が販売されることとなったのです。現在、青ヶ島酒造には約10人の杜氏がいるそうです。また、それが‶幻の焼酎〟と呼ばれるゆえんにもなっているそうで…。
「それぞれの杜氏が個々に焼酎を作っているものですから、作れてもせいぜい1人50本ほどだったりするんです。あまり数量が作れないんですね。そんな中、年に一度、都や国の役人の方が島の調査に訪れていたことがありました。その際に、お土産に島の人が作った焼酎をあげていたそうです。すると、それが大人気になってしまって、役人さんたちがみんな島に来たがったそうです(笑)。そこからどんどん噂が広まって、知る人ぞ知る‶幻のお酒〟と呼ばれるようになったそうですよ」(松原さん)
今では、杜氏たちで工場の設備を共有しつつ、生産量も以前より増えているそう。その中で、最も出荷量が多く、ビギナーの方にまず飲んでほしいのが、青ヶ島酒造社長の荒井清さんが作る「青酎 池の沢」です。今回は、東京の地酒や島酒に詳しい利き酒師であり、東京料理の店「押上 よしかつ」を営む佐藤さんに、その味の魅力をお聞きしました。
「濃厚で香りが強いものが良いという焼酎好きの方に、まずオススメするのが青酎・池の沢ですね。ヘーゼルナッツのようなオイリーな香ばしい香りが特徴です。麦麹の味わいが強く出ていて、そこに芋の風味や甘味がのっているのが‶独特〟と評される理由ですね。ろ過の仕方がいい意味で荒く、それがコクやまろやかさにも繋がっています。クラフト感が最大のウリかと思います」(佐藤さん)
さっそく、飲んでみましょう。まず瓶を開栓しただけで、芳醇な濃い麦の匂いが辺り一面に漂います。これはすごいインパクトです。麦麹が生き生きと主張していて、まるでその場で麦を焙煎しているかのようです。これは初めての方には強烈な印象を残すでしょう。しかし、飲むと芋のまるみのある優しい甘さがしっかり出てきます。この麦と芋が重なる複雑な風味はクセになりますね。マニアの方がいらっしゃるのもよくわかります。
「味わいは強いですが、飲み方の幅は無限大です。当店では青酎を使った‶あしたばグリーンティーハイ〟が人気です。青酎、あしたば粉に玄米茶を少し足しています。玄米の香ばしさ、あしたばの苦味が青酎に合うんです。また、青酎はミルク感のあるアイスにかけると美味しいですよ。ブランデー感覚でかければ、ほろ苦く甘味のある青酎がミルクと溶け合って絶妙です」(佐藤さん)
それは、ぜひ一度試してみたいですね。また、紹介したい銘柄がひらがなの「あおちゅう」です。こちらは、何人かの杜氏が作る銘柄でそれぞれのラベルに生産者の名前が書かれた状態で販売されます。
「あおちゅうは、島のさつま芋が収穫された10月半ば頃からその年の生産がスタートします。味わいは、それぞれの杜氏によってかなり違いが生まれます。青ヶ島にある天然の麹を使うのですが、この麹の発酵の日数や気候・天気によっても随分味が変わってくるんです」

味は、柑橘系の酸味があると表現されることが多いといいますが、それも一定ではありません。生産された年や、それを熟成させた年数でも全く印象は異なります。杜氏の一人である奥山さんはこう話します。
「ぜひ生産者ごとに飲み比べてほしいですね。また、自分好みのアレンジも自由自在。好きな時間自分で熟成してもいいですし、ちがう杜氏の焼酎を自分の好みに合わせてブレンドしてもいいと思います」
焼酎をミックスするなんて、今までになかった斬新な発想です。しかし、その自由度こそが‶青酎らしさ〟でもあります。ぜひ皆さんも自分好みの青酎を見つけてみてほしいです。


青ヶ島酒造合資会社
東東京都青ヶ島村無番地
TEL : 04996-9-0135 / 04996-9-0332
FAX : 04996-9-0136 / 04996-9-0032
青ヶ島酒造合資会社WEBサイト
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