三宅島酒造
[三宅島三宅村]

米麹を使うことにより
日本酒のような甘みを感じる麦焼酎
火山活動とバードウォッチング、ダイビングで知られ、島全体が富士箱根伊豆国立公園となっている三宅島。
2000年に起こった噴火では、島民が全島避難となり、戻れるようになるまで4年5カ月という歳月が必要でした。
被災後、三宅島に戻り、伝統の焼酎をつくり続けるのが三宅島酒造・長谷川悦朗(はせがわ・えつお)さんです。
その思いを聞きました。
「もともと焼酎・雄山一は昭和4年創業の伊ヶ谷酒造が製造していましたが、噴火の数年前に 製造を休止していました。
その会社を復興させようとした方がいて、復興に協力してくれないかと誘われ、引き受けました。
そして、2008年に伊ヶ谷酒造から三宅島酒造に会社名を変えました」
実は長谷川さんは、酒造りが初めてだったといいます。
「最初は、酒の杜氏経験のある方が島に滞在してくれて、私は半年間お酒づくりを学びました。あとは国の酒類指導官の方にもご指導をいただきましたね。2007年12月から初めてのお酒を仕込みました」
その焼酎こそが現在の雄山一です。
「もともとの雄山一は、芋焼酎でした。ただ噴火があって、火山灰が7センチも積もったので、すぐに芋の生産はできなかったんです。
そこで、主流となっている麦焼酎を作ることにしました」
仕込み方は長崎県にある離島・壱岐島を参考にしています。
「専門的な話ですが、一般的な麦焼酎は、麦麹に麦かけとなっています。ただ雄山一は、米麹で麦かけです。それにより、日本酒のような甘みがでてきます。数年置けば、女性好みのまろやかで甘い焼酎になります」
実際に飲んでみると、香りには蒸留酒の強さもありますが、たしかに日本酒と間違ってしまいそうな甘みを感じます。
それゆえ、スゴく飲みやすいんです。麦の香りに包まれた米があるような奥深さがお酒の中に表現されています。
飲む人を選ばない焼酎です。ぜひ復興のシンボルとして多くの人に味わってほしいと思います。
長谷川さんは、酒のつまみも教えてくれました。
「島寿司や魚のフライもいいですね。もちろんくさやも合いますが、残念なことに三宅島では今はくさやを作ってないんですよ……最後の店が2018年に閉店してしまったんです。刺身、魚のフライ・明日葉の天ぷらもいいですね。島寿司、明日葉の胡麻和えもいいです。」
今でも三宅島は、噴火の災害の復興途上にあります。
「観光では、ダイビングのお客さんが多いですね。イルカを見るツアーも人気です。ほかには溶岩流の上を歩ける火山体験遊歩道やバードウォッチングのためのアカコッコ館という施設もあります。最近は道も整備されて、サイクリングもできるようになりました。近年、観光客が減って商店も大変です。みなさん自然を見に来てください」
三宅島自体の印象はどうでしょう?
「住んでいるとのんきなところで、ほのぼのとしていて島民の方もとても優しいです。関東でいえば、千葉県の白浜や館山なんかをイメージしてもらえば似ているかと思います。お酒作りをがんばっていますので、ぜひ島に来て、雄山一を飲んでみてください」

雄山一
米麹を使っているため、日本酒のような甘みを含みまろやかな麦焼酎。
米麹を使っているため、日本酒のような甘みを含みまろやかな麦焼酎。
