中村酒造
中村酒造[あきる野市]

丹念な仕込みと自然の恵みが生み出す
うま味豊かで繊細な逸品
風光明媚な丘陵地帯であり、多摩川最大の支流・秋川が流れる「あきる野市」。秋川渓谷では、清流がもたらす四季折々の美しい景観を望むことができ、週末は日帰り観光に来た人で賑わいます。
また、農業や畜産がさかんな地域で、都心に近いながら、新鮮な地元産の野菜や果物が手に入るのも魅力の一つです。
今回は、あきる野の豊かな大地で、長年酒造りに励む老舗の蔵元『中村酒造』さんにお邪魔します。秋川駅から秋川に通じる街道沿いに位置する中村酒造さんは、文化元年(1804年)に創業して以来、200年以上の歴史を重ねてきました。製造部の柏倉さんにお話をお聞きします。


「東京とは思えない美しい自然が周りにありますので、その恩恵を受けながら丹念に真面目に酒造りをしています。
綺麗な水はもちろん、秋川に近い場所なので冬の冷え込みが厳しいのですが、それも日本酒を仕込むのには適しているんです。
商品は『千代鶴』という銘柄をメインに約40種類ほどラインナップがあります」
吟醸酒や純米酒などの定番の日本酒に加え、地元で採れた柚子を使用したリキュールや四季折々の季節限定のお酒もあります。この時期だと新酒の『しぼりたて純米生原酒』もあり、好みや気分によって多彩な味わいを選択できます。ちなみに千代鶴とは、昔、秋川流域に鶴が飛来したことがあり、それに因んで命名されたそう。とても縁起が良さそうな由来ですね。そして、その千代鶴シリーズの中でも、柏倉さんイチオシの1本があるそう。
「『千代鶴 東京酒蔵魂 純米原酒』はぜひ一度飲んでもらいたいですね。このお酒は現当主が18代目を継いで最初に手掛けたお酒です。低温発酵もろみによる上品な香りと豊かな味わいが同時に楽しめる純米原酒で、酒母に使っている米は、大吟醸と同様に精米歩合35%まで丁寧に磨いています」


香りを嗅いでみると、優雅な吟醸香がたおやかに広がり、思わずうっとりとしてしまいます。口に含んだ瞬間の舌触りはさらっとしていて清らかなのですが、味わっているとどんどんリッチなコクが表れ、深みが増していく感覚です。
追って、日本酒らしいシャープさもあり、最後、舌にほどよい甘みが残ります。一口で色とりどりの表情に出会えて、フルコースを味わったような満足感です!
酒瓶のラベルも「桜や鶴をあしらい、江戸の都を想像させるようなデザイン」を目指したそうで、ゴージャスな雰囲気が漂っています。
贈答品、お土産品としてもオススメだそうで、何か特別な日に開けたくなりますね。そのような機会では、どんなお料理と合わせるのがベストでしょうか?
「あきる野市には『秋川牛』という東京都唯一のブランド和牛があるんです。しつこくない肉質と柔らかさが特徴のお肉で、ステーキにして食べると格別ですよ。
こちらと一緒に味わえば、肉の脂とお酒の旨味が馴染んで、より一層双方の良さを堪能できると思います」
ちなみに秋川牛は‶幻の東京和牛〟とも呼ばれていて、希少価値も高いようですが、そのお肉は、あきる野市内にある農産物直売所・秋川ファーマーズセンターで手に入るんだとか。

それは食欲をそそりますね。実際に、あきる野のグルメと中村酒造さんの酒蔵訪問を目的に観光に来る方も多いそうです。
「敷地内にある『酒造り資料館』には、昔の酒造りの道具や、酒造りの工程が分かるミニチュア模型なども展示されています。もちろん、その場でお酒の試飲や購入もできますので、観光がてらにぜひいらしてください」
最後に、今後の展望をお聞きしました。「あきる野市には、風土の特性が生かされた美味しい素材が豊富に揃っています。地元の料理と合わせることで、地元の酒もより生きてくると思うので、生産者同士の繋がりもぜひ深めていきたいですね。これからも地元に愛される酒造りを続けていきたいと思います」