このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
インフラの老朽化が全国各地で課題となっていますが、水道の老朽化も大きな課題になっています。そこで今回は、そういったインフラの老朽化の課題を解決してくれる取り組みを紹介しました。
大手総合商社の丸紅が開発し、仙台市などが導入している水道管路の更新計画作成をAIで支援するというサービスです。
お話を伺ったのは、丸紅株式会社 環境インフラプロジェクト部 環境インフラ第二チームの中井一孝さんです。
まずは、この支援サービスの概要について伺いました。
「普段、蛇口を捻ると出てくるあの水って実は浄水場から何キロも地下の水道管を通って蛇口まで水が来ているんです。その浄水場から蛇口の間の水道管というのは劣化したり、古くなっているとそこから漏れたりしますが、特に地下に埋まっているので、その状態が分かりにくいというところが問題であり今、日本の水道管ってかなり老朽化が進んでいるような状況です。一方で、たくさん水道管変えないといけないのに水道局さんの予算というのは、やはりちょっと厳しいところがあって、効率的にどの管路を変えていくかというのを選んでいかないといけない。それに対して、我々の方で、過去の漏水の傾向とかをAIを使って学習させて傾向を捉えて、この管路を先に変えた方が良いですよというような情報を提供して水道局さんの管路の更新をサポートするというようなサービスです」
この支援サービスで使われているのは、丸紅の100%子会社化したポルトガルの水道会社AGSが開発した「インフラワイズ」というシステムです。
AIはどうやって先に交換すべき水道管路を選んでいるのか、その仕組みとこだわった点について伺いました。
「データを主に3つ使いまして、1つ目は今埋まっている管路のデータです。どんな管路がいつ埋められたのか、そういったデータです。2つ目が過去に起きた漏水とか破損の履歴です。3つ目が環境ビッグデータと言われているもので、管路が埋まっている周辺の状況ですね、土壌とか道路、どれくらい交通量があるのかとかですね。そういったデータを機械に読み込ませて、これまで起きた管路の漏水というのが、どういう条件の時に起こっているのか、その傾向を掴むというようなやり方です。
今、環境ビッグデータってたくさんあって、それを集めること自体は難しくないのですが、その中から水道管の劣化に与えているデータってどれなのかというのをきちんと選ぶということが非常に難しくて、実際にどのデータを覚え込ませれば、AIがきちんと学ぶかというところの精度を上げるこだわりというか、AIってかなり強力なツールなのですが万能ではなくて、どういうデータを与えるかによって出してくる答えの良さ、というのが非常に変わるので、そのデータの質の確保やそこの開発は結構時間をかけてやっているところです。そういう意味では、その自治体さんの事情をよく知っている職員さんにヒアリングをしたり、データの欠損とか重要なデータがちょっと抜けているとか念のために確認したり、そういった精度を確保するためには中の事情をよく知っている職員さんの話も聞くというのは非常に重要な過程だと思っています」
最後に、その効果と今後の展開について伺いました。
「今まで複数の自治体さんで実施していまして、例えば単純に古い順から管路を変えていった場合と、このAIが学習してこの管路を変えた方が良いよという管路の順番に変えていく場合と実際に破損した管路を言い当てる割合というのが、2倍から10倍くらいの確率で当てられるというところは出ています。今後の展開としては、まだ新しい技術という認識なので、日本の水道局は人がどんどん退職されていなくなっていく中で、今までやってきた良いサービスを維持しなければいけないというところで、この新技術を使ってそういったところをうまく支援したいというところが1つですね。あとは、人も減ってお金もなかなかうまくいかないというところで、民間と官が力を合わせてインフラをうまく維持していくというのが大切になってくると思うので、そういうところですね。この民間企業である丸紅とかがこのサービスも含め、いろんな新技術を開発・適用することによって、市民のインフラサービスというのを守るのを官側と一緒にやっていきたいというふうには考えています」
中井さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2024
02.26
水道管路の更新計画作成をAIで支援するサービス