このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
去年4月から道路交通法や道路運送車両法などの改正により、いわゆる「自動運転」のレベル4が解禁になりました。一定の条件下で、遠隔監視のオペレーターさえいればバスの運転手は不要、無人自動運転の路線バスなどを運行することが可能になり、ドライバー不足が深刻化している公共交通機関の救世主として注目されています。
そこで今回は、茨城県境町や羽田空港に隣接する商業施設「HANEDA INNOVATION CITY」などで、自動運転バスの定期運行を実用化したソフトバンクの自動運転サービス子会社のBOLDLY株式会社代表取締役社長 兼 CEO、佐治友基さんにお話を伺いました。
まずは、ボードリーで使用しているバス、フランスのナビヤ(NAVYA)社が製造するアルマ(ARMA)の特徴について伺いました。
「アルマはハンドルらしいハンドルがどこにもなくて運転席も見当たらないと。これは、運転手がいないレベル4というコンセプトで作られた車両なので全部が座席ですね。ドアが開いて中に入ると前の席と後ろの席と、横向きの座席が向かい合っているようなスキーのリフトとかゴンドラみたいな感じで自然と会話が生まれるような、動く集会所みたいな乗り物になっています。
車の周りに8個のセンサーがついていて、常に360度周りを見ながら走っています。具体的には60mくらい先の障害物を検知する能力があって、飛び出しとか他の車が走っていたら適宜スピードを落としたり調整をします。そして、自分の場所を常に計算しながら目的地に向かって走っていく【自己位置推定】という機能がありまして、GPSとか3Dマップという技術を使って走っています」
自動運転バスは、今どこまで進んでいるのか、現状とレベル4への壁についても伺いました。
「レベル2という、中には運転責任を持ったスタッフが1人乗るという形で3年以上の安定稼働を続けてきました。今、羽田イノベーションシティという場所では、次は運転免許を持たないスタッフが1人乗車するだけで運行ができるように、レベル4の申請をして今、行政の許可を待っている状態です。
じゃあレベル4にするにはどうしたら良いかというと、全ての場所をレベル4で走れる車両を作ろうとするのではなくて、特定の条件で特定の場所を走れば良い、元々ダイヤと路線が決まっているというのがバスなので、それに合わせた技術開発を今やっていて、そこは順調に進んでいる状態です。法律面は大きな考え方の変化が必要で、今自動運転バスが決められた通りに走っているところに、もしも不意に飛び出しが発生してぶつかってしまったら、歩行者と自動運転バスどちらにも過失があるという形になるんです。
今までの法律の考え方から少し離れて、電車とかそういったものに近い乗り物、地域の方とか自治体が自動運転バスの走り方を決めて、その通りに走っているのであれば、そこに飛び出した人の方が悪いよねという考え方にしていくとレベル4の導入というのが簡単になっていきます。そういう考え方の変化といったところを迎えていく必要があるのかなと思っています」
最後に、利用者からの声と自動運転バスにかける期待について伺いました。
「高齢者サービス付きの住宅があるような街に引っ越しを考えていたんだけど、このバスが来てくれたおかげで、まだまだあと5年10年と住み続けようと思います、というような声もいただいています。他にも、別に自分は運転できるけど、おばあちゃんとかおじいちゃんの送り迎えをしなくてはいけないんだというような、30代から50代くらいのバリバリ働いている世代から自分が送り迎えしなくても、おじいちゃんおばあちゃんが自分で遊びに行ったり買い物に行くようになったりという声もありました。
運転免許を持たなくても車内で乗務できるという形になると、ものすごくバス事業とか交通事業で働ける人の数、働ける人の対象というのが広がっていきますので、そうやって地域の交通を支える運行ができる人たちをどんどん増やして、自動運転バスの力を借りながら地域を走っているバスの便数が増えたねとか、バス会社で働いている人の数が増えたねと、そうやって地域交通を支えるバス事業をより魅力的な成長産業にしていきたいと考えています」
佐治さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2024
02.12
自動運転バスの現状と課題