このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
本格的な冬山シーズンを前に雪山での遭難事故を防ごうと、警察や自治体などは登山客やバックカントリースキー客に注意を呼びかけています。
警察庁がまとめた今年7月から8月の全国の山岳遭難件数は、前年時期と比べて70件増の738件。遭難者は23人増の809人で、うち死者・行方不明者は16人増の61人。 遭難件数、遭難者ともに統計が残る1968年以降で最多となっています。
そうしたなか今回は、登山の遭難リスクに備える機能を持つ無料の登山地図アプリ“YAMAP”を運営する株式会社ヤマップのプロダクトマネージャー中島仁史さんにYAMAPについてお話を伺いました。
まずは、登山地図アプリ「YAMAP」は、どういったアプリなのでしょうか?
「電波が届かない山の中でも現在地を確認できるアプリで、登山前に地図をダウンロードしておくことで、電波が届かない山の中でも現在地が確認できて、登山の安全性が高まるというようなアプリになります。登山中に自分が歩いてきた軌跡(足跡)が確認できるので、例えば山の中で道に迷って登山口に戻りたいという時とか、山頂に着いたあと下山する時とかそういった時に、安全に自分が通ってきたルートを辿って下山することができます。登山中以外でも、事前に登山の計画を立てたりとか、山に行ったときに自分の記録を日記として残して、写真と一緒に思い出を振り返るというような機能もあります」
さらに、具体的な機能やこのアプリのメリットについて伺いました。
「最初に見守り機能という機能がありまして、こちら4年くらい前に開発した機能なのですが、その機能を発展させるような形で発展的に作ったものが、今回のグループ位置共有機能という機能になります。
見守り機能という機能は、登山に行っている方が、自分の登山中の現在の位置情報を、家族や友人、一緒に登山されている方ではなく、お家で待っている方向けに自分の現在の居場所を教えることができる機能で、山岳遭難が発生した時というのは、どれだけ早く遭難が発生したかを警察や関係機関に通報と言いますか相談できるかが極めて遭難救助の上では重要なのですが、こういった機能がない場合、例えば今日帰る予定だったのに帰らなかったとか、その翌日とか遭難が発生した後、時間が経ってからしか警察に救助を依頼することができません。しかし、この見守り機能があれば、登山中にリアルタイムでその登山者が今どの位置にいるかというのが、確認できるようになりますので、家族か友人の方が、これはちょっと様子がおかしいかもと分かった時にすぐ関係機関に相談できるというところがメリットとしてありました。
これが見守り機能なのですが、その見守り機能のデータを使って、登山中にお互いが離れてしまったりとか、場所が見えなくなったりした時に、どこに一緒にいた人たちがいるのか確認できるようにしたものがグループ位置共有機能になります。
見守り機能というのは遭難防止というか、遭難が発生した時どれだけ迅速に救助に進めるかというのが目的ですが、もちろん待っている方に安心してもらうというのも目的なのですが、グループ位置共有機能に関しては、遭難を防ぐと言いますか、例えば離れてしまったら、離れてしまったことに気づけるとか、離れた後にどうやって合流するかというような遭難防止というか、起こる前にどう防ぐかという観点が強いかなと思っています」
最後に、この「YAMAP」に対する期待、思いについて伺いました。
「すべての機能に共通してなのですが、多くの方がより安心・安全に登山を楽しめるようになって欲しいと思っています。山や自然は、人が定期的に山に入って手を入れることで守られてきたという側面がありまして、少しでも山に興味関心を持つ人が増えて、登山と登山文化を未来に残していきたいというのが、我々の想いなのですが、ただ、誰でも簡単に山に入れるようになることで、やはり知識が足りないと危険な部分もありますので、そういった時にこういったアプリの機能でそれをサポートしたいというふうに思っております。例えば、グループ位置共有で、すでに登山をされている方が、家族や友人を連れて山に行きやすくなって、その方達の安全に貢献できれば良いなというふうに思っていて、そういった効果と言いますか、山に行く人を増やしたいというか、そういった期待をしています。山に行く障害を少しでも取り除きたいという、山へのハードルを下げたいというのが根本にあって、そういった効果を期待しています」
中島さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2023
12.25
遭難リスクに備える機能を持つ登山地図アプリ「YAMAP」