このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
今回は、医療分野でのデジタル化、医師の外科手術を助ける手術支援ロボットについてご紹介しました。ロボットを使った手術は、2012年に初めて保険適用され、それ以降、徐々に適用範囲が拡大し、今では前立腺や胃、大腸や子宮などの手術にも使われています。遠隔で操作できるのはもちろん、手術支援ロボットは、人間の手よりもさらに細かい動きが可能で、精度の高い手術に適していることから、病院に導入される台数も急速に増えています。
そこで今朝は、補助の役割に特化した腹腔鏡手術支援ロボット「ANSUR(アンサー)サージカルユニット」を開発、今月から販売を始めている朝日サージカルロボティクス株式会社の最高開発責任者、安藤岳洋さんにお話を伺いました。
まずは、アンサーとはどういうロボットなのでしょうか?
「ANSURサージカルユニットは、執刀医が通常腹腔鏡手術をしながら操作を行うロボットになります。フットスイッチを操作することによって、執刀医の手の動きとロボットの手の動きをシンクロさせて、ロボットが持つ鉗子を術者が自由にコントロールできるというような特徴があります。
ロボット自身は患者さんの傍らにいて、術者と対面するように置かれまして、このロボット自身はその助手とスコピスト、スコピストというのはカメラを持つ人なのですが、その二人の役割を担っております。
術者が持っている、通常の腹腔鏡手術で使われる術具に、センサーが取り付けられていまして、フットスイッチを踏んでいる間だけ、このロボットの術具というのは術者が持っている術具に追従するように動きます。つまり、必要な時に助手の術具を術者自身が操作することができるというような状態になります。
想像していただくとしたら、パソコンのマウスでドラッグ&ドロップをするようなイメージで、自分が持っている術具とは違う鉗子、ロボットの鉗子を引っ張ったりとか移動させたりして、臓器を把持したりとか展開したような状態にして、そこに留めておくというようなことが術者自身によってできることが可能になります」
このアンサーの開発の背景には、このような課題もあったそうです。
「通常腹腔鏡手術というのは、狭い空間でさまざまな操作を行います。その中で臓器を持ち上げたりですとか、内視鏡を移動して適切な視野を確保してあげる必要があります。これはいわゆる視野展開と呼ばれる作業なのですが、この作業を行うためには、一定以上の技量を持った助手が必要となります。一方で、若い先生が一般的には入りますので、術者自身が「こうしたいな」と思ったとしても、思い通りの視野展開の作業ができるとは限らないという問題があるんですよね。このような問題を解決して、術者がより手術をしやすくすることで、合併症の展延ですとか、手術時間の低減などを狙えるのではないかと考えて開発を行ってきました」
さらに、現場ではこんなメリットもあるそうです。
「通常の手術というのは、術者と助手2名の計3人で手術を行うのですが、その中で実際の手術を担うという点では、術者自身が基本的な判断をして手術をしております。
助手側の役割としましては、術者がやりやすいように手術をするために、視野展開と呼ばれる作業で臓器を把持したりとか、ちゃんと見たいところを見せてあげるということをしているのですが、それを術者自身のやりたいようにできるということがあるので、実際術者がやりたいように手術ができれば結果的に手術自身のクオリティをあげることができるのではないかと考えております。安全性の観点から、必ずしもそれを省人化するということを目的にしたロボットではないのですが、実際、例えば患者さんを見ている最中に、常に手術室にいる必要がないとか、他のことをしながらでも、必要な時だけ入るというような、自由度が出てくると思いますので、その点では効果があると考えております」
今後の展開と期待についても、伺ったところ…
「短期的には、今臨床現場から出てきているような課題とか要望などの修正を行っていきつつ、中長期的には、ロボティクスという分野なので自動運転などで使われているようなAIの技術を応用して、半自動化など、より高度なロボティクスを使った研究・開発などを行っていきたいと考えています。これによって人手不足などによる医療機関の悩みなどが緩和されて、医師、または病院スタッフ、ひいては患者さんにもより良い医療が提供できるのではないかと考えています。まだまだ、弊社始まったばかりで、これからのところではあるのですが、是非今後の発展にご期待いただければ幸いでございます」と、お話されていました。
安藤さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2023
11.27
補助の役割に特化した腹腔鏡手術支援ロボット