このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
全国で24万4,940人。この数字、なんの数字かわかりますでしょうか?
実はこちら、2021年度に「不登校」とみなされた小・中学生の人数。24万4,940人で、過去最多を記録しています。
政府も子どもの居場所づくりに関する実態把握を進めていて、今年4月に発足したこども家庭庁でも、重要施策の一つとなっています。そうしたなか、オンライン上の仮想空間メタバースを活用した新たな不登校支援が注目されています。
そこで今回は、メタバースを活用した学習支援プログラム「room-K」を運営する認定NPO法人カタリバのスタッフ、白井さやかさんにお話を伺いました。
まずは、room-Kとは、どういうものなのか?お聞きしました。
提供:認定NPO法人カタリバ
「私たち、認定NPO法人カタリバが2021年から運営している、2Dのメタバース空間を使った不登校支援プログラムになっています。メタバースのことを、私たちはカタリバパークと呼んでいて、平日に多様なプログラムを実施して、気軽に来ても良いという部屋も用意して、不登校の子どもたちの居場所を運営しています。
利用しているのは、さまざまな理由で学校に通うことが難しい、連携している自治体からの紹介された小中学生が対象になっていて、約150人が登録しています。特に大事にしているのが、場所やプログラムというのを用意したとしても、なかなか利用に繋がらないという部分なので、ここは登録した児童・生徒に対して、臨床心理士さんであるとか、社会福祉士さんなどの専門性を持つコーディネーターと一緒に各個人に合わせて個別支援計画を立てさせてもらって、子どもにはメンターがついて週一回の作戦会議と呼ばれる面談をしています。
ご家族とコーディネーター、そしてメンターがチームになって、その子に合った学びであるとか、居場所に繋げる支援というのを行なっているのをこの「room-K」という不登校支援プログラムとして運営しています」
ちなみに、参加の仕方はそれぞれで画面をオフして、チャットだけで参加したいという子もいれば声を出して画面をオンにして参加したいという子もいれば、とにかくそのプログラムの場にいるだけで良いという子もいるそうです。
このプログラムを一昨年から運営しているそうなんですが、現場からはこんな声をもらっているそうです。
「立ち上げた時に、まず言ってもらったのは、決まった時間からプログラムが始まるということで、起床時間がまちまちだったお子さんが、参加するために午前中から、朝から起きるようになりましたという声が保護者からありました。
自治体の方からはroom-Kに接続をして1ヶ月も経たない利用者がいたのだが、その利用者がオンライン上で何度か人と話すことができたという体験から、自分で話せるのかもしれないという自信を持ったことで、本当にroom-Kに参加して1ヶ月だったのですが、2年ぶりに学校に行ったという事例が、エピソードがありました。
教育現場の方々からは例えば、やはり元気なのかな?とか、家では何をしているのかな?と気になってはいても、それがうまく把握できない場合というのがあった時にroom-Kでの様子を聞けるということで、実際の現場で好きなことを聞いていたという、その好きなことを聞いてみるということだったり、実際の支援に繋げて連携をすることで、支援が上手くいくということもあります」
さらに白井さんによると、こんな効果もあったそうです。
「先ほど、1ヶ月も経たないうちにまず行ってみたという方もいるという話をしましたが、すぐに行ってみようという意欲が湧くお子さんもいれば、やはり学校での傷つき体験であるとか、私はできない、という思い込みというか経験があった時に、オンラインの場で少しずつ誰かと話すというところで、他のところでもできるかもしれない、とか、学校でもできるかもしれない、という思いになるのは結構自然な形で、それが学校につながったりだとか、学校というところではなくても、別室登校であったり教育支援センターなら行けるとかという形で、その子が行けるオンラインではない社会のリアルな支援先につながるケースは本当に多いと思います。
本当に誰一人取り残さない学びというのを、実現するために、地方自治体などと連携をして、取り組みを進めているところなのですが、まず繋げる、というフェーズを今作っているとしたら、繋がった先に対して、オンラインの支援として私たちの役割って何だろうというのを今も考えていますが、さらに深めていきたいというところです」
白井さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2023
10.30
メタバースを活用した学習支援システム「room-K」