このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
今回は、医療業界のDXについて取り上げました。医療業界の課題というと、医師や看護師の人材不足、そして地域による医療格差の問題が思い浮かびますが、さらに2025年には「団塊の世代」が後期高齢者になることから、医療業界の人材不足はさらに深刻化すると予想されています。
病院などの医療機関では、カルテや問診票、処方箋の手続きなどが、いまだ紙ベースのところが多く、その結果、長時間労働となり業務の効率化が求められています。
そこで今回は、病院専用スマートフォンを手掛けるなどアプリを活用した病院の業務効率化を進めている株式会社フロンティア・フィールドの代表取締役社長兼CEO、佐藤康行さんにお話を伺いました。
まずは、フロンティア・フィールドが病院に提供している病院専用スマートフォン「日病モバイル」の特長についてお聞きしました。
「スマートフォン端末を共同で利用する場合、日勤の方が夜勤の方にスマホを引き継ぐとか日勤の方がそのような状況に置かれた時に、1つ1つアプリケーションをログインしたりログアウトしたりするということが必要になってきます。
日病モバイルは、日勤の看護師さんが夜勤の看護師さんに引き継ぎの際に、1度ログインするだけで、スマホ内のすべてのアプリが自分のログイン情報に塗り変わります。これによりスマートフォンの利便性が格段に向上するのはもちろんですが、自身のログアウト忘れによる、医療情報漏えいなんかもなくなるというふうに考えています。
昨今、弊社の日病モバイルはセキュリティに非常に堅牢なシステムを提供しています。それが故に、病院の電子カルテシステムにも接続をしています。そうすると、医師の方々はオンコールで自宅に待機している時なんかも、自宅からセキュリティが強固なネットワーク回線を通じて、電子カルテの情報をしっかり把握して病院に駆けつけるべきか否かというのを判断し、患者さんの治療方針を考えるので、非常に医師の働き方改革にも寄与できているというふうに考えています」
実際に現場からは、こんな声も上がってきているそうです。
「今までというのが、もともとガラケーと言われていた時代は、人間と人間のコミュニケーションは音声によるコミュニケーションが主だったと思います。スマートフォンが入ってきて、LINEというようなSNS系のサービスとかFacebookとか、Twitterみたいなものができてきて、コミュニケーションがどんどんテキスト化されてきた歴史があると思います。非常に人に時間を占有されないということでSNS系のサービスというのは、非常にお客様のウケが良かったと思うのですが、それを病院さまにも同じように持っていくと、音声のコミュニケーションというのは、自分の時間を取られたりとか人の時間を奪ったりすることになるので非常にテキスト系のコミュニケーションに移ったことで、精神的なコミュニケーションに対する軽減みたいなものも得られたというようなお声もいただきますし、自分の仕事のタスクをこなしている最中に横から電話がかかってきて、そのような時間を奪われるようなこともないということで、非常にご好評をいただいているというようなお話を伺います。ある病院さんでは、弊社の日病モバイルをご導入いただいたことで、看護師さんの離職が年間通してゼロだったいうような事例も伺っております。」
今後の展開として、こんなことも考えているそうです。
「セキュアなネットワーク上で、急性期病院や慢性期病院間での患者さんの情報共有が今後はできるようになったり、病院とクリニック間の患者さまの情報連携など、地域の医療情報ネットワークになることを期待されています。
また、病院から患者への医療情報提供、患者から医療機関へのバイタル情報などを提供するようなプラットフォームに進化していければ良いと考えています。
例えば、自宅でバイタルデータの変化が生じた場合、病院から患者へ受診を促したり、患者同士が匿名化しながら治療情報や治療後の検査時データなどを共有することで、患者側もファクトのデータにアクセスすることが可能になるというふうに思っております。このような取り組みで、医療を提供する側と医療の提供を受ける側の、情報の非対称性がなくなる世界をつくっていきたいというふうに考えています。」
佐藤さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2023
10.23
病院専用スマートフォン「日病モバイル」