このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
今日、ご紹介するのは教育現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)。番組でも、何度か取り上げていますが、先生の長時間労働や人材不足、さらにそれによる授業の質の低下が今、問題視されています。
そうしたなか、教員の質の向上、教員の働き方改革の推進を目指して奈良教育大学とソフトバンクは、今年3月に連携協定を締結しました。
そこで今回は、この連携協定でどんな取り組みを実施していくのか、ソフトバンク株式会社 公共事業推進本部 教育ICT推進部 担当部長の田中光太郎さん、奈良教育大学 客員准教授 小崎誠二さんにお話を伺いました。
まず、この両者の取り組みを簡単に説明すると、ソフトバンクが法人向けに提供していう動画共有サービス「ビジュアモール ムービーライブラリ」を活用して、授業の様子や研修の動画を教員や学校間で共有できる環境を整備しようという取り組みです。
ソフトバンクの田中さんによると、動画を簡単に共有するプラットフォームのサービスで、YouTubeにとても見た目も使い方も似ていて操作がとても簡単ということから、企業の社員研修やマーケティング活動などいろんな場面で使われ始めているサービスなんだそうです。
改めて、どういう経緯で両者が連携協定を締結することになったのか、奈良教育大学の小崎さん、ソフトバンクの田中さん、お二人に伺いました。
「いわゆる学校の先生たちというのは、今、大量退職を迎えていて、その先に若手を大量に採用しているということがあるんですけれど、中堅の教員がほとんどいないんですね。その時に、若い先生たちにとっても全くノウハウがなくて、今は先生たちの仕事がしんどいと言われているのと同時に、先生たちのレベルが下がっているよね、みたいな話にもなってきていて。それは、自分たちで動画を見て勉強したり、自分たちの授業を自分で見ることができたりしたら、どんどん改善していけるんじゃないのか、ということで、このツールに注目したというところです」
「私たちも、学校現場の先生方の働き方にはとても注目をしていまして、やっぱり大きな社会課題の1つだと思うんですね。先生がいかにハッピーな状態で学校で仕事をしていただけるかというのは、ICTの力を使ってもいろんなお手伝いができると思っていました。そこに私たちがやりたかったことと、小崎先生からお聞きした学校の今の状態を掛け合わせると、多分いい取り組みになるんだろうなと私は思いました。私たちのご提案と小崎先生のお考えがピタッとマッチした瞬間があったんじゃないかなと思います」
使ってみた現場での反応について、奈良教育大学の小崎さんに伺いました。
「学生たちが自分が教員を目指す模擬授業をするときに、それを撮って自分で見るというのもあるんですけれど、たくさんの先生たちに見てもらってコメントをもらいたいとか、今学校をまわって色々な教育実習をしているんですけれど、それも、他の人に見てもらったり、自分たちで振り返ったりするときに、話だけで終わっちゃっていたものを録画することによってたくさんの人に見てもらったり、振り返ったりできるようになるということで、すごく積極的に活用されている。それから、自分たちでいろんな研究の発表をするときにも、このコンテンツを使えばたくさんの人に見てもらえるよね、ということになってすごく好評ですね。学校の先生たちからもぜひ使いたいという声が上がってきているということです」
最後に今後の課題について、小崎さんに伺いました。
「サンプルとなる素晴らしい授業を、教員研修とか企業研修みたいにして配信してみるというスタイルは、もう誰もが思いつくので、そういうことは国としても始めていますし、いろんなところで活用されているという部分が出始めていますね。ところが、日頃の授業を撮ったり、自分自身の授業を見るために撮るということについては、当然誰もチャレンジもしていないんですけれど、圧倒的ニーズはそこにあるので。そういう点では、小さな取り組みに見えるんですけれど、数年か数十年かよくわからないですけれども、先生たちが自分の授業を撮ってみて振り返ったり、仲の良い先生同士で自分のやった授業を共有したり、良い授業が撮れていたらそれを見て使って、またさらに授業するということに、どんどん広がっていくんじゃないかなと思っています。
これは大きい影響を与えていく、という範囲で考えた時に、私たち学校の教員というのはまず、社会を、未来をつくっていく子どもたちを預かっていきますので、その子どもたちと関わる場をより楽しくしたり、より良いものにしようと思った時に、この動画を活用していこうということですから、そもそも先生の質が上がる、それによって学校の質が高まる、そこで育った人たちが大人になって社会を変えていく時の大きな影響を与えていったり、社会を支える人材につながる、という意味なので、いよいよ先生に焦点を当ててそこの質もしっかり上げていこうという取り組みとしては、これまでにないインパクトになる可能性はあるかなとは思っています。」
小崎さん、田中さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2023
07.17
動画を活用した教員の質・学習環境の向上を目指す取り組み