このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
児童生徒に1人1台ずつタブレット端末など配備する文部科学省の「GIGAスクール構想」。端末の本格活用はすでに全国で始まっています。
現在は、次のステップとしてタブレット端末で蓄積されたデータをいかに有効活用するか、ということが課題となっています。
そういったなか、全国に先駆けて端末の導入を進めていた東京都渋谷区では、端末への入力情報を集約して、それを見える化する「教育ダッシュボード」というシステムを独自で開発し、小中学校に導入、注目を集めています。
そこで今回は、渋谷区教育委員会 教育指導課 指導主事の清水雄一さん、教育政策課 教育ICT政策係の竹澤悠人さん、お二人にお話を伺いました。
まずは、清水さんに「教育ダッシュボード」とは、どういったシステムなのか伺いました。
「教育ダッシュボードというのは、子供1人1人の幸せ、ウェルビーイングの実現のために、子供たちの興味や関心や悩みを丁寧に見取り、個々の状況を踏まえた指導、支援につなげるためのシステムです。 基本的には、今まで学校が個別に把握していた情報をひとまとめにしていたものです。データがどんどん蓄積されていくので、時系列で子供たちの変化を見ることができます。画面は、学校全体の画面、そして、クラス状況の画面、個人情報の画面という3つに分かれていて、必要に応じて深堀りできるようになっております。
例えば、クラス状況の画面ですと、1つの画面に、欠席状況であったり、保健室の来室情報、あとは学校生活に関わるアンケートの結果、そして、毎朝の子供の気分であったり、タブレット端末の利用状況、そういうものが1つの画面になって見えるようになっています。気になる子供が見つけやすくなっていて、1つ1つのデータを、複数のデータを組み合わせて子供の状況を見取る、そういうことができるような仕組みになっています」
2ヶ月に1回は、「学校が楽しいか?」などの学校生活に関するアンケートをとっていて、学習記録とともに、子どもたちの心境の変化を「こころの天気」として晴れや雨など天気マークで日常的に記録しているそうです。
竹澤さんによると、システムを開発する際、こういったところにこだわったそうです。
「ダッシュボードはまずスモールスタートということで展開をしております。なので、今後追加の開発であったりだとか、現場の声や時代の変化に適用して、どんどんブラッシュアップができるような仕組みということで構築しております。
例えば、区の職員でもレポートの見え方を変えたりだとか、簡単なものであればデータを追加したりしていくことができるような仕組みになっております。もう1つが、やっぱり利用者が先生ということで、あまりITとかに詳しくない方でも利用がしやすいように、できる限りシンプルな構成というところで、システムの操作性にもこだわっているところはございます。そういったシンプルな操作性であるとか汎用性を実現するために、使っている仕組みもMicrosoftの結構一般的なものを使っているというところで、汎用性や操作性を重視しているというところでございます」
清水さんによると、現場ではこう言った声が上がっているそうです。
「データがあることで、様子がおかしいなと思ってから気づくのではなく、気になる項目にチェックがついていることで、 先手を打った指導、支援というのができる、そこがまず1つです。そして、データの利活用によって生み出された時間で、もっと子供たちと接することができる、話をじっくり聞ける、そういうようなことができるようになりました。
検索履歴も1つのきっかけとなります。例えば、鬱とかそういうキーワードがある子のダッシュボードを見た時に、例えば他の毎日の子供たちの気分が優れない状況というのがわかっていたり、あとは、先生に相談したいことがあると書いてあるのに、先生に相談できない。困っていることがあると言っているのに、先生にはなかなか相談できない。困っているのに相談できないという状況というのはやっぱりちょっと大変な状況なんじゃないかな…先生たちはそういうのを見て、子供のSOSに気付いて対応する、そういう風な1つのきっかけとなるというのが、検索ワードですね」
最後に今後の展開についても伺ったところ、今、一人一人の個性の発見と良さや可能性を伸ばすアプローチとして、先生が見るものでなく、生徒自身が見る子供向けの教育ダッシュボードも開発中だそうです。
また、「教育ダッシュボード」は、あくまで対面の機会を増やしたり、対面の時間を深めていくサポートツールとして、活用されているとのことでした。
清水さん、竹澤さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2023
06.05
東京都渋谷区が開発導入している「教育ダッシュボード」