このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
これまで、建設業界、保健会社、学校、自治体など様々な業種のDX(デジタルトランスフォーメーション)を紹介してきましたが、今日は郵便局、「郵便DX」をご紹介します。
実は、日本郵便では、最新のデジタル技術を駆使した次世代型郵便局を今年2月に千葉県市川市に新設、稼働を始めています。この新たに開局したのは、「市川南郵便局」。首都高速道路にも近く、郵便物流のハブ拠点となる「地域区分郵便局」という位置づけで、担当エリア内の郵便局が集めた郵便物や荷物を全国へ発送する役割と、全国から届いた荷物をエリア内の郵便局へ仕分ける役割を持つそうです。
そこで今回は、郵便事業のDX化の起点となると郵便局として注目されている市川南郵便局について、日本郵便株式会社 本社 郵便・物流施設室 室長の渡辺正明さんにお話を伺いました。
まずは、市川南郵便局を新設した経緯についてお聞きください。
「少子高齢化、人口減少による労働力不足が言われるようになって久しいわけですけど、郵便局だけが雇用を確保するというのは非常に難しい問題だと思っています。
郵便・物流事業は、費用の6割を人件費が占める労働集約型の事業でございまして、今後物流の需要は一層高まる見込みであることを考えますと、今後とも全国津々浦々に郵便・物流サービスを継続してお届けするためには、積極的にデジタル技術を取り入れて、できるだけ人の手間を削減し、かつ作業を効率化できるDXを推進していくことが不可欠と考えているところでございます。
雇いたくても雇えないという状況が起きていまして、費用の6割を人件費が占めると申し上げましたけれども、いつまでも人に頼っているといずれ郵便局だけでなくとも、労働力が確保できなくなるという時代がすぐそこまできている、ということで先端のデジタル技術を使って、できるだけ人手を使わないような自動化、あるいは省人化、こういったことを進めて乗り切っていきたいということでございます」
市川南郵便局では、いったいどういったDXが導入されたのでしょうか?
「DXの取組みとして導入した機械やシステムは、主に四つあります。
一つ目は、郵便物や荷物を運ぶかご車、私どもでは「パレット」と呼んでいますが、これを自動で搬送する無人搬送車です。これをAGVと呼んでいますが、人手で運ぶ負担を解消しました。
二つ目は、荷物の処理の効率化に対応した区分機です。仕分け先のレーン数を多くしたことで、限られた時間内に大量の荷物の区分が可能になりました。
三つ目は、一つ目で申し上げたAGV、あるいは二つ目で申し上げた区分機の稼働状況を把握できるシステムです。これにより、AGVの遠隔操作であったり作業の進捗管理の見える化を可能にしました。
四つ目は、スマートフォンアプリでトラック便の発着管理などができるシステムです。これにより、効率的にトラック便を受け入れることが可能になりました。かご車につけた票札と呼ばれるものなんですけれども、票札と呼ばれる名刺サイズの紙をかご車に貼ってありまして、そこにQRコードが入っています。その情報を読んで、どこ宛の荷物で、どんな中身ですか、といったものを把握できるシステムになっています。今までは全部紙でやっていたが、今はスマートフォンアプリを使ってやるようにしたということでございます」
AGV(無人搬送車)の本格導入は、郵便局としては初めてで、のべ床面積4万3000平方メートルという広大な構内を59台のAGVが稼働しているそうです。
これらのDXによって、どのくらい効果がでているのでしょうか?
「社員の声としては、最新鋭の機械やシステムの中で働けることは大きな楽しみであり、お客さまの利便性にもつながっているのではないか、という声を聞いています。また、今まで重い荷物を人の手で運ぶ負担がありましたが、それが軽減され、女性の社員でも無理なく作業ができることも魅力だという声も出ています」
最後に、今後の展開について伺ったところ、渡辺さんは、「新しい機械やシステムの稼働状況をしっかりと分析したうえで、今後は全国への展開も視野に入れて考えていきたいと思います。全国津々浦々に今後とも継続して郵便・物流サービスをお届けしなければならないので、その使命を果たしていくために今後も取組んでまいりたいと思っております」とおっしゃっていました。
渡辺さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2023
05.29
郵便DX 最新のデジタル技術を駆使した次世代型郵便局