このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
アパレル業界では「商品の供給過多」、「過剰在庫」が大きな課題となっています。大量生産・大量消費を行う企業が多く、1年間でおよそ79万トンの衣服が処分されています。
そのうち、ごみとして焼却処分されてしまう衣服はおよそ6割にのぼり、数でいうとおよそ29億着が作られ、そのうち15億着が捨てられているそうです。
そうしたなか、過剰在庫をなくそうと、売れる分だけ生産しようという取り組みが少しずつですが広がってきています。
そこで今朝は、注文に応じて洋服を1着から生産できる生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO」(メイドバイゾゾ)についてご紹介します。
お話を伺ったのは、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOの生産プラットフォーム本部 本部長の桑山明典さんです。
改めて、このプラットフォームを開発した経緯について伺いました。
「ファッション業界は供給量が年々増加していまして、大量生産、大量廃棄というのが懸念されています。それに加えて、過剰在庫、売れ残りのリスクを常に抱えるビジネスモデルというのがファッション業界にあります。
当社は、ファッション業界のECとして、売る方に加えて、今まで手をつけてこなかった生産の支援というのに踏み込んで、ファッション業界の課題を解決したいと考えております。今までの生産というのが、まずは作り置きをして、それを売っていく、そして売れなかったらセールをしたり、さらに売れ残ったらそれを廃棄するというビジネスモデルです。それを解決するためには、作ってから売るではなくて、売ってから作るという解決策を我々は研究しております」
この「Made by ZOZO」は、最低1着の注文から生産し、受注から最短10日で発送するという生産支援プラットフォーム。顧客からの注文が入ると、受注データを「Made by ZOZO」のシステムに連携して工場へ発注。工場で1点ずつ生産された商品は、ZOZOの物流拠点から購入者のもとへ発送されるということなんです。
その最低1着からの生産、受注後最短10日での発送を可能にしているのがデジタル化なんだそうです。
「我々がこだわった点としては、徹底したデジタル化というのが特徴となっています。当社の強みでもあるテクノロジーを活用して、生産におけるサプライチェーンをデジタル化して、データを一元管理することで、その中で行われているコミュニケーションであったり、管理コストを削減するということが可能になっています。そこを可能にしているので、小ロット生産、短納期生産が可能となっています。
その中でも、1つ1つの付属や生地、そういった細かいところから、生産における各種工程、切ったり、縫う順番であったり、ポケットを組み上げる、どこを縫う、という縫製工場の中の全ての行程の指示がデータ化されているのが、大きな特徴となっています。
例えば、工場では作業指示書は紙で管理されていて膨大な数の中から目視で確認して商品ごとの仕様書を探していたところも今は、縫製スタッフの手元のタブレットで瞬時に商品の縫製方法などがわかるようになっているそうです。さらに、商品に使う生地などの在庫は、ZOZOが抱えることになりますが、同じ生地を複数ブランドの商品で使うなどして、コストを抑えているとのことでした。
実はこのサービスを始めてみて分かったそうですが、予想外の収穫もあったそうです。
「去年の9月に販売を開始したのですが、この受注生産というのは、買っていただいてからお時間をいただいて届くというビジネスモデルになっています。しかしながら在庫切れなく、いつもより多いサイズで販売することによって、1型あたりの売り上げが1.5倍多くなっております。お届けする時間にかかわらず買っていただけるということがわかった、というのが大きな収穫でした。
いつもですとカーキ欲しいのにカーキないじゃん、カーキだけないじゃん、カーキのMだけないじゃん、というようなことが起こってしまうんですけれども、受注してから作るので、その欠けがなく売れる。さらにはいつもですと、S・M・Lしかないものが、XSからXLまで、在庫がないことによって、より多くのサイズを販売することが可能になっています。そういった売り方の違いで、1.5倍の売り上げとなっております。
納期がかかるということで、最初はどうなるかというのが非常に不安でしたけれど、納期に関わらず買っていただけるというのがデータとしてもわかったというのが、本当に大きな収穫でした」
最後に、今後の展開について伺ったところ、桑山さんは「我々がこういった生産のプラットホームというのを構築することによってアパレルにおける課題である、大量生産、大量廃棄というのをなくしたサスティナブルなファッションというのが実現できればいいと思っております。ファッションのサスティナビリティについて考えるきっかけになったら、非常に喜ばしいです」と、お話しされていました。
桑山さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2023
04.03
注文に応じて洋服を1着から生産できる生産支援プラットフォーム