このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
先日、東日本大震災から12年を迎えましたが、地震以外にも温暖化など気候変動の影響により、猛暑や集中豪雨など大規模な自然災害も増えています。
そういったなか、各自治体でも様々な防災対策に力を入れていて、デジタル対応を進める自治体も増えてきています。そこで今朝は、福島県会津若松市で先週から提供が始まった防災用アプリ「デジタル防災」を紹介しました。
お話を伺ったのでは、アイデアの立案とスマートシティ会津若松全体との連携に関する部分を担っているアクセンチュア株式会社 ビジネスコンサルティング本部 マネジャーの村井遊さんと、アプリの開発を担当しているソフトバンク株式会社の法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部の馬越孝さんです。
まずは、開発の経緯についてアクセンチュアの村井さんに伺いました。
「開発の件につきましては、大きく2つの背景があります。1つはスマートシティ会津若松という取り組みが、元を辿れば東日本大震災からの復興がきっかけとなって始まったということでございます。デジタルで社会課題を解決するというこのプロジェクトで、デジタルで命を救うデジタル防災のアイデアが生まれたというのは自然なことだったのかなと考えています。
もう1つは、会津若松市は、コロナ前で年間300万人以上の人が訪れる観光都市であるにもかかわらず、必ずしも観光客の安全・防災の対策が足りていなかったのかなと捉えたところでございます。防災アプリをインストールさえしていただければ、市民の方でも観光客でも、スマートフォンの位置情報を活用して、避難誘導などが行えるのではないかと考え、デジタル防災のアプリ開発に至りました」
具体的なアプリの内容ですが、災害時にスマートフォンを使って、今いる場所から最適な避難場所へ、危険な箇所も確認しながら避難できるアプリで、家族が離れた場所にいる場合は、それぞれが無事なのか、安全な場所に避難できているかなど、家族の安否状況も確認できるようになっています。
とても便利なアプリだと思いますが、一方で個人情報の問題もありますよね。この個人情報の問題について、ソフトバンクの馬越さんは、このようにお話されています。
「個人情報については、災害発生時に限って今いる場所を共有する、災害発生時に限って普段飲んでいる薬や補聴器をつけていることを共有する、ということを実証実験で市民の方お一人お一人にしっかり目的を伝えることで、不安な点は払拭され、そういったことは、やはり聞かれて答えるのではなくて、自分の状況が避難、救助に来てくれた方に伝わるということは、非常に重要だという意見が多く聞かれています。
情報の共有、特に個人情報というと、なかなか不安になってしまうというのがやはり普通だと思います。ただ何の目的でそれを共有するのか。家族が離れ離れになっている時でも、位置情報が町内会で共有できるとか、大切な人と自分の家族の飲んでいる薬が共有できるとか、目的に応じて情報共有のあり方ということをお話しすると、それは自分で選択して誰に共有したいということで、個人情報の共有が逆に望まれているということが、実証実験でもわかってきております」
最後に、これまでの実証実験で分かったこと、このアプリの寄せる期待について馬越さんに伺いました。
「地方都市では災害支援する人、実際に支援する方の人手も少ない。そういった状況からどうしても今まで人手に頼る方法で、皆さん避難できていますか、無事ですか、と個別に住宅を訪問するということから、今回のアプリで災害時に情報を開示していいよという範囲で、自分の飲んでいる薬や居場所を即座に共有できるということは、非常に地方都市では有効であること。また、その大都市でも観光客や普段そこに住んでいない人が来た場合に、それぞれの個人情報を必要な範囲で共有できるということは非常に有効である、という意見が実証実験で分かってきました。
大きな地震など災害が起きた時、やはり家族と連絡が取れないと心配になったという声が、これまでもよく聞かれました。災害が発生した地域では、支える自治体職員の方々も被災者です。こういったデジタル技術で情報連携し、迅速な避難や被災者の救助につなげられるよう、住民と市役所が助け合う防災の形というのをしっかり作っていきたいと思っています」
村井さん、馬越さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2023
03.27
福島県会津若松市で提供されている防災用アプリ「デジタル防災」