このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
今回は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた飲食業界の取り組みをご紹介します。飲食業界はコロナ禍から順調に回復してはいるものの、一方で深刻な問題となっているのが人手不足です。もともと、人材が定着しないなど採用活動は難しいと言われていましたが、それに加え、コロナの影響でさらに人材が集まりにくくなっています。
帝国データバンクが去年調査した「非正規社員の人手不足の割合」では、全国にある飲食店の76.3%が「人手が足りていない」という状況で、その数は年々増加しているんだそうです。
そこで今朝は、従業員の離職防止として、従業員の指導用にタブレット端末を導入した、長崎ちゃんぽんの専門店などを全国各地にチェーン展開しているリンガーハットの取り組みをご紹介します。
お話を伺ったのは、株式会社リンガーハット DX推進チームの係長、児玉竜司さんです。
まずは、タブレット端末導入の経緯について伺いました。
「元々この電子マニュアルを導入する前は、良品計画の業務基準書と、「MUJIGRAM」(ムジグラム)というものがあり、こちらが業務の標準化とマニュアルを細かく記載することで口伝ではなくて、きちんと決まった作業をやるといった取り組みがありました。それに習って弊社ではリングラムというものをマニュアルとして、店舗の方に展開と、本社、間接部門の方では業務基準書というものを推進していったというところがあります。そうなるとマニュアルの数自体が多くなりますので、紙だと枚数が膨大になるというところと、業務基準書の更新の度に紙を差し替えなければいけない、そういったところがありましたので、電子マニュアルにすることで、開いていた段階ではもう新しいものに変わっている、膨大な量のマニュアルがタブレットの中1つにまとまる、というところが、導入の背景になります」
児玉さんによると、大体1つのマニュアルが10ページぐらいで、それが200マニュアルくらいはあるそうで、それかける店舗数になるのでかなりの枚数になります。そのマニュアルのデータが本社から送られて、店長や時間帯の責任者が、パソコンから印刷をして、それを差し替えているそうです。
導入した電子マニュアルは、マニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」(ティーチミー・ビズ)というもので、その概要と効果について、児玉さんは、このようにお話しされていました。
「元々、紙の頃は、本社から店舗にデータを送って店舗で印刷するので、白黒の用紙でのマニュアルになっていました。今回の電子化でタブレットで閲覧するということで、カラーで閲覧することができますので、写真とか、動画を入れるようになっています。動画や写真があることで、完成品のイメージだったり、文字で伝わらない部分が動画で確認できるようになっています。またタブレット内で検索の機能はありますので、知りたいマニュアルをすぐ検索して、必要な時にすぐ見られるというところです。あとは、管理者側で、どの店舗が何回そのマニュアルを閲覧しているかというのが確認できますので、どのマニュアルが店舗にとって必要なマニュアルかどうかというのも確認することができます。
一番わかりやすいのが新人の教育時間で、大体一人前になるまでに50時間ぐらいかかっていましたが、現在は30時間にまで低減できたと聞いております。あと、1名で複数店舗兼任している店長というのが多いので、自分が常駐してない店舗に対してのトレーニングもできるようになったというところです」
また利用者からの反応について児玉さんに伺ったところ、店長からは、付きっきりにならなくてよくなったという声、店長とトレーニングを受けた双方からは、動画でイメージが持てるので、習得度合いがかなり良くなったという声。さらに、早く仕事ができるようになるので、楽しんで自発的にタブレットを見て、仕事を覚えるようになったというような声もあがっているそうです。
また、今後の展開について、児玉さんはこんなお話をされていました。
「現在、新人のトレーニングは、すでにマニュアルがあるので、入社してからのオリエンテーションの動画で、今までは読み合わせ等をやってルールの説明をしていましたが、そういったものも、動画に1つにまとめて、それを見ればオリエンテーションは終了する、といったものを今テストで進めています。あと本社への問い合わせですね。他にもデジタル化している業務というのがありますので、店舗からの問い合わせがあった時には、この「Teachme Biz」(ティーチミー・ビズ)のマニュアルを見てください、ということで対応できるようにしようと思っております。人手不足や離職ということがありますので、とにかく現場で働く従業員が 楽に早く、正確な仕事ができるようにする。そういったところを目指しております。
あと、店舗の店長のデスクワークの時間を減らしてあげて、店舗のQSCの向上に注力できるような環境を作りたいと思っております。QSCというのはクオリティ、サービス、クレンリネスということで、料理とサービスと店舗の清潔さです。店長はこの3つをとにかく底上げをして、お客様に満足いただくサービスを届けるというふうに仕事をしていますので、シフトの管理、発注、売り上げの予測、そういうデスクワークというのを外して、お客様の方を見てもらうようにしたいと考えています」
児玉さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2023
02.27
従業員の指導用にタブレット端末を導入 リンガーハットの離職防止対策