このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
今回取り上げるのは、「デマンド型交通」。利用者の事前予約に応じる形で、運行経路や運行スケジュールをそれに合わせて運行する乗合型の公共交通サービスです。
もともとは、欧米でDRT(Demand Responsive Transport・需要応答型交通)として発展してきたサービス形態、「複数の利用者が乗り合って利用する」という路線バスの性格と、「予約に応じて利用者の希望する地点間を運行する」というタクシーの性格、両方を持っているサービスのことなんです。
このデマンド型交通、日本でも導入する自治体は増えていて、2018年時点で555市町村。2009年と比較すると、およそ10年で4.1倍に増えています。
そんななか今回は、北海道の十勝バスが運行を始めたAIが予約に応じて最適なルートを決める進化型デマンド交通「おおぞライナー」について、十勝バス株式会社・乗合部乗合課の近藤薫さんにお話を伺いました。
進化型デマンド交通、「おおぞライナー」とはどんなシステムなのでしょうか?
「需要に応じて配車するという仕組みになっておりまして、タクシーとは違って相乗りにもなりますし、相乗りが発生する場合には、そのお迎えに行くルートですとか、目的地のルートについて、最短なルートでかつ効率の良いルートをAIのシステムで自動的に認識して配車するというようなサービスになっています。この予約については、今電話予約とアプリでの予約を受け付けておりまして、例えば電話で予約があった場合には、オペレーターが電話を受けて、オペレーター側でお客さんをお迎えに行く場所と目的地を入力します。アプリの場合はご自身で、例えば現在地であれば現在地、目的地であれば目的地を入力して、それぞれの情報がバスドライバーが持っているスマートフォンのアプリに飛んできて、この人を迎えに行ってください、こちらに向かってください、といった指示がされます。
おおぞライナーというネーミングの由来は、メインで運行しております大空地区というところがございまして、大空地区からを中心に生活に必要な商業施設であったりとか病院であったりを可能な限り運行しております。そのメインの大空地区に関しましては、ご自宅の前までお迎えに行くことができます。そのエリアの外については、既存のバス路線のバス停が数多くあるのですが、そのエリアの中でいうと130個のバス停がいわゆるミーティングポイントになっておりまして、大空地区に関してはDoor to Door、バス停以外のところでも乗ることができるのですけれども、それ以外のエリアについては既存のバス停というふうになっています」
運賃は乗車区間によって、200円から500円。4000円の1ヶ月乗り放題プランもあるそうです。バスは小型で、定員は8人だそうです。
近藤さんによると、利用した地域の方が「便利だったよ」と、口コミで評判が広がっていて、乗車数も徐々に増えているそうです。
一方で課題もあって、どういったシステムなのか、なかなかチラシや案内では伝わらなくて、1度体験してもらうことが必要ではないかとお話されていました。また、高齢者の利用者が多いため、ほとんどが電話予約だそうでオペレーターの負担軽減という観点から、アプリからの予約を増やすことが課題だと話されていました。
最後に、今後の展開についても伺いました。
「今、デマンド交通という形で、新しいスタイルを始めましたが、まぁこれが当然のように利用されることによって、その乗り物、おおぞライナーから一般の路線バスに乗り継いでいただくと。その路線バスについても将来的には主要な幹線のみ大きい車両で一般の路線バスで運行して、それぞれの何て言うか枝のところですね、枝についてはこういったデマンドの乗り物が主要な場所まで運行して効率良く全体の交通網をしていくっていうことが考えられます」
デジタル化が進むことで交通手段のスタイルもこれから変わっていきそうですね。
近藤さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2022
10.17
AIが予約に応じて最適なルートを決める進化型デマンド交通