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このコーナーでは、暮らし、仕事、社会、私たちの身近な
ところにあるデジタル化の動きを紹介していきます。
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2022 09.26
建設現場で残ってしまう生コンクリート「残コン」を削減する取り組み

このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。

去年開催された東京オリンピックではスタッフ向けの弁当4千食が廃棄されていたことが大きく報道されましたが、「食品ロス」の問題は様々なところでロスをなくそうという取り組みが進んでいます。
そんななか今回は、あまり知られていないロス問題について取り上げます。その問題というのが、「生コンクリート」のロス問題です。残コン問題とも言われていて、建設現場で使われず残されてしまう生コンクリートの問題です。
この生コンは原料のセメントを製造する際に大量のCO2を排出します。人間の活動由来の排出量のおよそ5%を占めるとも言われていて、使われずに残った「残コン」を削減する技術の開発が今急速に進んでいます。

そこで今回は、西松建設のAIを使った残コンを減らす取り組みについて西松建設株式会社 技術研究所 建築技術グループの木村仁治さんにお話を伺いました。
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固まる前のコンクリートを生コンクリート、通常「生コン」と言います。生コン工場から工事現場までミキサー車で生コンを運搬し、一般的には木で作った型枠の中に流し込み建物を作ります。
コンクリートを型枠に流し込んだ後、ミキサー車の中や配管の中に残った生コンで、工場に返却されたものを残コンといいます。
また、生コンを注文したものの必要量の計算間違いや生コン工場との連絡ミスなどの理由からミキサー車内のコンクリートを全く使用せず、そのまま工場に返したコンクリートを戻りコンといいます。このような残コン、戻りコンが工事の際には必ず発生するということなんです。

では、この「残コン」をめぐり、現場ではどういった問題が起こっているのでしょうか?
「残コンや戻りコンは、一般的に産業廃棄物として処分されるため、これらが増えることは、廃棄物の増加という環境面への悪影響があります。
逆に、残コンや戻りコンを減らすために少な目に注文した結果、生コンが足りず追加注文するといったことが発生してしまう場合があります。
その際、追加した生コンが到着するまで作業を中断せざるをえません。都心では時間帯によって到着までに1時間以上かかるケースもあります。それが原因で近隣の方々との約束などで定められた時間内に終わらない場合、近隣の方々にご迷惑をかけるなどの問題が発生してしまいます。そういった時間を必ず守らなければならない、そういう縛りのなかで作業をしています。また、コンクリートの発注業務は若い現場技術者が担当していますかが、この業務が心理的な負担になっているケースもあると聞いています。こういった問題を解決していきたいと考えています」

こういった問題、なぜこれまで対策が進んでいなかったのか、なぜ今、急に対策が進んでいるのか、こんな背景があるそうです。
「当社においては、残コンや戻りコンが発生しても生コン工場は産業廃棄物として処分し、現場はその処分に要した費用を支払うため、工場と工事現場内で処理されることが多いため、会社内ひいては社会的な問題として顕在化していなかったことが理由のひとつだと思います。
また、生コン工場での残コンや戻りコンのリサイクルについては、リサイクル材を管理保管する設備や労力が必要になるのでコストが高くなり、なかなか普及していませんでした。ところが近年の二酸化炭素排出量削減に向けた取り組みやリサイクルが評価されるようになり、業界としても戻りコンや残コンを再利用する様々な取り組みが進められているということだと思います」

木村さんによると、直接的な理由ではないものの、建設業も労働時間の規制によって現場技術者や現場作業員の負担を少しでも軽減することが社会的に要求されるようになってきているそうで、この辺も取り組みが進む背景のひとつかもしれません、とお話されていました。そんな残コン問題を解決しようと、業界各社が様々な取り組みを初めています。
そんななか、西松建設が取り組んだのが必要な生コンの量を自動で算出できるアプリの開発です。いったい、どんなアプリなのでしょうか?
「システムに読み込んだ現場の図面データから工事の進捗状況にあわせて、残りの打込みに必要なコンクリート数量を計算します。すでに注文している生コンの数量をその必要なコンクリート数量から差し引き、最終的に追加注文する必要があるコンクリート量を自動で算定するシステムになっています。現在は、この作業を現場技術者が現場の状況を計測し、 配送担当者にコンクリートの荷卸し状況を電話で確認しながら、逐次必要数量を計算していたものが、タブレット端末上ですべて行えるシステムとなっています」

最後に今後の課題についても伺いました。コンクリートの数量を自動計算できるツールにより、作業負担が少なくなるのは望ましいことではあるものの、出た計算結果に対して疑問を持たず、それを鵜呑みにして大きな間違いにつながることが懸念されていて、計算結果の妥当性を判断できる直感的な能力をどのように養うか、あわせて技術者の教育も必要ではないかとお話されていました。

木村さん、貴重なお話、ありがとうございました。

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