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このコーナーでは、暮らし、仕事、社会、私たちの身近な
ところにあるデジタル化の動きを紹介していきます。
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2022 02.28
AIを活用した救急医療情報システム「Smart119」

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このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。

新型コロナウイルスの感染拡大が続いていて、医療現場は逼迫した状態が続いています。救急患者の「たらい回し」のニュースも耳にしますが、この患者の「たらい回し」は、コロナ前から起きていました。なかなか解決が難しい問題ですが、今朝はデジタル化で救命処置を迅速に進め救急隊員の負担を減らすとともに搬送先が決まらない「たらい回し」を解消しようという取り組みをご紹介します。

今回お話を伺ったのは、救急医療情報システム「Smart119」を独自で開発した 株式会社Smart119の代表取締役で千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学教授の中田 孝明さんです。

まずは、救急医療情報システム「Smart119」を開発した経緯について伺いました。
「救急車の要請件数って年々増加を続けていて、効率化が必要なことは間違いないです。そこで救急用の情報システムを開発して、この効率化を図る必要があるという風に思ったのが背景です。国の研究費を得て研究開発して、このシステムを開発しました。
そしてその成果を実装するためにこの株式会社スマート119を3年半前に設立しています。また、僕は医学研究者なので AI 研究も精力的に行っています。その結果を社会実装できるということも確信していましたのでデータを収集して、脳卒中の予測 AI っていうのを開発しているところです。救急隊の判断の支援を AI がすることでより多くの命が助けられると考えています」

中田さんの会社では「安心できる未来医療を創り出す」ということを目標にしていて、このビジョンに共感した医師や看護師はもちろん、学者やエンジニア、元救急隊の方など様々な方がこの会社で働いているそうです。

今の救急医療体制も含めて、この救急医療情報システム「Smart119」の概要についても伺いました。
「現状では119番を電話すると消防指令センターと呼ばれる指令センターというところに電話が繋がります。そこに電話すると火事ですか救急ですかとかいうような言葉から始まり、そこで救急車が必要だってことを話すと救急隊がいるところにその指令センターから連絡をします。その連絡した結果を受けて救急隊が現場に向かいます。救急隊はこの指令台からの情報をあまりもらえないので、よくわからない状況の中で現場に向かっていくと言っても過言ではない。
そして行った先でまた救急隊が患者様とお話をして、例えば、手にメモを書いたり、紙にメモを書いたりして、その現場である程度話が分かったところで医療機関に電話します。医療機関への電話は30秒とか1分とか2分とかそういうレベルですけれども、そこで初めて医療機関の医者はその情報聞きますので、すごく短い情報で、しかも急に話が来ますので情報がはっきりと伝わりにくいって部分も僕達は感じています。
当然、情報はその間に山ほどあるんですけど、最後に伝わってくる情報はすごく少ない、これは問題だろうということで始めから消防指令センターに通知される情報から、そして指令センターが救急隊に連絡する内容、そういったもの全てをリアルタイムでみんなが見られるようにしようというのが一番初めの情報共有する機能です」

中田さんによると、救急隊は医療機関に電話して断られると、まったく同じ内容を次の医療機関に電話しないといけませんが、このシステムではそれを一斉に収容依頼ができるようになっているそうです。さらに、Smart119では、さらに、こんな機能もあるそうです。
「救急隊はSmart119のタブレット端末を持っているんですけれど、そのタブレット端末に長い文を入れたりすることは難しいので、そこは音声入力を使おうということで音声入力も駆使しています。
また、ただデータを入れるだけだと、こんなこと言って怒られるかもしれませんけど、誰でもできてしまうということがありますので、僕としてはAI が救急支援をするっていうことが、できることが一番正しく医療を行うために必要だと思っています。
ですので、AI 救急支援機能といって救急隊がある特定の疾患を疑った時にどういう兆候があるかというのを入れるとその診断、例えば僕たちは一番初めに行っているのに脳卒中なんですけれど、こういった症状があるっていうのを入力すると脳卒中の可能性は何パーセントありますということが言えるような機能を今開発しています。そしてそれらの実装に近づいています」

ただ、AIに診断を任せるには、まだ抵抗があるって人もいますよね。そこに関して、中田さんは、「AIの診断は、あくまで指標ですので私たちもそのことに関しては非常に丁寧に考えています。何パーセントっていうのが出るような仕組みになっていますが、入力した項目も見られるようになっていて、つまり救急隊員もそれを入れながらこの大事な項目をちゃんと入力します。
そして、医療機関側もそれを見て、この項目が入っているね、確かに確率は絶対高いだろっていうのを思って、患者を受け入れる形になると思います」と、おっしゃっていました。

最後に、デジタル化が進むことで医療現場はどう変わると思うか、中田さんに伺いました。
「医療現場では作業負担がいろいろ非常に多くありますので、デジタル化することによって作業負担が減る、また最適化が進むということが起こると思います。
例えば、救急隊は病院に到着した後、医療機関の人に紙に書いて渡します。その紙を見て医者は、また電子カルテにタイプします。情報をわざわざアナログにして、またアナログなものをデジタルにしてという本当に不便な状況ですので、私たちの仕組みではこのデジタルデータを上手に電子カルテにデジタルデータとして手間なく入れるということを行なっています。AI によってより先進的なこともありますが、今まで無駄にやっていたアナログなことがデジタル化によって多く削減され、本来やるべき作業に多くの力が注げるということが起こると思います」

これまでも、「ここでは、いまだに紙が使われているんだ」という事例がありましたが、救急医療の現場でもそうなんだというのは驚きました。デジタル化によって情報共有をすることで、作業負担が減り、たらい回しも減り、より良い救急医療が可能になれば、早く治療することで助かる命が多く助けられますよね。このシステムがどんどん広がっていくといいなと思いました。

中田さん、貴重なお話、ありがとうございました。

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