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キヤノンマーケティングジャパン presents Solution in my life
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Every Monday 8:38 〜8:48
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「ITの浸透により、人々の生活をより良い方向に向かわせる」
そんな概念である“デジタルトランスフォーメーション”と
いう言葉が広がり、
私たちの暮らしは、より豊かに、より便利に、
日々ポジティブに変化しています。
このコーナーでは、暮らし、仕事、社会、私たちの身近な
ところにあるデジタル化の動きを紹介していきます。
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2022 01.31
お店のハンガーで顧客の行動をデータ化する「デジタルハンガー」

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このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。

ネットショッピングの世界では、閲覧する、色やサイズを見る、お気に入りに入れる、カートに入れる・購入する、こういった一連の顧客行動のデータを細かく蓄積して、ECサイトへの再来店をうながす「レコメンデーション」などに活用することが当たり前になっています。
そんななか、今回ご紹介する取り組みはネット上ではなく、実店舗の中での客の動きをデータ化する実証実験。
ハンガーに取り付けたセンサーを使って、「商品を手に取る」「かがみの前で合わせる」「試着室に入る」といった関心の程度をデータ化し、
そのデータをもとにECのレコメンデーションなどに活用して顧客の体験価値を高めようというものなんです。実店舗での顧客の行動や販売員の接客をデータ化することで、販売員の評価の見直しや接客の改善にも繋げられるのではないかと期待されているようです。

そこで今回は、大手電子部品メーカーと組んで、このデジタルハンガーの実証実験を行っている
アパレル大手の株式会社TSIホールディングスの執行役員 デジタルビジネス部長の渡辺啓之さんにお話を伺いました。
まずは、店舗内で顧客の動きをデータ化する行動取得システムとはどんなシステムなのか伺いました。
「例えば、皆さんオンラインストアに行かれた時に、いろんな商品を見たとしたら、その後に“あなたにおすすめの商品はこれですよ”っていうのが表示されると思います。
これは、お客様がどの商品を見たかっていうところで、つまり、ヒトとモノの情報と紐付けることでそういったらレコメンドを出しています。
片や、店舗ではどうかというと、そういう情報を取得できないんです。そこで今回我々がやったことは、お客様が来店されたら、まずチェックインをしていただく、これで誰が来たかがわかる。
次にハンガーにセンサーがついていますが、その人がその商品を持ち上げると、そこに加速度センサーが内蔵されていて、持ったとか上げたとか動かしたっていう事を検知して、さっきピって入られたお客さんがどの商品を手にとったかってことがまず分かります。
それが、姿見の前に持って行ったとか試着室に持って行ったのかとか、そういった情報もビーコンを使うことで検知できます。
そのことで、お客様がどの商品を持ったか、試着をしたかが分かります。これに興味が高い、あるいは持ってすぐ戻したこらそこまで興味がないみたいな情報を取得することでオンラインストアと同様に、その後のお客様へのレコメンドに活かす、そういった仕組みになっています」

試着だけして買わなかったお客さんの中にも、もう一度オンラインでみてみたいという人もいますよね。
そんなお客さんに向けて、「本日お客様が試着された商品はこちらですよ」と送ることで、その情報をもとに、オンラインストア側でより利便性高くその商品にたどり着いて、情報を閲覧したり、購入したりすることも可能になるそうです。
さらに、導入の経緯についても渡辺さんに伺いました。
「お店という場所とお客さんという人と何を手に取ったかという商品、これを紐づける手段がなかったので、常々店員っていうのはそのお客様が誰かわからずに、どういった趣味嗜好かってことも把握をすることができずに基本的には接客をするという流れ。
それは決して悪いと言っているわけではないんですが、もう一つ違った顧客体験を提供するということであれば、こういったところをしっかり把握することが今やるべきこととしての課題認識でした。
今、OMOの時代とか言われていますけども、オンラインのチャネルとオフラインのチャネルが基本的にはシームレスに溶け合っているような世界観だと思っています。
とした場合に、先ほど申し上げたように、オンラインストアで当たり前に出来ているどの商品を見て、どういったものをレコメンドすべきかといったところを当然店舗側でも取れて、店舗とEC関係なくちゃんと顧客の行動を把握していくことで、しっかりお客様の趣味嗜好に寄り添った提案をしていくべきだというふうに考えまして今回の取り組みを検討しました」

実証実験は、神奈川県のラゾーナ川崎のナノユニバース店舗で去年の11月から6ヶ月間という期間で行っていますが、
その中で、お客さんがお店を出た後、お客さんに試着された商品をメールで送り、どれくらいの反応があるのかという検証も行っています。
オンラインストアのカートに商品をそのままにしておくと、「お買い忘れの商品はありませんか」とメールが来くることがありますが、これを、お店を出た後に「これを試着されましたね」というのと同じような位置づけと考えて、そのECカートのリマインドと比較するとその反応率は2倍ぐらいあったそうです。

今後、デジタル化が進むことでアパレル業界はどう変わっていくのか、渡辺さんはこんなお話をしてくださいました。
「よく聞かれるんですけど、お店が必要ないかというと、そういうことは思っていなくて、お店の重要性自体は変わらないと捉えています。
基本的にはお店では見て触ってと、味覚をのぞく五感を活かした体験ができるわけです。オンラインストアもいいんですけど、そこまで五感に訴える体験というよりか機能的な体験だと思うので、そういったところの位置づけという意味で店舗の重要性は変わらないと思っています。
違うところは、お店に来ていただいて、その場でいかにお買い上げいただくかではなくて、お客さん自体はお店を出られた後に、またオンラインに行かれるかもしれないし、店舗に行かれるかもしれない、いわゆるカスタマージャーニーっていうのはお店を出た後でも続くわけですよね。
お店の役割が単純な物販、ものを売るだけではなくて、その後のお客様とブランドの接点に繋がる、そういった体験を提供するということやっていかないといけない。
直接的に売ることを目的にしてきたお店そのもの、あるいは販売の役割というのも、ちょっとずつ変わってくるし、お店で買ってもオンラインで買ってもいいじゃないですかっていう意味でいうと、その収益の上げ方についての考え方、この辺りも変わってくると思っています」

お店の役割の変化、興味深いですよね。店舗は売ることだけが目的ではなくなる。ブランドとお客さん接点を作るところ、つないで行く場所になっていく。これからお店がどんな風に変わっていくのか楽しみですね。 

渡辺さん、貴重なお話、ありがとうございました。

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