このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
オミクロン株が急拡大するなか、岸田総理は「休校の際のオンライン授業の準備を進める」と明言していますが、コロナの感染拡大で一気に広がったのがオンライン授業。
メリットもありますが、様々な弊害やデメリットも指摘されています。
オンライン授業では、みなさんもよくご存知のZoomやGoogle Meet、Microsoft Teamsなどのウェブ会議システムが活用されています。
よりよい環境や教育効果を高めるため、様々な方法が模索されていますが、一方で、顔出しやインタラクションなど参加者の身体性に関する課題も明らかになってきています。
そこで今朝は、そんなオンライン授業の課題解決のために開発されたツール、アバター生成・装着アプリケーション「beCAMing(ビカミング)」を紹介しました。
お話を伺ったのは、このビカミングを開発したデジタルハリウッド株式会社 大学事業部 執行役員の池谷和浩さんです。
まずは、オンライン授業のためのアバター生成が簡単にでき装着できるアプリケーションビカミングを開発した経緯について伺いました。
「コロナ禍になって全国の学校がオンラインの会議を使った授業に一斉に移行しました。
私たちデジタルハリウッドは25年以上前からこのデジタルコミュニケーションを使った教育に取り組んできたんですけれども、コロナ禍になって全国の授業が一斉にズームなどに切り替わっていった時に、
先生たちが真っ黒なカメラオフの画面で一人で一方的に喋るのが辛い、リアクションがなくて自分の言っていることが伝わってるのか、楽しんでもらってるいのかわからなくて辛いという声が寄せられたので、まずそれを助けようと思いました。
それからデジタルハリウッド大学の学生たちが授業に参加してる様子をみて、もっと自分達もリアクションしたいとか、自分の顔がずっと映っているのを見るのが辛い、そういった声を聞いたので、簡単にアバターで参加できる授業運営できる、そういうものを作ろうと思いました。
オンライン会議システムを使って参加している学生は自分の部屋で参加をしています。そうするとプライベートな背景が映るということがまず辛かったり、それから顔を出しているとすごく疲れるんですね、自分の顔が画面にずっと映った状態というのはとても脳に負担がかかるので一日中いろんな授業に参加している人ほど、とても疲れて集中力を失われてしまいます」
実際にビカミングを利用した先生や学生からは、「リアクションが得られるので、自分の言ってることにその場で反応があって、とてもやりやすくなった」とか「自分の好きなアバターを選ぶことができることでリラックスして授業が受けられる」などの声が上がっているそうです。
池谷さんによると、アバターにはこんな効果もあるそうです。
「ビカミングには変身という意味もありますが、自己認知といいますが、人は自分がどういうものであるかっていう見立てによって発揮する能力が変わるという研究があるんです。
例えばアインシュタインのような人を想像してもらえればと思うんですが、そういう IQ が高いという一般的なイメージを持っている人のつもりで受けた IQ テストと素の私が受けた IQ テストでは、自分が高い人のキャラクターのつもりで受けていた方が結果が高くなっていくんです。
だから自分はどういう人なんだっていうことを調整することで、実はなりたい自分になれるというような効果があるんですね。僕も白い魔法使いの猫のキャラクターを利用してますけど、普段はもっと早口なんですが、何故かこれを使って会議に参加しているとゆっくり話すようになっていくんですね」
ビカミングにはアバター機能だけでなく、こんな特長もあるそうです。
「ビカミングの特長は、とても簡単だということ。皆さんがいつも使ってるように Zoomなどで開いたらこのビカミングのアプリケーションを開いてこの Web カメラ、つまりパソコンの前にいる、これだけなんですね。
自分でアバターを選びます。そしてスタンプのリアクションが簡単に出来るんですね。これプリセットで「分かります」とか「はい」とかですね、いろんなもの用意しています。
LINE のスタンプにヒントを得ていて、特に日本人は得意だと言われてますけども、 僕たちはLINE スタンプを使って非言語のコミュニケーションをすごく使いこなしますよね。もちろん、文字のスタンプもたくさんありますけれども、これで様々な感情表現ができます」
池谷さんによると、ビカミングを開発する際もこのスタンプの使いやすさに、こだわったそうです。
最後に、今後の展開について伺いました。
「ビカミングって変身するという意味が込められていますけれども、着ぐるみを着るようなものだと思って頂ければと思うんですね。自分の見かけをかえて遊んでいく、“ごっこ”とかですね。何々ごっことか、そういう遊びに本質的に近いものがありますので子供達も楽しいと思います。
やっぱり先生って子供にとってみると一人の大人で、怖かったり力のあるものなので、その人が例えば、すごく怖い顔で体の大きい人として授業をする時って、ある意味を持ってしまうわけですが、パンダの格好で出てきたら急に意味や関係値が変わるわけですね。逆に言うと、たったそれだけのことで関係性って調整していけるわけなんですよ。
ですので、教える側がどういう姿でその人の前に現れるかっていうことも解放されていきます。ですので、それは先生に限らず公共機関の職員さんとかもそうですが、自分のリアルの見かけにこだわらないで仕事ができるようになるという素晴らしい点があると思います」
アバターの世界って今後さらに様々なシーンで活用が広がっていきそうですね。とても興味深いお話でした。
池谷さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2022
01.24
アバター生成・装着アプリケーション「beCAMing」