このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
今日は、地域のパン屋さんが抱える運営や販路拡大などのあらゆる課題を独自の冷凍技術とDXによって解決するパンフォーユーの取り組みをご紹介しました。
高級食パン専門店ブームだったり、各地でパンフェスティバルが開かれたり、ここ数年、パンブームが続いていますが、その一方で街のパン屋さんは減少傾向なんだそうです。
その背景にあるのが、高級食パン専門店などとの競争激化、人件費や原材料費の高騰、後継者不足等です。
そんななか、「新しいパン経済圏を作り、地域経済に貢献」をミッションに地方の雇用創出やフードロス削減を目指して、
今までにないプラットフォームサービスを提供しているのがパンフォーユーなんです。
そこで今回は、株式会社パンフォーユーの代表取締役、矢野健太さんにお話を伺いました。
パンフォーユーのサービスの中でも人気なのが、全国のパン屋さんから焼き立ての状態を冷凍したパンが届く個人向けサブスクリプションサービスの「パンスク」です。
狭い商圏で商売する、地方のパン屋さんの魅力ある商品を買い取り、独自の冷凍技術を活用し、
全国各地に販売するプラットフォームで、毎月3990円で全国30店舗の提携ベーカリーから月替りで8個前後の冷凍パンと、そのお店からのメッセージカードが届きます。
このパンスク、巣ごもり需要の高まりもあって、1日あたりの平均新規登録者数が去年12月と比べて、今年の1月はおよそ5倍に。
現在、登録者8000人で、新規登録者は最大3ヶ月待ちとのこと。
パンフォーユーの冷凍パンは、自然解凍や温め直すだけで焼きたての味が楽しめるというところが最大のウリ!
第三者機関が行なった検査でも、焼きたてパンを常温で1日おいたものよりパンフォーユーが30日間冷凍保存したパンのほうが糊化度、
いわゆるモチモチ感、そして水分量ともに上回っていたという結果も出ているそうです。
その味の秘密は、独自開発のパンをいれる袋と冷凍のタイミングだけで、詳しくは企業秘密で国際特許出願中だそうです。
矢野さんによると、その味の秘密は冷凍技術以外にもあるそうです。
「実は冷凍技術そのものも重要なんですが、そもそもパン自体がとても美味しくなっているんです。
一昔前のベーカリーさんは店頭の販売だけでなく、学校や病院への卸しもしていました。
しかし、最近のパン屋さんは、店舗面積が狭めで、昔と違って学校や病院などの販路がないところが増えています。一昔前は、たくさん作ってたくさん食べてもらっていたのが、今は、店頭のお客さんだけになっています。
なので、お客さん側は、普段食べられないパンを食べようとパン屋さんに来店。お店側も、なおのことプレミアム化といいますか、味に対する価値が上っているのかなと思います」
パンフォーユーが提供するのは、この独自の冷凍技術だけではありません。
「DXというところで言うと、パン屋さんが売り上げを上げようと思うと、たくさんパンを作らなければいけない。
もしくは、冷凍して店頭以外でも販売しようと思うと、商品ラベルの作成だとか、配送伝票作成だとか、様々な煩雑な業務がすごい増えてしまいます。
そこをITのシステムでまるっと、パンフォーユーの方で巻き取らせてもらって、そういった作業なしに、売り上げを上げることができるというところがDXなのかなと思っております」
このシステムのことを「パンフォーユーモット」というそうですが、パンフォーユーの独自の冷凍技術と、このシステムを使えば、
全国のパン屋さんが特別な設備や作業なしで、美味しいままのパンを全国に提供できるということなんです。まさに、パン業界のDXですね。
さらに矢野さんは、デジタル化の恩恵について、こんなお話もされていました。
「デジタルのイメージがないかもしれませんが、お客様との距離が近くなったっていうところがあるかなって思っています。
店頭でお客様と接しながらパンを売りたいという方もいらっしゃるんですけど、逆に当社のパンスクとかを通じて、「美味しかったよ」とか、お客様の声を直に長文でもらったりします。なかなか長文で見せてもらうほど店頭でのコミュニケーションをパン屋さんは取れなかったりするので、そういうところはデジタル化がもたらしてくれた恩恵かなと思います」
デジタルというとドライなイメージがありますが、人と人との距離感を縮めてくれるアイテムでもあるのかもしれません。
パンフォーユーのプラットフォームサービス、もっともっと広がるといいですね。
矢野さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2021
07.19
独自の冷凍技術とITでパン業界のDXを牽引する“パンフォーユー”