このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介していきます。
今日は、地域共助のプラットフォームアプリ「common(こもん)」を活用した、“新しいまちづくり”をご紹介しました。
新型コロナウイルスの影響もあり、リモートワークが普及することで、自宅で過ごす時間や自宅周辺で過ごす時間が増えたという方、少なくないのではないでしょうか。
また、異常気象による自然災害の増加から、地域住民間での共助の必要性を考えさせられたり、改めて地域コミュニティーへの注目や期待が高まっています。
そこで今朝は、この春から東急が始めた、地域共助のプラットフォームアプリ「common(コモン)」を活用した、“新しいまちづくり”についてご紹介します。
お話を伺ったのは、東急株式会社 経営企画室 企画担当の小林乙哉(こばやし・おとや)さん。
小林さんは、アプリを作った目的について「現代版の地縁」という話をしてくださいました。
「地域共助というと言葉の意味は広いのですが、昔、村とか地縁があったところでは、基本的には様々なことに対して助け合っていたと思います。
助け合って、何か足りないものがあったら隣の人から借りたりとか、困った人がいたら助けてあげたりとかは、昔は当たり前に行われていたと思います。
一方で、今、我々住んでいる都市部はというと、基本的には誰かに助けを求めなくても生きていけるっていうのが一つ特徴としてあります。
困っていたら、お金払えば必ず何かしらのサービスを購入することができるので、ある種、地域共助に頼らなくても困らないという面がありました。
ただ、ここで問題が起きるのは、災害時とか、いわゆる弱者みたいな人たち。弱者の立場になった時に、お金だけでは解決できない問題がたくさん出てきました。
我々の沿線だと、2019年に多摩川が氾濫したことがありました。
そのような時にはお金がいくらあったって、どうしようもないといいますか、助けてもらいたいけど、
地域共助というものは、普段からないと助けてもらえないというのもありました。そこで現代版の地縁を作っていこうと、このアプリを立ち上げました」
具体的な機能についても小林さんに伺いました。
「基本的には、目の前で起こっていることを共有する投稿という機能と、街に関しての疑問について街の人に聞いてみる質問という機能の2つからなっています。
そうした投稿や質問が地図上に可視化される位置情報とセットでピンのように可視化されていくということがもう一つの特徴。
一般的なSNSのように、投稿とか質問が流れてくるだけだと、どこでそれが起こっているかっていうのがわからないが、
地図上に可視化することで、どこでそれが起こっているかとか、見えているかってことがわかるというのが大きな特徴になってくると思います。
自分自身の知っている場所で起こっているってことで、急に親近感が湧いたりとか、すごく自分たちの関心が高まるという効果があると思います。
さらに、街の人たちの声について伺ったところ、
特に子育てを始めた世代、自分たちの住む街に関心が高まる世代は、「自分の街のことが、わかっているようで、わかっていなかった」、
「このアプリを通じて、街にこういう一面があったんだとわかった」など、街の様々なことに気付くきっかけになったという声が、多く聞かれているそうです。
今後の展開については、こんなお話をされていました。
「よりもう一歩踏み込んで、助け合いまで繋げていきたいと思っています。
今は、隣に住んでいる人が困っているかどうかって全くわからないですし、地域の中で誰が本当に助けを求めているかっていうのが全くわからない。
それが今の状況なので、そういった街の中に隠れている課題をしっかり可視化してって、他の人がそれを助けてあげるっていうことを実現していきたいと考えています。
さらにその先には、一人一人の住人が自分の街に対して関心とか興味を持つ状況を作ることで、街の将来のことに積極的に関わっていくといいますか、関与していくっていうことになっていくといいなと思っています」
これまでは、街を住みよくするのは、行政や企業の役割だと思っていましたが、
これからは、デジタル技術を活用することで、その街に住んでいる住民自身が住みよくしていく、そんな時代になっていくのですかね。
小林さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2021
05.24
地域共助のプラットフォームアプリを活用した“新しいまちづくり”