このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。
新型コロナウイルスの影響もあって、電子回覧板の導入など町内会のデジタル化、DXの動きが広がっています。
当初は、対面での活動が難しかったという理由もありましたが、ICTを導入することで希薄になっている地域のつながりを回復しよう、コミュニティーを活性化しようと取り組みを始めている自治体が今、全国で増えています。
そこで今朝は、本年度から東京都でも試験導入されている小田急電鉄が開発した町内会向けSNS“いちのいち”をご紹介します。
お話を伺ったのは、小田急電鉄株式会社 経営戦略部の東海林勇人さんです。
この町内会向けSNS“いちのいち”、実はこんなきっかけから開発されたんだそうです。
「“いちのいち”は、私の祖母がきっかけで生まれたサービスです。秋田県に住んでいた祖母が一人になり85歳を過ぎてから私の住んでいる神奈川県に来てもらいました。家族との距離が近くなったのですが、親戚や友達がいない為寂しい思いをしていた部分もありました。家族も四六時中一緒にいることができませんし課題を抱えていました。
一方で、ご近所に目を向けた時に高齢者の集まりがあったり、自分が子供の頃、隣のおばちゃんからアイスをもらったりと、ご近所づきあいにより解決の方法があるのではないかと感じ、個人と近所をつなぐ仕組みの必要性を感じ開発に至りました」
このような経緯で開発された“いちのいち”。一番の特徴は、自治体、町内会という非常に限られているエリアで使えるSMSということ。登録は実名が必須でご近所で安心したやり取りができるようになっています。
また自治会という組織にフィットするように設計されていて、例えば基本的なやり取りを掲示板形式にしたり、運営機能として災害時の避難報告の機能や自治会名簿の機能なども備えているそうです。
これまでに神奈川県秦野市などの自治体と実証実験を行っていて、市民からは回覧板などの情報がスピーディに回ってくる、また見返すことも簡単にできると好評だそうです。
また一方では、こんな声もあったそうです。
「紙がいいというお声もやはり媒体によってありまして、文字があまりにも多いものとか写真があまりにも小さく写ってしまう、写真がスマートフォンだと見える範囲が限られますので、そういったものに関しては紙の良さってあるよねというご意見は一定数やはり出ております。
あとは、紙で見てみたいというよりも、回覧板を回していることで地域の見守りになっているということをおっしゃるご高齢の方ですとか役員の方が非常に多くてですね、そういった部分でやはり回覧板というのは重要だろうというような声は頂いています。我々側としても回覧板をなくしてくださいということではなくて、回覧板も使いつつデジタルを取り入れることで、より便利に使うこともできるんじゃないですかというご提案も含んでいる取り組みになっています」
“いちのいち”は現在、行政の利用だと4つ、自治会単位だと数百個のグループがあるそうです。今後に関しては、東京都への試験導入や川崎市の実証などを行いながら、多くの行政や自治会で利用してもらいたいと考えているそうです。
東海林さんは、高齢者の孤立など今自治体が抱えている地域課題について、こんなお話もされていました。
「大きくは社会環境の変化というものがやはり大きいかなという風には思っています。
というのは、自治体ですとか町内会の役割が高度経済成長期には非常に重要な役割を担っている一方で、地域課題というものが非常に複雑化してきていて、それを自治会ですとか行政単位だけでは全て賄うことが難しくなっているような社会環境もあったりですとか、ご承知の通り高齢化率の増加も含めて、何か技術を使って社会を良くするための動きをしていかなきゃいけないフェーズに入っているという風に感じておりますので、
その辺りの課題に関しては家族だけで解決するのは難しいですし、行政だけで解決するのは難しい。で、もしかすると近所だけで解決することも難しいというところもあると思うんですが、それは単体だけではなくて家族も近所も行政もみんなで手を取り合って、これらの日本の課題に取り組んでいくことが重要ではないかというふうに個人的には感じているところです」
若い人も含めて、自分自身が住んでいるところの人、場所を知る機会としてもとてもいい取り組みだと思いました。
東海林さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2022
06.27
町内会向けSNS「いちのいち」