このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動き
をご紹介しています。
みなさんもご存知の通り、日本の鉄道は時間に正確な運行や安全性の高さで有名ですよね
。それを支えているのが、路線維持に欠かせない保守点検で、鉄道施設の安全性を保つた
めに維持管理の向上やより高い効率性が求められます。ところが、少子高齢化の影響から
人員減や熟練技術者の減少などが大きな課題となっています。そういった背景から今、鉄道各社はその課題解決のため、デジタル技術を活用する取り組みを始めています。
そこで今朝は、他社に先駆け早くからデジタル技術を導入している東京メトロの取り組みをご紹介します。
今回お話を伺ったのは、東京地下鉄株式会社 車両部課長補佐 後藤亮介さんです。
東京メトロで導入されている車両情報監視・分析システム「TIMA」とは、どういったシステムなのでしょうか?
「TIMAとは運行中の列車の情報、例えば故障のありなしとか空調温度、混雑率などそうい
った車両状態をリアルタイムにどこからでもパソコンから見えるようにしたシステムです
。特徴的な機能でいますと運転手が見ているモニター画面などがあるんですが、全く運転
手と同じ画面を遠くからでも見ることができるというようなシステムになっています。元
々は故障した時に、運転手の故障対応を早くさせてあげるために指令所とか遠隔の人も同
じ情報を見ることで、できるだけその故障のダウンタイムを軽減させるといったことが始
まりでした。やはり、生産人口が今後減少していきますので、検査にかける人の数という
のも少なくなっていくのではないかと考えています。ですので、少なくとも電気品につい
ては、このようなシステムを導入することで効率的な検査を目指したいという考えがあっ
たからです」
後藤さんによると、開発の際には18歳から60歳近い人が使うシステムとなるので、難しい
コマンドとかではなく、ビジュアルでなるべくガイドできるようなシステムになるようこ
だわったそうです。
導入効果についても伺いました。
「作業効率と言っても、検査の効率ですとか運行支障の時間の短縮ですとか、色々な効果
があるんですけれども、全てにおいてポジティブな効果があるという風に期待しています
。まだ導入してからの日が浅いので、定量的にどれくらい効果があるというのを示すのは
難しいんですけれども、例えば運行支障が実際にあったケースですとトラブルが起きて数
分後には、もうどの装置にどんな異常があるかというのを分かったというケースもありま
すので、今後もいろいろな活用方法に応じて効果が見られていくのじゃないかなと思って
います」
運行中の車両の様々な情報を収集することで、利用者へのサービの向上や運行支障時の対
応の迅速化だけでなく、運行列車の動作データを分析し、車両搭載機器に関する故障予兆
の自動検知や寿命診断支援を行う「故障予兆検知システム」も開発されているそうです。
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これによって、故障予兆の事前把握や故障予兆データを用いて寿命診断を支援し、機器の
交換周期最適化にも活用できるとのことです。
今後の展開や課題については、こんな話をされていました。
「最終的には全路線展開を目指しています。まだ2、3路線にしか展開されていないので、
まずはそちらを9路線に展開するということを計画しています。また新たな機能というと
ころですと、例えば、故障予知するモードですとか検査に活用するような新しい使い方も
目指しています。コストのバランスが課題だと思っています。通信費もシステム維持費も
決して安くはないので、そちらとですねメンテナンス時間の減少ですとかそういう効果を
、バランスを取ってシステムを構築していくというところが課題だと思っています」
TIMAの導入などのデジタル化が進むことで電車の保守管理はこれからどう変わっていくの
か、後藤さんは、こう話されていました。
「保守管理としてはやはり人がする部分というのはなくなることはないと思っています。
ただし電車というのはやはり電気部品が多いですのでこちらはシステムにて監視しやすい
環境を作ってあげれば、少なくても人の目、人の手間が減っていくのではないかと考えて
います」
人の命や安全がかかっている仕事なので人でないといけない部分は、しっかりと残しつつ
、できるところはデジタルに移行していこうということなんですね。コロナの影響も含め
利用者の減少が予想されている業界なので、安全性をも守りつつデジタル化をいかに活用
していくのか、大きな課題ですね。
後藤さん、貴重なお話、ありがとうございました。
2022
07.25
東京メトロで導入されている車両情報監視・分析システム「TIMA」