浜崎 中野さんが自らブランドを立ち上げる前、20代または30代の頃を振り返ると、どうですか?

中野 世間知らずの若者でしたね(笑)。バブルの時代で、売上至上主義的な空気が業界全体に蔓延していた気がします。私自身も当時は、納期や生産管理で気が休まりませんでした。たくさん売れる商品がすごいのだと、いつからか、そう洗脳されていた気がします。

浜崎 その中で、さらに生産コストを下げるために、仕事が海外に流れてしまったんですよね。

中野 ええ、そうです。ここ10年間は、国内のベテランの職人さんにも手伝ってもらいながらも、デザイン~制作のすべての工程をこなし、「永く愛用できるモノ作り」をメインにしています。

浜崎 そんなHIS-FACTORYさんの革製品の特徴は、どんなところですか?

中野 末永く愛用してもらえるよう、頑丈な造りをしている点です。特に鞄。ジョイント部分には、厚みのある革を使用したり、補強など細部での工夫もしています。素材も味のある革でなければいけません。

浜崎 耐久性を大切にしている理由は何かあるんですか?

中野 大量生産に携わっていた時代の商品は、生産コストを下げるのに、「この素材」とだいたい決まっていて(あまり詳しくは言えませんが)、これでいいのかと疑問を感じていました。ですから、自分でブランドを立ち上げてからは、発信するものは丈夫で、長く使えるものを適性の数だけ作るようにしています。

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