浜崎 そこから、店舗メインに移行したきっかけは何だったんですか?

荒井 知り合いの方から「この場所を好きに使っていいよ」と声を掛けてもらったんです。駅から徒歩30分、場所は新小岩。決していい条件ではなかったんですが、その店は地元の人に愛される人気店になりました。

浜崎 すごいですね!しかも、ここまでの経緯はすべて、“縁”がつないでくれているというか……。

荒井 はい、振り返ると、「私は本当に運がよかったな」と思うことがたくさんあります。当初は、名刺の渡し方も知りませんでしたから(笑)。

浜崎 現在のお店がある、蔵前に移動した理由は何だったんですか?

荒井 新小岩のお店を一緒に作った専門学校の友人から、突然、「蔵前にある建築事務所の一角で、コーヒースタンドをやってみないか?」と誘われたんです。始めてみると、「たった2坪のスペースに、コーヒースタンドができた」と話題になり、新聞にも掲載されました。でも最初は、「下町でコーヒーなんて売れるのかな」と不安もありました。

浜崎 でも、蔵前でもソルズさんのコーヒーは人気になった。

荒井 はい。いまでは、あのとき蔵前に来て、本当によかったと思っています。中目黒や青山では、コーヒーがおいしくても、私たちは実績がないことを理由に「評価されていない」と感じていました。その頃は、つねにどこか、劣等感を抱えているような日々でした。でも蔵前に来てからは、お客様も近所の経営者の方たちも、純粋に「味がおいしいこと」、そして「いいコーヒーを作ろうとしている私たちの姿勢」を評価してくれました。だから私たちも、蔵前に来たことで、ようやく自分に自信を持つことができたんです。以来ずっと、この街の人たちに支えてもらっています。

浜崎 それはうれしい出来事でしたね。

荒井 はい、とてもうれしかったです。その後、茨城県に置いていた焙煎機を都内に持ち込むために、クラウドファンディングを利用して資金を集め、店舗で焙煎もできる環境を整え、現在に至ります。


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