南：
「總持寺 世界禅Challenge Zen in One」は全国8都市を回りまして、人種や性別、年齢や国籍を超え、坐禅を通して一つになるというプロジェクトです。第一弾のイベントは、11月5日（日）輪島市門前町にある大本山總持寺祖院と、神奈川県横浜市の大本山總持寺の2か所で、同時開催されることが決定しました。石川県からスタートなんて、とても名誉ですよね。やはり、ゆかりがあるということになるわけです。
ということで、大本山總持寺祖院からゲストの方をお迎えしています。曹洞宗大本山總持寺祖院 副監院 兼 副寺の髙島弘成（たかしまこうじょう）老師です。門前からようこそお越しくださいました。

髙島：
よろしくお願いいたします。

南：
足を運んだことがある方もいらっしゃるかと思いますが、總持寺祖院について、ご紹介いただけますか？

髙島：
鶴見にある大本山總持寺が元々あった場所になります。今から約700年前の西暦1321年に、瑩山紹瑾禅師（けいざんじょうきんぜんじ）によって開かれたお寺です。總持寺が開かれたことによって、曹洞宗の教えが全国に広がっていきました。江戸時代に入ると、加賀 前田家の支援を受けまして、大本山としての地位を確立していったと。一番多いときには、全国に末寺18,000くらいあった。明治に入ると、大きな火災に遭い、その時はちょうど首都が東京になって、太平洋側中心の時代が来ていたのですが、曹洞宗の大本山は永平寺と總持寺と、ともに日本海側にあったので、火災に遭った時に、その一つを首都圏に移してはどうかという話になり、總持寺が横浜へ移転しました。そこから再建されて、今の大本山總持寺祖院に至っています。

南：
周辺は素晴らしい環境ですよね。たくさんの方々が訪れている場所なんですが、来年は大事な節目を迎えられるんですよね？

髙島：
瑩山禅師が亡くなって700年、いわゆる700回忌と言います。その節目、大遠忌と言いますが、それを来年迎えます。

南：
その節目の企画として今回、「總持寺 世界禅Challenge」が行われるわけなんですね。内容についてなんですが、坐禅体験、それから法話、クイズがあったり、御朱印もいただけるということで。坐禅体験、体験したことがある方はどれくらいいらっしゃるんでしょうか。坐禅ってそもそもは、お坊さんがする大事な修行の一つなわけですよね。なぜ、坐禅をするんでしょう。

髙島：
それは、なぜ歯磨きをするのかと一緒です。

南：
当たり前のことなんですね。

髙島：
禅宗ですから、坐禅が修行の中心になるのですが、坐禅をしたり、お経を読んだりすることだけが修行というわけではありません。規則正しい生活をしていますが、日常生活すべてが修行になります。ご飯を食べること、お手洗いに行くこと、お風呂に入ること、寝ることも修行です。坐禅も同じように向き合っていくということです。

南：
私たちもしてもいいものなんですか？

髙島：
もちろんです。敷居が高いとか、誰もができるものではないとか、そういったものではなく、誰でもやっていただければと、こういうところが今回の企画のきっかけにもなっています。

南：
坐禅をするにあたり、大切なことはなんでしょう。

髙島：
道元禅師、瑩山禅師の頃から伝わっているやり方があり、それを我々もやっています。

南：
そのやり方、ちょっと教えていただけませんか？

髙島：
まず足の組み方、右の足を左の腿の上に乗せ、左の足を右の腿の上に乗せる、結跏趺坐（けっかふざ）というやり方があるのですが、それができない人は半分だけ足を乗せる半跏趺坐（はんかふざ）というものがあります。姿勢の調え方、目を開けるのか閉じるのか、口を開けるのか閉じるのか、そういうことが細かく決まっています。

南：
姿勢を調えるということが大事なんですね。

髙島：
姿勢が調ったところで次は呼吸です。丹田呼吸（たんでんこきゅう）と言って、お腹の下に意識を持ってきた、いわゆる腹式呼吸ですね。ゆっくりと大きな呼吸を意識します。まず吐くところからスタートです。お腹を意識しながら空気をすべて吐き出していくところから始まります。ゆっくり吸ってゆっくり吐いてを繰り返します。

南：
深く、深くなんですね。その結果、身体には何か変化が表れてくるんですか？

髙島：
人間は普段、肺の空気のすべてを出し入れしているわけではないそうです。ですから、身体全体を使って、ゆっくり大きな呼吸をすることによって、身体の中がフレッシュな空気でいっぱいになります。同時に、精神的にもリラックスできます。呼吸を調えることで、気持ちも落ち着いてくる。

南：
その結果、心が調うということなんですね。

髙島：
何か一つが調うということはないんですね。すべてバランスよく調ってくるというのが坐禅になります。

南：
お話を聞いているとイメージはできました。ただ、実際にやっていると、心が変わっていく様子とか、自分でしっかり受け入れることができるのかとか、難しい部分があるんじゃないかと考えてしまうんですが、どんな方でもできるものですか？

髙島：
できます。やり方をしっかり習って坐るんですよね。よく、無になる、って言うじゃないですか、でも無になるってどういうことかというと、無心で坐ってくださいと言われると、無になろうと考えますよね。

南：
何も考えない、何も考えない、って思っちゃいますね。

髙島：
それ自体が考えてるんですよね。

南：
たしかに(笑)

髙島：
ではどういうことかというと、呼吸を調えることに意識を持っていって、現状に身をゆだねて坐るということなんです。我々の身体の機能、例えば目で言えば、見たままなんです。今、私は南さんを見て、視線を外すとそこにはいない。これは見たままなんです。例えば、何か音が鳴った、でも音はずっと残ってないですよね。消えてしまう。これは聞いたままです。お香を焚いて何か香りがする、鼻で感じても、その香りがずっとは残ってないですよね。これも嗅いだままです。我々の機能は、見たまま、聞いたまま、ありのままにできているんですけど、唯一、頭がそれができないんです。考えちゃうんです。

南：
これを習慣化させることで、以前より少しだけ生きやすくなるとか、なにか気持ちが前向きになるとか、そういった嬉しい変化が何かあるかもしれないですね。

髙島：
そうですね、特別な能力が身につくことはありません。ありのままに任せて坐っていることで、虫や鳥の声、雨、風の音、世の中の色んな声が聞こえてきます。命の声が聞こえてきますし、色んな情景が目に入ってきます。色んな命の中で我々も生きてますから、一人で悩んでたり、苦しんでいたり思うかもしれませんが、地球、宇宙の中で、みな尊い同じ命ですから、当たり前に生きていることはありがたいと思えてくると思います。これがありのままの姿ですね。

南：
日常にいきる部分がたくさんあるのかもしれませんね。ぜひみなさん、11月5日（日）の世界禅Challenge、坐禅はもちろんのこと、法話クイズということで理解を深めていただいて。

髙島：
坐禅は敷居が高いというようなイメージを取っていただくことが大事になってくると思います。

南：
気になるのは、御朱印は限定のものなんですよね。
髙島：總持寺祖院で通常お出ししているものとは違う、今回一日だけのものになります。

南：
この言葉については、今お知らせしてもいいですか？

髙島：
禅の言葉になるんですが、本来の面目（ほんらいのめんもく）という言葉になります。文字を見ただけでは分かりにくいかと思いますが、ありのままの姿ということです。春になると芽が出て、夏になると葉っぱが育ってきて、それがだんだんと紅葉して、葉を落としていく。そんな四季の移り変わりは、毎回同じように続いているようで、実はすごい奇跡なんです。毎回続いていくとは限らない、すべてが尊いことなんです。

南：
一つの言葉からもたくさんの気づきがありますね。こうした特別バージョンの御朱印も頂けるということです。参加は無料となっていますので、まずはみなさん、初めての方でも大丈夫です。坐禅の魅力を体感してみてください。

髙島：
当日、受付をしますので、事前の申し込みも必要ありません。

南：
坐禅をしやすい、動きやすい服装でお越しになってください。最後にメッセージをお願いします。

髙島：
通常やっている修行の坐禅とは入口を変えた形でのイベントを予定しています。坐禅をやったことのある方、初めての方、年齢、性別問わず、多くの方にお越しいただいて、日常生活にもいかせる坐禅の魅力を感じていただけたらと思いますので、ご参加をお待ちしております。

南：
当日は私も参加したいと思います。どんな自分と出会えるのか、楽しみにしています。みなさん一緒に、素敵な時間を過ごしましょう。