ON AIR REPORT オンエアレポート

8月28日 フランツ・リスト特集②

2011.08.30


前回に引き続き、今年生誕200年を迎えたハンガリーの作曲家、フランツ・リストを特集しました。20代から30代にかけて、ピアニストとして大活躍していたリスト。演奏家として絶頂期の1847年、ウクライナのエリザベトグラードで開かれた演奏会を最後に、ピアニストとして実質の引退をします。そして37歳でドイツのワイマールに移り住み、宮廷楽長として作曲と指揮の活動に専念する生活を開始します。ワイマールで約10年ほど過ごしたリストですが、その間に、交響詩や大規模な作品が集中して書かれています。(例えば《交響詩「前奏曲」》《ファウスト交響曲》《ダンテ交響曲》、《ピアノ協奏曲第1番&第2番》、《超絶技巧練習曲集》、《パガニーニによる大練習曲》、《ソナタロ短調》、《ハンガリー狂詩曲》等)

その後、50歳でワイマールからローマへと移り住みます。そこで、カトリック教会の下級聖職者となり、宗教音楽へ傾倒していきます。この時期は、宗教音楽を中心に作曲活動を展開し、オラトリオ、ミサ曲、カンタータ他、キリスト教をモティーフにした作品が多く作られました。50代後半からは、ワイマール(音楽活動の拠点)、ブダペスト(祖国のための教育活動の拠点)、そしてのローマ(宗教的生活の拠点)の3カ所を起点とした活動を展開しました。音楽活動はもちろん、著述家、教育者としての功績も見逃せません。74歳で生涯を閉じるまで、精力的に同時代、次世代の音楽家たちと会い、惜しみなく援助を行い、同時代の音楽家たちからは頼られる存在でした。さらに最晩年の作品、《無調のバガテル》など、20世紀の無調音楽を予見する作品もあり、後世の作曲家にも多大な影響を与えました。

今回、ご紹介したのは2曲。1曲目は、《3つの演奏会用練習曲》より第3曲<ため息>。リストがワイマールでの生活を始めた1848年頃に作曲されたピアノの小品で、リストの代表的な作品として広く知られています。2曲目は、《二つの伝説》より第1曲<小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ>。リストがローマに移った1861年から63年にかけて作曲された作品で、伝説として語り継がれている聖フランチェスコの偉業を讃えた音楽です。宗教的なモティーフですが、音楽自体は描写的で、小鳥のさえずりのようなトリルやトレモロが効果的に響き、鳥たちに語りかけている様が音楽で描かれています。

2週にわたり、今年生誕200年を迎えた、フランツ・リストの人生&音楽をご紹介してきました。リストというと、どうしてもヴィルトゥオーゾの側面が注目されがちですが、こうして74年の生涯をみることで、リストのもつ多様性や奥深さといった面もご紹介できたのではないかと思います。いかがでしたか?リストの人生、音楽を振り返ると、クラシック音楽が最も華やかで、興隆を極めた激動の時代が見えてくるように思います。そういった意味でも、今度9月11日のオール・リスト・プログラムによるリサイタル、『横山幸雄デビュー20周年 記念リサイタル』は楽しんで頂けると思います!今回番組でご紹介した作品もいくつか取り上げます。ご都合のつく方はぜひ足をお運び頂ければと思います♪

【オンエア楽曲】
♪M1 《3つの演奏会用練習曲》より 第3曲 <ため息>
  /横山幸雄、『ラ・カンパネラ~ヴィルトゥオーゾ名曲集』より
♪M2 《2つの伝説》より 第1曲<小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ>
  / アルカディ・ヴォロドス、『プレイズ・リスト 』より
 
【今後の予定】
●横山幸雄デビュー20周年記念リサイタル
日時:9月11日、午後1時〜3時
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:オール・リスト・プログラム

●ピアノ・リサイタル
日時:9月18日、午後2時〜4時
場所:大宮ソニックシティホール
曲目:ショパン:ワルツ5番、6番、スケルツォ4番、リスト:リゴレット・パラフレーズ 他

● ジルベスター・コンサート
日時:12月31日 午後5時半〜深夜0時45分(翌1月1日 0時45分)
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:ピアノ協奏曲(第1番〜5番「皇帝」)全曲
   ソロ:ソナタ「悲愴」、「月光」、「テンペスト」「ワルトシュタイン」、「熱情」
共演:横浜シンフォニエッタ/指揮:山田和樹
お問い合わせ:東京FM 03−3221−0080

8月21日 フランツ・リスト特集①

2011.08.23


8月第3回目の放送では、これまでにも何度が取り上げていますが、今年生誕200年を迎えたハンガリーの作曲家、フランツ・リストを特集しました。まず1曲目にご紹介したのは《超絶技巧練習曲》より<マゼッパ>。原作はリスト15歳のときにすでに書かれていますが、その後2度の改訂を経て完成されました。演奏は横山幸雄の1998年のアルバムよりお聴き頂きました。このアルバムはハンガリーのリスト協会から、国際フランツ・リスト賞レコードグランプリ最優秀賞を受賞しました。全曲を通して弾くと1時間以上かかるんですね。僕自身、CDにして以来一度も全曲をまとめて弾くことがなかったのですが、今度の9月11日の「横山幸雄 デビュー20周年記念リサイタル」で取り上げることにしました。目下、準備中です!どうなることやら・・・当日を楽しみにしていて下さい。

さてそのリストと言えば、華麗なる超絶技巧と派手な演奏スタイルで、当時の大スターでした。リストの功績は多数ありますが、その一つは「リサイタル」の創始者ということでしょう。一人の演奏家が様々な作品を暗譜で演奏する、という現在のリサイタルの原型を作ったんですね。そして膨大な数の作品をのこしています。ピアノ曲だけで実に700曲近くあります。そしてオーケストラの作品など全てあわせる1500曲以上もあります!ただこれだけの数を残した背景には、リストが「編曲の天才」だったことも大きく関係しています。ピアノ曲の約半数は編曲ものになっています。

この編曲というジャンルについて。当時ピアノという楽器がどんどん発展していった時代ですが、オーケストラの作品やオペラ、歌曲など、遠くまで聴きに行くことが出来なくても、「楽器の王様」と言われるピアノ独奏曲に編曲したもので楽しむことが出来ました。そして編曲の天才、リストは当時まだあまり知られていなかった作曲家の作品を編曲し、自分のリサイタルでよく演奏したんですね。そうすることで、名前が売れた作曲家もいました。その一人がシューベルトです。リストはシューベルトの歌曲を多く編曲しています。今夜2曲目は、シューベルト作曲リスト編曲による<アヴェ・マリア>と原曲の歌曲を続けてお聴き頂きました。このピアノ編曲、なかなかの難曲です。リストの編曲のセンスは素晴らしいと思うのですが、これほど真っ黒な楽譜があるだろうか・・・というぐらい難しい編曲です。今度のリサイタルでも演奏する予定ですが、僕もまだ苦労しています・・・でもこのように原曲と編曲を聴き比べてみるのも面白いですね!

様々な作品をピアノ用に編曲して演奏していたリスト。でも今では以外と弾かれる機会が少ないように感じます。その理由は「難しすぎるから」ということも一つあるのではないかと思います!さて来週も引き続きリストを取り上げますので、どうぞお楽しみに♪

【オンエア楽曲】
♪M1 リスト《超絶技巧練習曲》より第4曲<マゼッパ>
   /ピアノ:横山幸雄
♪M2 シューベルト=リスト《12の歌曲集》より第12曲<アヴェ・マリア> 
   /ピアノ:アレクサンドル・ギンジン
♪M3 シューベルト<アヴェ・マリア>
   /歌(テノール):福井敬、ピアノ:横山幸雄

【今後の予定】
●横山幸雄デビュー20周年記念リサイタル
日時:9月11日、午後1時〜3時
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:オール・リスト・プログラム

●ピアノ・リサイタル
日時:9月18日、午後2時〜4時
場所:大宮ソニックシティホール
曲目:ショパン:ワルツ5番、6番、スケルツォ4番、リスト:リゴレット・パラフレーズ 他

● ジルベスター・コンサート
日時:12月31日 午後5時半〜深夜0時45分(翌1月1日 0時45分)
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:ピアノ協奏曲(第1番〜5番「皇帝」)全曲
   ソロ:ソナタ「悲愴」、「月光」、「テンペスト」「ワルトシュタイン」、「熱情」
共演:横浜シンフォニエッタ/指揮:山田和樹
お問い合わせ:東京FM 03−3221−0080

8月14日 チャイコフスキー特集②

2011.08.16


先週に引き続き、ロシアの作曲家、ピョートル・チャイコフスキーの人生と音楽をご紹介しました。今夜1曲目にお聴き頂いたのは、《弦楽セレナーデ》。チャイコフスキーの作品の中でも広く知られた1曲で、CMに使用されたことでも話題となりました。当時のロシアの作曲家たちは、民族色を強く打ち出した作品を多く書いていましたが、チャイコフスキーの作品は、そういった面を感じさせながらも西ヨーロッパのいわゆる西洋音楽の要素も感じさせます。叙情的でメランコリックな旋律が印象的ですね。なんといっても冒頭のワンフレーズで一気に人の心をとらえてしまう・・・そんな作品だと思います。

また、チャイコフスキーを語る上で、欠かせないのがバレエ音楽でしょう。チャイコフスキーの3大バレエ音楽と言われるのが、《白鳥の湖》(1876)、《眠れる森の美女》(1888)、《くるみ割り人形》(1892)です。2曲目には、《白鳥の湖》より最も有名な<情景>をご紹介しました。改めて聴いてみると、チャイコフスキーは天才的なメロディメーカーだったんだなと思います。メロディ一つでここまで聴かせる作曲家はそういません。弦楽セレナーデでもそうでしたが、チャイコフスキーの音楽は、メロディ、ワンフレーズで引き込む力を非常に強く持っているような気がします。

最後にご紹介したのは、チャイコフスキーの生前最後に作曲された作品です。《交響曲第6番「悲愴」》より終楽章をお聴き頂きました。チャイコフスキーの代表作でもあり日本でも頻繁に演奏されていると思います。この交響曲は、急速な第一楽章から始まり、最後はゆっくりした第四楽章で終わるんですね。交響曲の終楽章といえば、快活に終わるのが定番。それと比較して非常に独創的な構成になっています。あまりアカデミックな作曲家でなかったからこそ成し得た作品なのかなという気もします。この初演の九日後に永遠の眠りについたと言われていますが、まるで息絶えるかのようにひっそりと幕を閉じるこの作品は、チャイコフスキー自身の人生を象徴しているかのようです。

さて、2週にわたりチャイコフスキーの人生と音楽をご紹介してきました。作品のジャンルも多岐に渡り、また傑作も多数のこしたチャイコフスキー。今回は、その中の一部しかご紹介できませんでしたが、ストレートでかつ叙情的なメロディや独創的な構成など、チャイコフスキーの魅力を改めて実感しました。皆さんはいかがでしたか?

【オンエア楽曲】
M1 《弦楽セレナーデ》より第一楽章 
  / ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリン・フィル・ハーモニー管弦楽団
M2 バレエ音楽《白鳥の湖》より<情景>
  /シャルル・デュトワ指揮、モントリオール交響楽団
M3 《交響曲第6番「悲愴」》より第四楽章
  /ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリン・フィル・ハーモニー管弦楽団

【横山幸雄の今後の予定】
●横山幸雄デビュー20周年記念リサイタル
日時:9月11日、午後1時〜3時
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:オール・リスト・プログラム

●ピアノ・リサイタル
日時:9月18日、午後2時〜4時
場所:大宮ソニックシティホール
曲目:ショパン:ワルツ5番、6番、スケルツォ4番、リスト:リゴレット・パラフレーズ 他

● ジルベスター・コンサート
日時:12月31日 午後5時半〜深夜0時45分(翌1月1日 0時45分)
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:ピアノ協奏曲(第1番〜5番「皇帝」)全曲
   ソロ:ソナタ「悲愴」、「月光」、「テンペスト」、「ワルトシュタイン」、「熱情」
共演:横浜シンフォニエッタ/指揮:山田和樹
お問い合わせ:東京FM 03−3221−0080


8月7日 チャイコフスキー特集①

2011.08.08


今夜はピョートル・チャイコフスキーの人生と音楽をご紹介しました。

1曲目にご紹介したのは、《序曲「1812年」》。チャイコフスキー(1840年〜1893年)40歳頃の作品です。この曲は、終盤に「大砲」が出てくる(楽譜に「大砲で」と指示がある)ことでも広く知られています。タイトルにある1812年とは、チャイコフスキーの祖国ロシア帝国に、ナポレオン率いる同盟軍が侵略してきた年なんですね。当初、フランス軍が優勢でしたが、すぐにロシア軍が反撃し、結局フランス軍は敗北を喫することになります。終盤に登場する大砲は、こういった戦争をイメージして使われたと考えられていますが、実際の演奏では、大砲部分は大太鼓で代用されたり、シンセサイザーを使ったりすることが多いようです。

さて今夜取り上げたチャイコフスキーは、ロシアを代表する作曲家です。幼少より音楽的才能を示しましたが、父親の意向で最初は法学の道に進みました。しかし、音楽に対する情熱を忘れられず21歳にして初めて正式に音楽の勉強を開始します。音楽の場合、どうしても早期教育が大切になりますから、チャイコフスキーのような経歴は珍しいですね。ただ幼い頃から専門教育を受けてきた、いわゆるアカデミックなタイプの作曲家にはないような発想があるように思います。実は僕自身、子どもの頃から好きな作曲家を挙げると、ベートーヴェン、チャイコフスキー、ショパンなんです。チャイコフスキーの作品はロマンティックな要素がとても好きで学生時代たくさん聴きました。今夜2曲目にご紹介した《ロメオとジュリエット》を含め、チャイコフスキーはオーケストラの作品が多いので、それをピアノで自由にアレンジして弾いてみたりと、本当に身近な存在でした。

最後にご紹介したのは、《ピアノ協奏曲第1番》。極めて人気が高い一曲で僕自身もよく弾いている作品です。一説によると、この曲の楽譜を最初に見せたニコライ・ルービンシュタインというピアニストに「まったく無価値で、訂正不可能なほど拙劣な作品」と酷評されたそうですが、その後別の演奏者によって大人気の作品となったようです。ただ酷評された理由は何となく分かる気がします。というのも、チャイコフスキー自身があまりピアノを弾かなかったことと関係していると思いますが、ピアニスト特有の指の動きと音楽の要素があってないんですね。例えばショパンやリスト、ラフマニノフのような、名ピアニストが作った作品は手の動きに合っていて、指が動きやすいように書かれているんです。でもチャイコフスキーのは違う。ぱっと指がいきやすい方に書かれてない。そういう意味で先ほどの酷評の言葉が出てきたのかなと思います。作品自体は、この一楽章だけでも迫力満点で聴き応えがありますが、第二楽章、第三楽章もそれぞれ特徴的で、聴いていて非常にストーリーが分かりやすいように思います。こういった点も多くの人の心をとらえる魅力の一つなのかもしれませんね。

来週も引き続き、チャイコフスキーの人生と音楽を取り上げます。どうぞお楽しみに♪


【オンエア楽曲】
♪M1 チャイコフスキー 《序曲「1812年」》作品49
    /シャルル・デュトワ指揮、モントリオール交響楽団
♪M2 チャイコフスキー 幻想的序曲《ロメオとジュリエット》
    /アルトゥーロ・トスカニーニ指揮、NBC交響楽団(1946年録音)
♪M3 チャイコフスキー 《ピアノ協奏曲第1番》作品23 より第1楽章
    /ピアノ:マルタ・アルゲリッチ、キリル・コンドラシン指揮、バイエルン放送交響楽団


【横山幸雄の今後の予定】
●横山幸雄デビュー20周年記念リサイタル
日時:9月11日、午後1時〜3時
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:オール・リスト・プログラム

●ピアノ・リサイタル
日時:9月18日、午後2時〜4時
場所:大宮ソニックシティホール
曲目:ショパン:ワルツ5番、6番、スケルツォ4番、リスト:リゴレット・パラフレーズ 他

● ジルベスター・コンサート
日時:12月31日 午後5時半〜深夜0時45分(翌1月1日 0時45分)
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:ピアノ協奏曲(第1番〜5番「皇帝」)全曲
   ソロ:ソナタ「悲愴」、「月光」、「テンペスト」「ワルトシュタイン」、「熱情」
共演:横浜シンフォニエッタ/指揮:山田和樹
お問い合わせ:東京FM 03−3221−0080

7月31日 聴いて楽しむ「花火」

2011.08.03


日付も変わり、8月1日は、「花火の日」と日本では制定されているそうです。実は音楽にも「花火」をモティーフにした作品があるんです・・・そこで今回は花火にまつわる音楽をいろいろご紹介しました!

まず1曲目は、ヘンデル作曲、組曲《王宮の花火の音楽》より<歓喜>をお送りしました。ヘンデル(1685〜1759)はバッハと同年にドイツで生まれ、後にイギリスに帰化した作曲家です。この作品は1749年、オーストリア継承戦争終結を祝う祝賀行事に際し作られました。野外での演奏を考慮して、大編成の金管楽器が用いられるなど、華やかな作品になっています。そして2曲目にご紹介したのは、ドビュッシー作曲、《前奏曲集 第二集》より<花火>。フランス印象派を代表するクロード・ドビュッシー(1862〜1918)の50歳頃の作品で、晩年の代表作といえるでしょう。調性の枠を超えて、絵画のような色彩感あふれる音楽を生み出したドビュッシーですが、全二巻の『前奏曲集』は、20世紀前半のピアノ音楽としても最高傑作のひとつに数えられています。

ところで、日本では夏の風物詩とされている花火ですが、その歴史は古く、もともとは中国発祥で、その後13世紀頃にヨーロッパに伝わったそうです。ヨーロッパでは主に王侯貴族の祝典の際に用いられ、その音の迫力で催しを盛り上げたと言われています。今でも独立記念日や大晦日など、祝祭で用いられますね。僕もフランス留学時代、7月14日の独立記念日に際し、たくさんの花火で祝っているのを目にした思い出があります。
 
さて花火にまつわる音楽・・・3曲目にご紹介したのは、ストラヴィンスキーの《花火》。イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882〜1971)は、ロシアの作曲家、指揮者ですが、民族主義的な要素にフランス印象派の影響を取り入れ、独自の描写的な音楽を確立しました。その後、新古典主義、十二音技法、ジャズなど様々なスタイルの音楽を書き続けました。この《花火》は非常に若い時の作品で、作曲の師であるリムスキー=コルサコフの娘の結婚祝いに書いたものです。これを聴いて感銘を受けたロシア・バレエ団の主宰者セルゲイ・ディアギレフは、《火の鳥》の作曲をストラヴィンスキーに依頼したと言われています。いわばストラヴィンスキーの作曲家としての道を切り開いた最初の作品といえるでしょう。そして最後、4曲目にお送りしたのは、モシュコフスキ作曲、《8つの性格的小品》より <花火>です。モシュコフスキ (1854〜1925)は、ポーランド人の作曲家、ピアニストです。ドイツで学び、後半生はフランスへ移住してパリで過ごしました。ちょうどショパンが亡くなった頃に生まれていますね。ピアノを習っている方にとっては、ショパンのエチュードを始める前に習う練習曲の作曲家として知られているかもしれませんね。

花火をモティーフにした音楽、4曲をお届けしましたが、聴いて楽しむ花火はいかがでしたでしょうか。器楽の作品は、特定のテーマが決まっていない、いわゆる絶対音楽の作品が主ですが、こういった描写的でイマジネーションを掻き立てられるような作品も、音楽を聴く上での楽しみの一つとなるのではないでしょうか。


【オンエア楽曲】
♪M1 ヘンデル 組曲《王宮の花火の音楽》第4曲<歓喜>
/ジョン・エリオット・ガーディナー指揮、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
♪M2 ドビュッシー《《前奏曲集 第二集》》より第12曲<花火>/横山幸雄
♪M3 ストラヴィンスキー《花火》/ピエール・ブーレーズ指揮、シカゴ交響楽団
♪M4 モシュコフスキ 《8つの性格的小品》より 第6曲 <花火>
/アルトゥール・ルービンシュタイン

【横山幸雄の今後の予定】
●横山幸雄デビュー20周年記念リサイタル
日時:9月11日、午後1時〜3時
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:オール・リスト・プログラム

●ピアノ・リサイタル
日時:9月18日、午後2時〜4時
場所:大宮ソニックシティホール
曲目:ショパン:ワルツ5番、6番、スケルツォ4番、リスト:リゴレット・パラフレーズ 他

● ジルベスター・コンサート
日時:12月31日 午後5時半〜深夜0時45分(翌1月1日 0時45分)
場所:東京オペラシティコンサートホール
曲目:ピアノ協奏曲(第1番〜5番「皇帝」)全曲
   ソロ:ソナタ「悲愴」、「月光」、「テンペスト」「ワルトシュタイン」、「熱情」
共演:横浜シンフォニエッタ/指揮:山田和樹
お問い合わせ:東京FM 03−3221−0080

«Prev || ... 55 · 56 · 57 · 58 · 59 · 60 · 61 · 62 · 63 ·... | | Next»