ON AIR REPORT オンエアレポート

1月22日 モーツァルト特集①

2012.02.01


1月27日が誕生日の作曲家、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756年1月27日生 - 1791年12月5日没)の人生前半をご紹介しました。モーツァルトはもちろん僕も演奏しますが、レッスンで取り上げることも多い作曲家です。

モーツァルトは、ハイドン、ベートーヴェンと並び、古典派と言われる時代に活躍した一人です。35歳の人生で、未完成の断片も含めると700曲ほど遺したと言われています。楽譜に書くだけでも大変な量ですよね。それほど筆が早かったのでしょう。当時の音楽家は、一人で作曲、演奏、即興演奏をこなす人がほとんどでしたが、モーツァルトの場合、作曲と演奏、即興演奏が全て同時に出来たのでしょうね。1756年、ザルツブルクに生まれたモーツァルトは、幼い頃から神童ぶりを発揮したと言われています。父レオポルトは、ザルツブルクの宮廷楽団の副楽長兼ヴァイオリン奏者で、息子に熱心な音楽教育を施しました。幼い頃から父子で数年にわたる演奏旅行(アウグスブルク、パリ、ロンドン、イタリアなど)に出かけ、様々な文化を吸収し、それは作風にも影響を与えています。

さて1曲目にご紹介したのは、1772年、モーツァルト16歳の作品で、弦楽四重奏のための《ディヴェルティメント》です。タイトルは、イタリア語の「divertire(楽しい、面白い、気晴らし)」に基づいており、明るく軽妙で楽しい曲想の器楽組曲を意味します。ザルツブルクで作曲されたことからK.136〜138をまとめてザルツブルク・シンフォニーとも言い、本作はその1曲目にあたります。2回目のイタリア旅行から戻った後、故郷ザルツブルクで作曲されています。イタリア音楽の影響が感じられる作品ですね。2曲目は、《ピアノ・ソナタ第8番》。18曲のうちたった2曲しかない短調で書かれたソナタです。ベートーヴェンの音楽がもっているドラマティックさと比べるとあっさりしていますが、そこはかとなく漂ってくる上品さが持ち味のような気がします。モーツァルトの生きた時代は、チェンバロからピアノへと楽器の改良が進んだ時代でもあります。現代のピアノと比べると機能や音色も全く異なるものでした。僕はどんな作曲家の作品を演奏するにしても、現代ピアノの前にその作曲家が座ったらどんな演奏するだろうかと考えて演奏スタイルを決めます。モーツァルトの場合も同様です。クラシック音楽の演奏は、いろいろな解釈が可能で、それが音楽の楽しみ方、醍醐味の一つかなと思います。


【オンエア楽曲】
M1 モーツァルト 《ディヴェルティメント K.136 》より第1楽章
  / 指揮:ヘルベルト・ミュンシュナー、南西スタジオオーケストラ
M2 モーツァルト 《ピアノソナタ第8番 K310 》より第1楽章 / 内田光子
 
【今後の予定】
★第278回神奈川フィル定期演奏会
日時:2012年 2月 17日 (金曜日) 午後7時〜9時
場所:横浜みなとみらいホール
曲目:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番
共演:指揮:金聖響氏、神奈川フィル

★デビュー20周年後期ロマン派三大協奏曲の夕べ
日時:2012年 2月 28日 (火曜日) 午後7時〜9時
場所サントリーホール (地図)
曲目:チャイコフスキー:第1番、ラヴェル:ト長調、ラフマニノフ:第3番
共演:指揮:小泉和裕氏、東京都交響楽団

★Voyageショパンからラフマニノフへ音楽の旅路 <リサイタル・シリーズ第2回(全12回)>
日時:年3月4日、午後3時〜5時
曲目:曲目:ショパン:プレリュードop.45、24の前奏曲 Op.28/ドビュッシー:前奏曲集 第1集
場所:三鷹市芸術文化センター風のホール

1月15日 ゲストは宮崎陽江さん

2012.01.31


1月第3週目は、スイスと日本を拠点に幅広い活動をされている、ヴァイオリニストの宮崎陽江さんをゲストにお迎えしてお送りしました。

宮崎さんのプロフィールを簡単にご紹介すると・・・
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*ニューヨーク州生まれ、幼少期をパリで過ごし、3歳よりヴァイオリンを始める。
*桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部演奏学科卒業。
*1997年ジュネーヴ高等音楽院をプルミエ・プリ(一等賞)にて卒業、同音楽院教育法ディプロマ取得。 名匠ジャン=ピエール・ヴァレーズ氏の薫陶を受ける。
*現在、スイスと日本を拠点にソリスト、室内楽奏者として活躍。ラジオスイスロマンド放送出演多数。ヨーロッパ各地での演奏会、国際音楽祭に多数出演。
*日本では2007年札幌キタラホール、08年銀座王子ホール、09年カザルスホール、各地でリサイタルを行い、好評を博す。
*2008年よりオクタヴィア・ジャパンよりCDリリース(これまでに4枚)、
*音楽の源流、また作曲家の足跡を求め、ヨーロッパ各地で取材・撮影されたDVDシリーズ(6枚)の制作など、多方面にわたる活動を展開している。
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もともと日本で音楽教育をうけていた宮崎さん。桐朋学園大学を卒業後、名匠ジャン=ピエール・ヴァレーズ氏の指導を受けるために、スイスのジュネーヴ高等音楽院へ。先生のレッスンでは、音楽の指導以外にも「赤ワインを飲みなさい!良いビブラートのためには血から変えなさい。」と言われたそうです。宮崎さんをそれを真面目にきいて実践したそうですよ(笑)素敵な子弟関係ですね。いつも僕がうらやましく思うのは、例えばヴァイオリンの方は師匠と一緒に演奏できるんですよね。ピアノはなかなか・・・師匠との共演は、楽しそうでいいなと思います。

そして、宮崎さんの演奏を聴きながら、ヴァイオリンの魅力についてもお話しました。ヴァイオリンという楽器は人間の声に近いように思います。ピアノは楽器の構造上、音が減衰していくのですが、それを感じさせないように演奏するわけです。ヴァイオリンはビブラートに代表されるように、技術によって変幻自在な音色が出せる。さらに音を出してから音色を変化させられる。そこがうらやましいですね。

最後に宮崎さんに今後チャレンジしてみたいことを伺ったところ、「流れのままに・・・いろいろな出会いを通して新たな曲も発掘していきたいですし、ソロ活動も深めて行きたいと思っています。」と語って下さいました。これからも宮崎さんの益々のご活躍を楽しみにしています。


【オンエア楽曲】
M1 サン=サーンス《序奏とロンド・カプリチオーソ》 / ヴァイオリン:宮崎陽江
M2 バッツィーニ 《妖精の踊り》 / ヴァイオリン:宮崎陽江
        (2011年12月19日「浜離宮朝日ホール」でのライブ録音より)

1月8日 2011年ジルベスターコンサート振り返り

2012.01.31


昨年2011年の大晦日から2012年元旦にかけて行った「TOKYO FM主催 横山幸雄 ベートーヴェン ジルベスターコンサート」の様子を振り返ってお送りしました。会場にお越し頂いた皆様、改めてありがとうございました。昨年に引き続き、ジルベスターコンサートは2回目となりましたが、今回は、オール・ベートーヴェン・プログラムで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲、そして代表的なピアノ・ソナタ5曲、計10曲を演奏いたしました。7時間にわたるコンサートとなりましたが、共演して下さったのは、指揮者・山田和樹さん、そして横浜シンフォニエッタの皆さんです。カウントダウンをはさんで、最後の「皇帝」で会場にいらして下さった皆様と新年のお祝いをしました。

昨年は大震災もあり日本が本当に大変な中、こうして1年たって同じステージに立てたことが非常に感慨深く感じました。今回は、ベートーヴェンの「苦難から歓喜へ」という音楽のテーマ、そして自身の人生とも重なるテーマがあり、それを今の日本の状況と重ね合わせ、ベートーヴェンの音楽からたくさんのエネルギーをもらいたいという企画意図がありました。ピアノ協奏曲を5つ並べて聴きますと、若い頃に苦労し、人生の紆余曲折があり、そこから最後の歓喜へ、という流れが感じられるのではないでしょうか。ベートーヴェン自身がまるで一つのストーリーのように、並べて演奏することを前提に作ったような印象すら受けます。

今回の演奏曲は、僕が普段あまり弾かないレパトーリーが多かったので、正直、準備が大変でした。当日も緊張しましたが、第1番の協奏曲を17時半頃に弾き始めて、そこがうまく乗り越えられた頃から、気分も落ち着いてきました。僕も昨年はデビュー20周年ということで、これまでいろいろなオーケストラと共演させて頂いていますが、メンバーの多くは自分よりも年上のことが多く、先輩たちに導かれてきた、という風に考えていましたが、いつの間にか同世代となり、そして今回は全員が僕より年下という若いメンバーでした。音楽を心底楽しんでいる姿に僕も心を打たれ、そういう意味でも気持ちよく演奏できたと思います。また共演の機会を持てたらと思います。


【オンエア楽曲】
M1 ベートーヴェン《ピアノソナタ第8番「悲愴」》より第3楽章/横山幸雄
M2 ベートーヴェン《ピアノ協奏曲第5番「皇帝」》より第3楽章
   /横山幸雄、山田和樹、横浜シンフォニエッタ 
   (ともにジルベスターコンサートのライブ録音より)

1月1日 2012年は・・・ドビュッシー生誕150周年

2012.01.03


皆様、明けましておめでとうございます。
ジルベスターコンサートにお越し頂きました皆様、どうもありがとうございました!コンサートの模様は来週8日に改めて振り返りたいと思います。

さて2012年初回の放送では、今年がメモリアルイヤーとなる作曲家の中から、生誕150周年のフランスを代表する作曲家、クロード・ドビュッシー(1862-1918)を特集しました。

その他にもメモリアルイヤーを迎える作曲家としては・・・・
ジョン・ケージ生誕100年 (1912-1992)
ジュール・マスネ没後100年 (1842-1912) 
フリッツ・クライスラー没後50年(1875-1962) 
ジャック・イベール没後150年 (1890-1962) 
などがいます。毎年、メモリアルイヤーに合わせた演奏会、イベントが多く企画されるので、ぜひご注目くださいね。

さて今年生誕150周年を迎えたドビュッシーですが、印象派音楽の先駆者といえる作曲家で、ピアノ曲や管弦楽曲を多く遺しています。ロシア音楽や、アジアの音楽(万国博覧会で聴いたガムランの音色など)に影響を受け、独特の音色を用いた色彩感あふれる音楽を生み出しました。今夜1曲目にご紹介したのは、ドビュッシーの《水の反映》。1994年のアルバム、『イマージュ』よりお聴き頂きました。この曲はドビュッシーの《映像》第1集の1曲目にあたる作品です。非常に映像的な想像を喚起させる曲です。もともと美術の分野で「印象派」という流れがあり、それまでの風景画などと異なり、雰囲気や印象をそのまま絵にしました。それを同じように音楽で表したのがドビュッシーです。フランス近代音楽の幕開けといえるでしょう。ドビュッシーの作品はそれまでのロマン派の作品のように起承転結がはっきりしたものとは異なります。もし起承転結で理解しようとすると、かえって分かりにくい。そうではなくて、音の響き、そこからうける感覚、印象、それらを味わうような音楽といえるかもしれません。もっと時代が進んで現代音楽になると、どこがメロディー、ハーモニーなのかも分かりにくくなる。その中間に位置するよう作品を書いたのがドビュッシーです。もしかすると、ドビュッシーの音楽はつかみどころがない、と感じる方もいるかもしれません。しかし、そのとらえどころのなさがドビュッシーの音楽の魅力の一つでしょう。そこから感じられる色彩感、陰影、立体感・・・これらは僕にとってフランス、パリという町がもっている独特の感覚、センスと非常に密接に結び付いているような感じがして、自分が10代を過ごした時のことを思い出し、なんとなく懐かしい感じがします。ドビュッシーだけのプログラムでの演奏会は難しいかもしれませんが、今年はメモリアルイヤーということもありますので、いろいろ取り上げて行ければと考えています。今夜お聴き頂いた作品以外にも、まだまだご紹介したい曲がたくさんあります。ドビュッシーについては、また近いうちにじっくり掘り下げてご紹介したいと思いますので、どうぞお楽しみに!

【オンエア楽曲】

♪M1 ドビュッシー <水の反映> / 横山幸雄
♪M2 ドビュッシー《牧神の午後への前奏曲》 / 編曲&演奏:横山幸雄
(1994年のアルバム『イマージュ』より)

【今後の演奏会予定】

●横山幸雄ピアノリサイタル
日時:1月14日、午後2時〜4時
場所:杉並公会堂
曲目:ベートーヴェン:ソナタ「ワルトシュタイン」、ドビュッシー:喜びの島 他

●第278回神奈川フィル定期演奏会
日時:2012年 2月 17日 (金曜日) 午後7時〜9時
場所:横浜みなとみらいホール
曲目:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番
共演:指揮:金聖響氏、神奈川フィル

●デビュー20周年後期ロマン派三大協奏曲の夕べ
日時:2012年 2月 28日 (火曜日) 午後7時〜9時
場所サントリーホール (地図)
曲目:チャイコフスキー:第1番、ラヴェル:ト長調、ラフマニノフ:第3番
共演:指揮:小泉和裕氏、東京都交響楽団

●ドビュッシー生誕150年記念「ショパンとドビュッシー:前奏曲を巡って〜」
日時:2012年3月4日、午後3時〜
場所:三鷹市芸術文化センター風のホール

♪ぜひ足をお運び頂ければと思います♪

12月25日 振り返り特集②

2012.01.02


前回に引き続き、2011年後半に行った演奏会について振り返りました!今年も様々な演奏会をさせて頂きましたが、中でも9月11日、東京オペラシティで行った『横山幸雄デビュー20周年記念リサイタル 〜オール・リスト・プログラム〜』は僕にとっても、一つの区切りとなる演奏会でした。いつも夏の終わり頃、オペラシティでは大きな演奏会をやらせて頂いていますが、今年に引き続き、来年もリストを中心に取り上げる予定です。いつも長めの構成でたっぷり聴いて頂いていますが、今回は通常2部構成のところ、3部で組みました。宗教的なもの、編曲もの、そしてリストを代表する《超絶技巧練習曲集》を初めて演奏会で取り上げたり・・・リストの様々な面を聴いて頂けるように構成を練りました。
実はこの時の第1部で、ピアノの弦が切れるというハピニングがありました。大きな演奏会では、自分の楽器を持ち込んで演奏するのですが、この時はNYスタインウェイのピアノを使いました。5月のショパン212曲全曲演奏会のときはドイツのハンブルク製のスタインウェイを使ったのですが、同じスタインウェイでも全く性格が異なります。NYスタインウェイはある意味とても荒削りで、音色一つ一つはバラついているんですが、それが曲になったときに、その音色のムラがいい味となり、音楽の一つの要素となるように感じています。ハンブルク製に比べるとボリューム感もかなりあります。大ホールで使うと非常に迫力があり、高音は輝かしい響きをもっています。もちろん生産地だけでなく、年代によっても楽器の特徴は異なりますが、楽器が違うと、音色はもちろん、弾き心地も異なります。楽器の違いにも注目して聴いてもらうと、さらに面白いのではないかと思います。その他では10月17日、この日はショパンの命日でもありますが、ちょうど1年前から始めた『プレイエルによるショパン ピアノ独奏曲全曲演奏会』の最終回を無事に終えました。全12回シリーズのCDも先月で全て発売されています。ショパンの愛用したプレイエルを使用した演奏会ということで、僕にとっても貴重な機会となりました。CDでもプレイエルの音色を堪能できると思いますので、ぜひお聴き頂ければと思います!

2011年を振り返ると、日本にとって本当に大変な年となりました。僕も音楽家として何ができるのか、ということを日々考えて過ごしています。演奏会に来て下さるお客様へ感謝しつつ、一回ずつの演奏会がよりいっそう大切なものに感じられた1年でした。


【オンエア楽曲】
♪M1 シューベルト作曲 リスト編曲 《アヴェ・マリア》
♪M2 リスト 《超絶技巧練習曲集》より第12番<雪あらし>
(『横山幸雄デビュー20周年記念リサイタル 〜オール・リスト・プログラム〜』のライブ録音より)

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