ON AIR REPORT オンエアレポート

4月1日 ゲストは米良美一さん①

2012.04.05


4月第1週は、歌手の米良美一さんにゲストにお越し頂きました!米良さんと僕は実は同じ歳なんです。映画『もののけ姫』(1997)の主題歌を担当され、カウンターテナー(男性が裏声を用いて女声パートを歌うこと)の歌声で一躍大ブレイクされた米良さん。クラシック音楽を中心にやってこられたわけでは決してないそうです。実は小さい頃から民謡や詩吟を嗜んできたという米良さん。3歳の頃には「岸壁の母」という演歌を人前で披露されたそうです。3歳で・・・すごいですね!その後、中学生の頃に、アイドルの松田聖子さんに出会い、すっかり魅力され、よく聖子ちゃんの歌を真似して歌っていたそうです。ただし、すでに変声期に入っていた米良さん。聖子ちゃんの歌声・声域に合わせるには、裏声にしないと歌えない・・・というわけで、ファルセット(裏声)を用いて、聖子ちゃんの声に近づけて歌っていたそうです!真似しようとしても普通は出来ませんよね。

その後、音楽をきちんと勉強するために、音楽大学を目指すことに。高校2年生から西洋音楽の歌の勉強を本格的に始められたそうです。でも、それまで演歌などを歌っていたために、ついコブシをきかせたり(笑)いろいろなご苦労もあったそうです。そして無事大学入学後、2年生の頃にカウンターテナーの存在を知り、それまで勉強されていたテナーからカウンターテナーへと、目指す方向を変更されたそうです。一般からすると、男性が高い音域で歌うのは特別な技術が必要だと思いますが、米良さんにとっては、声の出し方は、テクニック的には実はあまり違いはないそうです。そんな米良さんだからこそ可能なんだと思いますが、最近ではクラシック音楽、ポップス、歌謡曲まで、ジャンルを超えた幅広い活動を展開されています。近々、昭和の歌謡曲など懐かしい音楽を中心に取り上げるコンサートも予定されているという米良さん。そのきっかけの一つになったのが、今年2月29日にリリースされたアルバム、『米良美一 名曲集 Vol.1』。「ヨイトマケの唄」「ひとり寝の子守唄」「真赤な太陽」 などアルバムタイトル通り、珠玉の名曲を集めたCDです。今回のコンサートでは、このアルバムからも歌われるそうです。ぜひ皆さま足をお運びください。また来週も引き続き米良さんをゲストにお迎えして、最近の音楽活動についてもじっくりお話を伺っていきたいと思います。どうぞお楽しみに♪



【オンエア楽曲】
♪M1 <もののけ姫> 歌:米良美一
♪M2 <瑠璃色の地球> 編曲:三枝成彰


【米良美一さんの今後の予定】
★「米良美一 リサイタル」
日時:4月17日(火)午後1時半〜
場所:東京オペラシティ コンサートホール
内容:昭和の歌謡曲を中心に取り上げます。当時の大衆音楽、流行曲のカバーの他、童謡や唱歌など、懐かしい音楽をお届けします。


【横山幸雄の今後の予定】
★ 「横山幸雄“入魂のショパン” ―ショパンの遺志を追い求めて―」
日時:5月 3日 (木・祝)、朝8時〜夜11時(朝8時開演、夜11時終演の4部制)
場所:東京オペラシティ
内容: ショパンが自ら作品番号を付して世に送り出した147曲に加えて、《ピアノ協奏曲第1番、2番》のソロ・ヴァージョンも演奏します。
 

3月25日 ドビュッシー特集

2012.04.04


3月25日は、この番組でも、すでに何度か紹介してきましたが・・・クロード・ドビュッシー(1862-1918) の命日です。ドビュッシーといえば、19世紀末から20世紀にかけて活躍したフランスの作曲家です。今年生誕150年ということで、各方面でいろいろな催しが企画されていますね。今回はそんなドビュッシーの遺したピアノ作品の中でも、最高傑作の一つと言われる、《前奏曲》を中心にご紹介しました。

もともと「前奏曲(プレリュード)」とは、その名前の通り、大規模な楽曲に先立って演奏する楽曲の意味ですが、後に演奏技巧を凝らした、即興的な自由な作風の作品の意味へと変わって行きます。プレリュードを遺した作曲家としては、バッハ、ショパン、ドビュッシー、ラフマニノフ、スクリャービンなどが有名ですね。ドビュッシーの作曲したピアノのための前奏曲は全24曲あり、各12曲からなる曲集『前奏曲集第1巻』(1910)、『前奏曲集第2巻』(1913)に収められています。おそらくバッハやショパンのプレリュード集を念頭において構成されたと考えられますが、バッハやショパンのように各調性に1曲ずつ割り当てられてはいません。ドビュッシーのプレリュードは、それぞれタイトルが付けられていますが、オリジナルの楽譜では、各曲の終わりの余白に小さく書込まれています。第1集に続いて書かれた第2集は、ドビュッシー50歳頃の作品で、晩年の傑作の一つです。終曲の「花火」は、お祭りの雰囲気や、花火の鮮やかな色彩が技巧的に描かれた作品で、曲の終わりには、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」が遠くから聞こえてきます。第2集の最後を締めくくるのに相応しい名作だといえるでしょう。今年は、メモリアルイヤーにちなみ、僕もドビュッシーを取り上げる機会をいろいろと予定しています。どうぞお楽しみに!


【オンエア楽曲】
♪M1 ドビュッシー<前奏曲集第1集より第8番「亜麻色の髪の乙女」> ピアノ:横山幸雄
♪M2 ドビュッシー<前奏曲集第1集より第12曲「ミンストレル」> ピアノ:ミシェル・ベロフ
♪M3 ドビュッシー<前奏曲集第2集より第12曲「花火」> ピアノ:横山幸雄
♪M4 ドビュッシー<前奏曲集第2集より第6曲「風変わりなラヴィーヌ将軍」> ピアノ:横山幸雄
(M1,3,4:横山幸雄ピアノ・リサイタル・シリーズ〜Volage 第2回〜「ショパンとドビュッシー:前奏曲を巡って」[2012年3月4日三鷹市芸術文化センター 風のホール]のライブ録音より)

3月18日 ゲストは鮫島有美子さん

2012.04.04


3月第3週は、日本を代表するソプラノ歌手として国際的に活躍されている、鮫島有美子さんにお越し頂きました!鮫島さんとは3月12日に六本木の「スイートーベイジル139」で行われた『Chopin Love Night』(歌&朗読:鮫島有美子、脚本&構成:横山幸雄)で共演させて頂きました。ショパンの生きた時代の人間模様や社会背景など、歴史的史実に基づきながら、僕なりの解釈を加えて、ショパンの若き日の恋人マリアだったらこういう台詞を言ったんじゃないかな、ジョルジュ・サンドだったら・・・と想像を膨らませて脚本を書かせて頂きました。鮫島さんには、朗読に加えて、ショパンの数少ない歌曲も(オリジナルはポーランド語ですが、今回はなんとドイツ語で!)歌って頂きました。

ショパンは、ピアノ曲を中心に遺しているため、歌い手にとっては、実はあまり馴染みがない作曲家の一人かと思います。ピアノ曲と比べると、歌曲は旋律もピアノ伴奏も非常にシンプルに書かれているのですが、ショパンの故郷であるポーランド的な、民族的な感じがとても自然で、ショパンの原点を垣間見ることができるように思います。鮫島さんにとっても、ショパンの歌曲を歌われる機会はほとんどないそうです。今回ショパンの歌曲を歌われて、やはりシンプルだからこそ、自分のイメージをどんどん広げて行かなければならないし、繰り返しの中で、どうやって変化に富みながら楽しんで聴いてもらえるかなどを工夫されたそうです。言葉からどれだけのイメージを持てるか、どんなシーンを思い浮かべるかは人によって異なりますが、歌い手にとってやはり想像力は不可欠のようです。今回の『Chopin Love Night』での共演、そしてこの番組もとても楽しく、また勉強になる共演でした!鮫島さん、どうもありがとうございました。



【オンエア楽曲】
♪M1 アーン作曲<わが歌に翼ありせば>
    歌:鮫島有美子、ピアノ:ヘルムート・ドイチュ(『愛のよろこび』(1990)より)
♪M2 ショパン作曲<ノクターン第8番 op.27-2>
    朗読:鮫島有美子、ピアノ:横山幸雄
♪M3 ショパン作曲<リトアニアの歌 op.74-16>
    歌:鮫島有美子、ピアノ:横山幸雄
(M2,3 :3月12日「スイートーベイジル139」での『Chopin Love Night』ライブ録音より)

3月11日 ミサ曲

2012.03.13


2012年3月11日、未曾有の大震災からちょうど1年がたちました。復興へ向けてやるべき事は、まだまだたくさん私たちに残されているように思います。僕自身、一人の音楽家として何ができるのか、日々考えながら音楽と向き合ってきました。音楽の力を通してより多くの人が少しでも幸せを感じてもらえればと願いながら今後も演奏を続けて行きたいと思います。今夜は、改めて、震災の犠牲になられた方々への哀悼の意と、一日でも早い復興を願い、「ミサ曲」をご紹介しました。

1曲目にご紹介したのは、バッハの《ロ短調ミサ曲》。バッハといえば、バロック期最後の音楽家で、中世以後の多声音楽を総合、総括した作曲家です。この作品は30代後半に作曲されたものを部分的に含みますが、最終的に完成されたのは亡くなる1年前の1749年。バッハが生前、最後に完成させた作品と言われる。バッハの集大成ともいえる作品です。僕はこの作品は中学生くらいのときに何度も聴いた作品で、いわゆる学習曲とは異なる深淵な世界に魅力されました。

続いて、モーツァルトの《大ミサ曲》より冒頭の<キリエ>をお送りしました。モーツァルトの宗教音楽では、レクイエムに次いで有名な曲ではないでしょうか。1783年、モーツァルト27歳の頃の作品でザルツブルクの聖ペトロ教会で初演されました。しかしこの作品、結局未完成に終わり、クレドは途中まで、アニュス・デイは作られませでした。陰鬱な雰囲気で始まりますが、次第に明るくモーツァルトらしい朗らかさも聴こえてきます。またバッハの終始厳格な曲調とは異なり、同じ典礼文を用いたミサ曲といっても、作曲家による違いが聴き所でもありますね。

そして次にご紹介したのは、ベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)》。1823年に完成された晩年の大曲です。ちょうど同じ時期に第9交響曲が書かれています。ベートーヴェンは壮年期に《ミサ曲ハ長調》を伝統的な教会音楽の形式に則って書いていますが、本作では形式の自由度も増し、実際のミサ式典のためではなく、一般の演奏会で取り上げられる機会が多い作品です。終曲 の<アニュス・デイ>では「内と外の平和を願って」とベートーヴェン自身による指示が書き込まれています。自らの人生、葛藤の多かったベートーヴェン自身の平和と、世の中の平安を祈って書かれたのかもしれません。そして、最後に僕の最も好きな作品の一つである、フォーレの《レクイエム》をお聴き頂きました。

今夜は、改めて、震災の犠牲になられた方々への哀悼の意と、一日でも早い復興を願い「ミサ曲」をご紹介しましたが、音楽を通して、一人一人が少しでも気持ちが安らぎ、幸せを感じてもらえればと願っております。また僕自身も、一音楽家として自分にできることを常に最善をつくしてやっていきたいと思います。

【オンエア楽曲】
♪M1 バッハ《ミサ曲ロ短調》より<ドナ・ノビス・パーチェム>
 指揮:グスタフ・レオンハルト、オランダ・コレギウム・ムジクム・バッハ合唱団、
 ラ・プティット・バンド
♪M2 モーツァルト《大ミサ曲》より<キリエ>、
 指揮:ジョン・エリオット・ガーディナー、イギリス・バロック管弦楽団、
 モンテヴェルディ合唱団
♪M3 ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》より<アニュス・デイ>
 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、
 ウィーン楽友協会合唱団、ソプラノ:レラ・クーベッリ
♪M4 フォーレ《レクイエム》より<リベラ・メ>
 指揮:アンドレ・クリュイタンス、パリ音楽院管弦楽団、
 バリトン:ディートリッヒ・フィッシャーディスカウ

【横山幸雄の今後の予定】
★どりーむコンサート〜シンフォニーの祭典
日時:3月20日(火・祝日)、午後2時〜4時
場所:府中の森芸術劇場
共演:指揮、大友直人/日本フィルハーモニー交響楽団
曲目:ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番
♪ぜひ足をお運び頂ければと思います♪

3月4日 ヴィヴァルディ特集

2012.03.13


ちょうど今から334年前の1678年3月4日、イタリア・ヴェネツィアで生まれた作曲家、アントニオ・ヴィヴァルディを特集して、その人生と音楽についてご紹介しました。時代としては、バッハ、ヘンデルよりも7歳年上、バロック後期に活躍した作曲家です。ヴィヴァルディの代表作というと「四季」が最も有名で他はあまり知られていないようにも思いますが実は、たいへん多作な作曲家です。その数は600曲以上にのぼると言われています。本人はヴァイオリンの名手として知られ、そのためか500曲ほどある協奏曲の7割以上が弦楽の協奏曲になっています。バロック時代の協奏曲は、チェンバロを代表とする通奏低音(ベースライン)に様々な独奏楽器が加わった少人数の集まりから、徐々に大規模な形へと発展していきました。その中で、チェンバロや、ヴァイオリンがソロ楽器として独立して、独奏者の技巧を前面に押し出した、より華やかな効果を生み出す形式へとつながっていきました。

続いてお届けしたのは、《協奏曲「調和の霊感」》です。この作品はヴィヴァルディが最初に出版した曲で、四季についで有名な作品かもしれません。ヴァイオリンを習っている人にとっては、学習曲として取り上げられる機会も多い曲ではないでしょうか。ヴィヴァルディの音楽は7歳年下のバッハやヘンデルなどにも大きな影響を与えたと言われます。バッハはヴィヴァルディの作品をいくつか編曲しています。というのも当時はイタリアが音楽の中心地で、その音楽を学び取るために編曲したのではないかと考えられています。画家が模写するような感じでしょうか。そして最後は少し珍しい《マンドリン協奏曲》をお聴き頂きました。日本では長くCMでも使用されていた曲ですので、耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

僕にとってヴィヴァルディの音楽は、バッハやモーツァルトとも異なり、またベートーヴェンのような強いメッセージ性を持つわけでもなく、聴いていて心地良い音楽です。現代では様々な娯楽もあり、音楽にしても私たちはいろいろな選択肢があるわけですが、当時の人にとって、このような心地良い音楽は何よりの気分転換になったのかもしれませんね。


【オンエア楽曲】
♪M1 ヴィヴァルディ《協奏曲集「四季」》より「春」 第1,2,3楽章
アルベルト・リッツィオ指揮、イ・ムジチ・ディ・サン・マルコ
♪M2 ヴィヴァルディ《協奏曲集「調和の霊感」》より第6番 第1楽章
 アルベルト・リッツィオ指揮、イ・ムジチ・ディ・サン・マルコ
♪M3 ヴィヴァルディ《マンドリン協奏曲 ハ長調》より第1楽章 
 アルベルト・リッツィオ指揮、イ・ムジチ・ディ・サン・マルコ

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