ON AIR REPORT オンエアレポート

11月4日 ポーランド出身の作曲家

2012.12.29


11月第1週は、「11月生まれの音楽家」を取り上げましたが、偶然にもポーランド出身の音楽家が目立ちます。ポーランドといえば、なんといってもフレデリック・ショパンが最も有名だと思いますが、ちょうどショパンの次の世代にあたるのが、1曲目のご紹介したカール・タウジヒ(1841〜1871)です。作曲家としてよりも、どちらかというと当時は技巧派ピアニストして知られていたようです。リストに師事したこともあり、演奏旅行に同行したりしています。惜しくも29歳という若さで亡くなっています。もう少し長生きしていれば、リストの後継者としてさらに活躍したかもしれませんね。

続いてご紹介したのはイグナツィ・パデレフスキ(1860〜1941)。作品は、残念ながらあまり多く遺っていませんが、作曲家、演奏家としてよりも、ピアノ学習者にとっては「パデレフスキ版」、とりわけショパン作品の校訂者として有名かもしれません。さらに注目されるのは、パデレフスキはポーランド独立後、首相と外務大臣を兼務したという経歴の持ち主です。ピアニストと政治家という両面で活躍した珍しい人物ですね。

そして最後は、ポーランドの現代作曲家の中から、11月生まれのクシシュトフ・ペンデレツキ(1933〜)をご紹介しました。日本では、52の弦楽器のための《広島の犠牲者に捧ぐ哀歌》(1960)が比較的よく知られているのではないでしょうか。ポーランドという国は、昔から大国に囲まれ、政治的社会的にも度重なる変革を遂げてきました。ショパンをはじめ今回ご紹介した3人の作曲家など、その時々に活躍した音楽家の作品に、社会情勢が反映されていたり、ある種の政治的なメッセージが含まれいたりするのも、ポーランド音楽の特徴の一つかもしれません。


【オンエア楽曲】
♪M1 ウェーバー=C.タウジヒ 《舞踏への勧誘》 
 ピアノ:イーゴリ・カメンツ
♪M2 イグナツィ・パデレフスキ《6つの演奏会用ユモレスク》 Op.14 より
 第1曲<古風なメヌエット>、第3曲<スカルラッティ風カプリス>
 ピアノ:イグナツィ・パデレフスキ
♪M3 クシシュトフ・ペンデレツキ 《ポーランド・レクエイム》より<魂を解きたまえ>
 指揮:アントニ・ヴィト、ワルシャワ・フィルハーモニー合唱団、
 ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団

10月28日 近代音楽② ロシア

2012.12.29


10月第4週は、前回のフランス近代音楽に続き、ロシアの近代音楽を取り上げました。1曲目はムソルグスキー(1839-1881)の展覧会の絵をご紹介しました。ラヴェルによるオーケストラ編曲を通して広く知られていますね。ムソルグスキーは、バラキレフ、キュイ、リムスキー=コルサコフ、ボロディンとともにロシア国民楽派の「五人組」として活躍しました。同時代にはチャイコフスキー(1840-1893)もいます。チャイコフスキーがヨーロッパ風(伝統的な西洋音楽)を継承したとすると、より民族的なものを取り入れようとしたのがロシア五人組といえるかもしれません。

続いてご紹介したリムスキー=コルサコフ(1844-1908)は「管弦楽法の大家」として知られ、色彩的で描写的な管弦楽法は、ロシア内外の近代作曲家たちに多大な影響を与えたと言われています。さらに次の世代に活躍したスクリャービン(1872-1915)はラフマニノフ(1873-1943)と同級生ですが、両者とも若い頃の作風はショパン風でとてもロマンティックな作品を書いています。お聴き頂いた《24の前奏曲》は明らかにショパンの影響を受けたものですが、そもそも前奏曲とは、古くはバッハから始まりショパン、ドビュッシー、ラフマニノフと少しずつ形を変えながら引き継がれてきたジャンルです。さらに時代が現代に近くなり・・・ショスタコーヴィチ(1906-1975)の前奏曲もご紹介しました。 1950年から51年にかけて作曲された本作は、スクリャービンやラフマニノフと続くロシアのピアノ音楽を継承する作品として評価されています。

こうして見てくると、ロシア近代はいろいろな作曲家が活躍していますね。西洋風のロマンティックな作品から、ロシア的・民族的な作品、そしてモダンな作品まで多種多様です。今回は触れられませんでしたが、ラフマニノフの作品にはやはりピアニストにとって重要な曲が多いですので、また折にふれて僕も演奏していきたいと思います。


【オンエア楽曲】
♪M1 ムソルグスキー《展覧会の絵》
  ピアノ:エフゲニー・キーシン
♪M2 リムスキー・コルサコフ《ピアノ協奏曲 作品30》
  ピアノ:ジェフリー・キャンベル、
  指揮:ギルバート・レヴァイン、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
♪M3 スクリャービン《24の前奏曲》より第2曲
  ピアノ:横山幸雄
 (「Voyage三鷹リサイタル・シリーズ第3回」三鷹市芸術文化センタのライブ録音より)
♪M4 ショスタコーヴィッチ《24の前奏曲》より第1番
  ピアノ:オリ・ムストネン

10月21日 近代音楽① フランス

2012.12.29


10月第3週は、フランス近代音楽の中から、いくつか作品をご紹介しました。1曲目にご紹介したのは、フランスの印象主義の旗手として活躍したドビュッシー(1862〜1918)。次の時代の新しい音楽を予感させる作品です。《映像(イマージュ)》は、全部で4集があり、第1集と第2集がピアノ曲となっています。本作は、「月が沈む」という音のない静寂を見事に描いた作品で、絶妙なハーモニー、響き、間合いからドュッシー特有のセンスが感じられるのではないでしょうか。

続いてドビュッシーの次の世代として活躍したプーランク(1899〜1963)をご紹介しました。ピアノ曲もたくさん書いていますが、室内楽の作品や歌曲にも素晴らしい作品が多いですね。その他オーケストラ作品やバレエ、オペラなど幅広いジャンルで作品を遺しています。「モダンな音を使った古典的な作風」とでもいえるでしょうか。新古典主義と呼ばれることもありますが、明快でありながら非常にロマンティックだったりウィットに富んだ作品など・・・魅力的な作曲家です。

そしてプーランクの少し先輩にミヨー(1892〜1974)という作曲家がいます。パリ音楽院で学んだ後、ブラジルに渡り様々な刺激をうけた音楽家ですが、ピアノ曲の中では2台ピアノの《スカラムーシュ》が広く知られています。お聴き頂いた演奏のクリスティアン・イヴァルディは僕のパリ音楽院時代の室内楽の師匠なんですが、聴きながら当時をなつかしく思い出しました。今回はフランスの近代音楽についてご紹介しましたが、また今後、別の地域や国を取り上げていきたいと思います。


【オンエア楽曲】
♪M1 ドビュッシー《映像 第2集》より<そして月は廃寺に落ちる>
演奏:横山幸雄(1994年のアルバム『イマージュ』より)
♪M2 プーランク《クラリネットソナタ》より第1楽章
 クラリネット:松本健司、ピアノ:横山幸雄
♪M3 プーランク《即興曲集第15番 〜エディット・ピアフに捧ぐ〜》  
 ピアノ:パスカル・ロジェ
♪M4ミヨー《スカラムーシュ》より第1曲
 演奏:クリスティアン・イヴァルディ、ノエル・リー

10月14日 ショパン命日

2012.12.29


10月第2週目は、今月17日が命日であるフレデリック・ショパンを取り上げ、ノクターンをご紹介しながらショパンの人生を振り返ってみました。ショパンは僕にとって、演奏活動の柱であり、これまでにも様々な演奏会を行ってきましたが、特に2010年、生誕200年というメモリアルイヤーを機に、3年にわたってショパンの全曲演奏会に取り組んでいます。今年は遺作(ショパンの死後発表された作品)をのぞき、ショパンの意志によって自ら作品番号を付けたピアノソロ作品147曲に、ピアノ協奏曲ソロヴァージョン2曲を加えた全149曲を15時間かけて演奏しました。今夜はノクターンの初期から後期の4作品をセレクトしてみましたが、ご紹介した演奏は、全て今年5月の全149曲演奏会のライブ録音よりお送りしました。

ノクターン全曲の中でも、第8番はもっともピュアで美しい作品ではないかと思います。20台後半の純粋な若者という要素をたぶんに残しつつ、静かで美しい作品に仕上がっています。この頃、ショパンはジョルジュ・サンドと出会い一緒に生活をしていくようになり、さらに作曲家として深みを増して行きます。その後30歳になろうという時期に書かれたのが第14番。病弱なショパンに対するサンドの献身的な支えによって、傑作が次々生まれていきます。ロマンティックで悲しげ、人の心を打つ美しいメロディ、ハーモニーが魅力的な作品です。決してしつこくなく、薄くも浅くもなく・・・ショパンの素晴らしいバランス感覚が現れているように思います。最後は、ショパン最晩年の作品、ノクターン第17番をご紹介しました。この作品は、僕にとってショパンの自分の人生に対する別れの曲のようなイメージがあります。僕は若い頃からショパンの晩年の作品が好きで、第18番、作品62-2のノクターンは今から20年以上前のショパンコンクールの第1次予選でも弾いた思い出の作品でもあります。ノクターンは、ピアノという楽器を通して聴けるショパンの心の中の歌、といえるかもしれません。

【オンエア楽曲】
♪M1 ショパン《ノクターン第1番》op.9-1
♪M2 ショパン《ノクターン第8番》op.27-2
♪M3 ショパン《ノクターン第14番》op.48-2
♪M4 ショパン《ノクターン第17番》op.62-1
 (演奏は横山幸雄、2012年のショパン全149曲演奏会より)

10月7日 パガニーニ特集

2012.12.29


10月第1週目は、今月生まれの作曲家の中からニコロ・パガニーニ(1782年10月27日〜1840年5月27日)をご紹介しました。パガニーニといえば19世紀を代表するヴァイオリニスト。圧倒的な技術力で「悪魔に魂を売った」と噂されるほどだったそうです。パガニーニの演奏や楽曲は、同時代の音楽家に多大な影響を与えています。リストは「自分がピアノのパガニーニになる!」と言ったり、ショパンは《パガニーニの思い出》という作品を作ってりしています。

パガニーニの影響力は絶大で、様々な作曲家がその主題によるパラフレーズや変奏曲を書いています。1曲目にご紹介した《ヴァイオリン協奏曲 第2番》の終楽章<鐘のロンド>も有名ですし、2曲目にお届けした《24のカプリース》の最終曲、第24番はいろいろな作曲家がテーマとして繰り返し用いています。リストが書いた変奏曲が大変有名ですが、その他にもラフマニノフ、ブラームス、ルトスワフスキなどもピアノ作品に編曲しています。同じテーマを基にしていても、作曲家それぞれの個性によって全く異なった作品になっていますので、聴き比べてみるのも面白いのではないでしょうか。


【オンエア楽曲】
♪M1 パガニーニ《ヴァイオリン協奏曲 第2番 ロ短調 作品7》より 第3楽章 
 指揮&ヴァイオリン:ジャン=ジャック・カントロフ、オーヴェルニュ室内管弦楽団
♪M2 パガニーニ 《24のカプリース》作品1 より 第24番 イ短調
 ヴァイオリン:五嶋みどり
♪M3 ブラームス 《パガニーニの主題による変奏曲》作品35 より 第24番 イ短調
 フランソワ・ルネ・ドュシャーブル

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