ON AIR REPORT オンエアレポート

12月23日 振返り特集①

2012.12.30


12月第4週は、私、横山幸雄の2012年の演奏活動を振り返ってみました。2012年の年明けはオールベートーヴェンプログラムによるジルベスターコンサートでした。ピアノ協奏曲全5曲、ピアノソナタ5曲、計10曲を演奏しました。そして2月には「3大ピアノ協奏曲の夕べ」でチャイコフスキー、ラヴェル、ラフマニノフのコンチェルトを演奏し、そのライブ収録のCDが10月にリリースされました。コンチェルトのライブ録音というと、かつて15年前にグリーグのピアノ協奏曲で行い、その後はベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を収録しましたが。今回久々のコンチェルトのアルバムでした。続いて5月には、今年で3回目となる「ショパン全曲演奏会」で、朝8時から夜11時までかけて、ショパン自身が作品番号をつけた147曲と、ピアノ協奏曲のソロバージョンを加えた全149曲を演奏しました。このショパン自身の手によるソロバージョンは、後にオーケストレーションするためにの試し書きという意味合いと、当時はオーケストラで演奏する機会はあまりなかったため、一人でも演奏できる形に書いたという二つの意味合いがあるのではないかと思います。来年の5月には、もう少し形を変えて再挑戦してみたいと考えています。そして今年8月には大阪でも初のショパン全曲演奏会を行いました。翌9月、東京オペラシティでオールリストプログラム第2弾ということで、今年は初めてハンガリー狂詩曲第2番も取り上げ、超絶技巧練習曲も追加公演という形で演奏しました。この9月のリサイタル、来年からはベートーヴェンを取り上げる予定です!また今年はドビュッシーの生誕150年ということで、いろいろな作品を取り上げました。そのほかにも各地でいろいろな演奏会をさせて頂きましたが、こうして1年を振り返ってみると、演奏活動と大学での教育活動と、今年も充実した年を過ごせたかなと思います!


【オンエア楽曲】
♪1チャイコフスキー《ピアノ協奏曲》より第2楽章
  指揮:小泉和裕、東京都交響楽団、ピアノ:横山幸雄
♪2ドビュッシー《子どもの領分》より第1曲、第2曲
  ピアノ:横山幸雄(10月三鷹リサイタルのライブ録音より)

12月9日 近代音楽③ 北欧・東欧

2012.12.30


12月第2週は、「近代音楽」の第3回目として、北欧・東欧の19世紀末から20世紀半ばにかけての音楽をご紹介しました。音楽の歴史をみていくと、それまではフランス、イタリア、ドイツといった西ヨーロッパの国々が中心となって発展してきたのに対して、ロシア・東欧・北欧などのいわゆる周辺諸国の作曲家が民族的な音楽語法を用いて独自の音楽をつくるなど、新たな展開をみせたのが近代の音楽の大きな特徴でもあります。

1曲目にご紹介したのは、フィンランドのジャン・シベリウス(1865-1957)。交響曲、交響詩、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ曲など多岐にわたる作品を遺しています。20代で<フィンランディア>が大成功をおさめ、ヨーロッパ中に名を知られるようになりました。全体的な作風は、どちらかというと後期ロマン派を踏襲していて、モダンな要素はほとんど感じられません。続いてご紹介したのはハンガリーのベーラ・バルトーク(1881-1945)。同じくハンガリー出身の音楽家であるリストにとってハンガリー音楽はジプシー音楽だったといえるかもしれません。一方でバルトークは民謡を収集するなど、土着の音楽の研究に力を注ぎ、自らの作品に取り入れました。バルトークは、作曲家の他ピアニストとしても活躍し、同時にピアノ教育にも熱心でした。子ども向けの教材も多く遺していますね。演奏された方も多いのではないでしょうか。そして最後はポーランドのカロル・シマノフスキ(1882-1937)をご紹介しました。ポーランドというとショパンの印象が強いですが、シマノフスキも初期の作風はショパンなどのロマン派の影響を受けています。その後はロシアのストラヴィンスキーやフランスのドビュッシーなど様々な音楽家の特徴が混在する時期を経て、晩年は民俗音楽の研究に傾倒し、その成果を自らの作品に反映させました。近代の音楽には、西ヨーロッパ以外の国々が政治的にも社会的にもどんどん台頭してきた時代背景や、各国の民族性が反映された作品が多くみられます。このように、西洋音楽が成熟したロマン派の時代を経て、より現代的、モダンな方向へと進んで行く様を見て行くのもまた面白いのではないかと思います。


【オンエア楽曲】
♪M1 シベリウス 《ピアノのための10の作品集》より第9曲 <ロマンス>
  ピアノ:エーロ・ヘイノネン
♪M2 バルトーク《弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽》より 第4楽章
  指揮:小澤征爾、サイトウ・キネン・オーケストラ
♪M3 バルトーク《舞踏組曲》より第6曲
  ピアノ:ゾルタン・コチシュ
♪M4 シマノフスキ《9つのプレリュード》より第2曲
  ピアノ:マーティン・ラスコー
♪M5 シマノフスキ 《20のマズルカ》 より第4曲
  ピアノ:マルク・アンドレ・アムラン

12月2日 12月生まれの作曲家:ベートーヴェン!

2012.12.30


12月第1週は、今月16日生まれのルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)を久々に特集しました。

1曲目にご紹介した悲愴ソナタは、ベートーヴェンの20代後半の作品。この頃は、聴覚障がいの自覚、それが治らないかもしれないという絶望・・・こうした悲劇的な思いがこの作品に反映されています。第1楽章は強烈な響きから始まるのですが、お聴き頂いた第2楽章はゆったりした音楽です。このよう構成は従来のピアノソナタからすると掟破りなんですね。

2曲目は月光ソナタ。このタイトルはベートーヴェン自身がつけたものではありませんが、この曲の雰囲気をぴったり表しているように思います。静かに始まり静かに終わる第1楽章。これも、それまでのピアノソナタの常識ではあり得なかったものです。もともとベートーヴェン自身は、この作品には「幻想曲風ソナタ」というタイトルを付けています。当時、幻想曲(ファンタジー)とは即興演奏のようなイメージで書かれる作品が多かったわけですが、ベートーヴェンの表現は、緻密に組み立てられる従来のソナタの枠組みに収まらなくなっていたのかもしれません。

3曲目の熱情ソナタでは、音楽のスケールがぐんと広がります。ちょうどこの頃、ベートーヴェンの支援者であるワルトシュタイン伯爵からフランスのエラール社のピアノが贈られています。ピアノという楽器がどんどん進化を遂げていた時代ですが、ベートーヴェンの表現したい音楽と、それをかなえるだけの能力を備えたピアノの製造とが相まって、ピアノの性能、可能性を広げていったともいえるでしょう

こうして代表的なピアノソナタを見てくると、それまでのピアノソナタの常識からすると型破りに思える作風が多く見られますが、それはただ自分が書きたいものを書いた結果、といえるかもしれません。革新的で想像力豊かな人であったため、どんどん新しいものが湧き出て来てしまう、という感じなのかなと思います。また、ベートーヴェンの音楽は、一つ一つの音に強い意志が込められていて、強いメッセージ性のある音楽です。演奏する側は、その独特の緊張感やエネルギーに押しつぶされないようにする必要がある。そうでないと、ベートーヴェンの本来の魅力も引き出せないのではと思います。


【オンエア楽曲】
♪M1 ベートーヴェン《ピアノソナタ第8番「悲愴」》より第2楽章
♪M2 ベートーヴェン《ピアノソナタ第14番「月光」》より第1楽章
♪M3 ベートーヴェン《ピアノソナタ第23番「熱情」》より第1楽章
  ピアノ:横山幸雄(2000年『ベートーヴェン12会』より)

11月25日 ゲストは京當侑一籠さん

2012.12.29


11月最終週は、牧阿佐美バレヱ団の京當侑一籠さんをゲストにお迎えしました! 京當さんは、小学校3年生のときにコーラスラインという映画を見たことがきっかけでバレエを始められたそうです。プロを意識したのは、少し遅めとのことですが18歳のとき。ドイツで研鑽積み、1997年より牧阿佐美バレヱ団に所属し、「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「ジゼル」をはじめ、代表的なバレエ作品に多数ご出演されています。

2013年1月14日には、サントリーホールで開催される「みずほフィナンシャルグループ 第24回 成人の日コンサート2013」の中で、京當さんはラヴェルの<ボレロ>にご出演されるそうです。ボレロといえば、ラヴェルの代表作であり、バレエだけでなく、演奏会でもよく取り上げられる作品です。同一のリズムが刻まれる中、同じ旋律が様々な楽器で色合いを変えながら繰り返されていく作品ですが、ベジャールの振り付けで踊られることも多いですよね。今回は牧阿佐美さんによる振り付けで、フルオーケストラを舞台上にあげて、その前で6人のダンサーたちが踊るという構成になっているそうです。どんなボレロになるのでしょうか?面白そうですね!

それ以外にも三浦文彰さんによるラヴェル《ツィガーヌ》(オーストラ版)や《迷宮のオペラ座》(原作:ガストン・ルルー 小説「オペラ座の怪人」)など、盛りだくさんな演奏会です。今年で24回目となる成人の日コンサート。ご都合があえば、皆様ぜひ足をお運びください。

ラジオ出演は今回が初めてという京當さん。僕はバレエのことはよく分からないのですが、とても分かりやすく説明して頂けて、楽しいひとときでした。ありがとうございました!


【オンエア楽曲】
♪M1 THE BLUE HEARTS <青空>
♪M2 ラヴェル《ボレロ》
   指揮:シャルル・デュトワ、モントリオール交響楽団


【演奏会情報】
●「みずほフィナンシャルグループ 第24回 成人の日コンサート2013」
日時:2013年1月14日(月・成人の日)、午後3時開演
場所:(東京)サントリーホール
曲目:
<第1部>
ラヴェル「ツィガーヌ」オーストラ版(ヴァイオリン:三浦文彰)
ラヴェル「ボレロ!」(牧阿佐美バレヱ団 )
<第2部>
「迷宮のオペラ座」
〜原作:ガストン・ルルー 小説「オペラ座の怪人」
指揮:大友直人/管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
出演:朝海ひかる/田代万里生/吉原圭子/加耒徹

11月11日&18日 ゲストは武藤敏樹さん

2012.12.29


11月第2週&第3週は、僕も日頃から大変お世話になっている音楽プロデューサーの武藤敏樹さんをゲストに迎えてお送りしました。

【武藤敏樹さんのプロフィール】
4歳からピアノをはじめ、第31回全日本学生音楽コンクールピアノ部門中学校の部全国第一位。
東京藝術大学付属高校を経て、東京藝術大学音楽学部ピアノ科卒業。
(株)CBSソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)入社後、一貫してクラシック制作部門に勤務。
横山幸雄のほぼ全タイトルのCDの他、小澤征爾、中村紘子、宮本文昭、樫本大進、山形由美、木村大他多数のアーティストのCDプロデュースをメインに、170万枚のヒットとなった「イマージュ」等のコンピレーションアルバムなどの制作にも携わってきた。
プロデュースした宮本文昭の3枚のCDで「日本レコード大賞・企画賞」を受賞、横山幸雄:リスト超絶技巧練習曲全集で「国際F・リスト賞レコードグランプリ最優秀賞」を受賞。同ベートーヴェン・ソナタ全集で「文化庁芸術祭優秀賞」を受賞他、レコード芸術誌“特選”等多数のCDで受賞。
現在はソニー・ミュージックダイレクトにて企画営業プロデューサー。
「食」の趣味が高じて、日本ソムリエ協会認定「ワインエキスパート」、SSI認定「利き酒師」の資格を持つ。趣味はピアノ、料理、シーカヤック、スノーボード。
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武藤さんには、ソニーから出している僕のほぼ全てのCDのプロデュースを担当してもらっています。初めてタッグを組んだ作品は1993年の『エチュード全集』。早いものでもう20年来の付き合いですね。その間に30タイトル近いCDを一緒に作ってきました。仕事以外でも一緒にワインを飲み、テニスをし、海で遊び・・・と公私ともに大変お世話になっています!

レコーディングの際、今でこそお互いあうんの呼吸が出来上がっていて、武藤さんには僕流のやり方を理解して頂いていますし、僕もどんな音に仕上げるか等、武藤さんに完全にお任せしていますが、1枚目のアルバムの頃を思い起こすと当時は録り始めるまでに2日かかったりなんてこともありましたね。普通はテイク1、テイク2と録っていくそうですが、僕はスロースターターで、でも一度スイッチが入ると延々と弾き続けてしまうんですよね。一度は機材がオーバーヒートして壊れたこともある(笑)といっても、今年2月の「横山幸雄デビュー20周年記念公演 3大ピアノ協奏曲の夕べ」のように、オーケストラと一緒、かつライブ録音の場合は、勝手が違います。ライブ録音は一発勝負で、素晴らしい瞬間を切り取れる一方、リスクも非常に高いため、緊張感がありプレッシャーもかかります。あの時もリハーサルと本番の2テイクのみで編集をして頂きました。

実は来年の春にはリストの新譜をリリース予定で、そちらの方も先日上野学園の石橋メモリアルホールでレコーディングを終え、あとは武藤さんにお任せしているところです。ロ短調ソナタを中心としたアルバムになる予定です。また詳細が決まりましたら番組でもご紹介していきたいと思いますので、どうぞ楽しみにしていてください。

武藤さんとは話も盛り上がり、つい脱線してしまうこともありましたが・・・最後にレコーディング・プロデューサーにとって大切にしていることとして、「演奏家が持っているポテンシャル、才能、魅力をいかに引き出すか、それにつきる。」とのお答えを頂きました。レコーディングに入ってからも大切だが、それまでのディスカッションや人間関係がより大切。やはりお互いの信頼関係が重要で、その演奏家が一番快適に演奏できるように環境を整えること、そして演奏家にとって、さらに最終的にはリスナーにとって喜ばれる作品づくりを心がけているそうです。

武藤さんはピアニストなみに弾ける方で、何より耳が確か。僕はそこに全幅の信頼を置いていますし、軸がぶれないんですよね。頑固だし(笑)。お互いポリシーを貫くので、実はぶつかることもありますよね。より良いものを作ろうという前向きなディスカッションなわけですが。また今後とも一緒に作品づくりをしていければと思います。2週にわたり、ご出演ありがとうございました!


11月11日【オンエア楽曲】
♪M1 <マイ・フェイバリット・シングス> (JR東海CM曲)
   クラリネット:赤坂達三(2001年『image2』より)
♪M2 ショパン《エチュード op.10》より第1番
   ピアノ:横山幸雄(1993年『エチュード全集』より)
♪M3 ショパン《ノクターン第2番》op.9-2
   ピアノ:横山幸雄(1997年『ノクターン全集』より)

11月18日【オンエア楽曲】
♪M1 <グリーンスリーブス>
   Duo Prima(磯絵里子&神谷未穂)
♪M2 チャイコフスキー《ピアノ協奏曲第1番 作品23》より第3楽章
   ピアノ:横山幸雄、指揮:小泉和裕、東京都交響楽団


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