ON AIR REPORT オンエアレポート

2月3日 クライスラー&ハイフェッツ

2013.03.01


 2月第1週は、2月に関連する音楽家の中から、同じ2月2日に生まれた歴史的なヴァイオリン奏者二人を中心に取り上げ、エピソードや作品、そしてピアノとヴァイオリンの関係についてお話していきました。1曲目はヴァイオリン協奏曲の代表曲、メンデルスゾーン晩年の作品をハイフェッツの演奏でご紹介しました。この作品は、僕が昔もっともよく聴いたレコードの一つで、ハイフェッツの緊張感ある演奏に魅了されていました。ハイフェッツは1901年2月2日ロシアに生まれ、1987年12月10日に亡くなった20世紀を代表するヴァイオリニストであり、「ヴァイオリニストの王」と称されるほどでした。3歳でヴァイオリンを始め、7歳でメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏し、デビューを果たしています。卓越した演奏技術で同時代のヴァイオリニストにとっても驚異的な存在であったと言われています。
 一方、クライスラーは、1875年2月2日に生まれたオーストリア出身の世界的ヴァイオリニストであり、作曲家としても知られています。後にフランスを経てアメリカ国籍となり、1962年に亡くなりました。3歳の頃からヴァイオリンを習い始め7歳で特例としてウィーン高等音楽院に入学、10歳にして首席で卒業。その後、パリ高等音楽院に入学し12歳にして首席で卒業したという、まさに神童ぶりを発揮しています。13歳でデビューし、大成功を収めた後、各地で演奏活動を行いました。クライスラーの作品は、旋律が親しみやすく覚えやすく、懐かしさを感じさせるような小品が多いですね。<愛の喜び><愛の悲しみ><美しきロスマリン>などが有名です。
 ヴァイオリンという楽器は、ソロでもオーケストラでも活躍しますし、ヴァイオリンとピアノのための作品も数多くあります。最後にご紹介したのは、ピアノとヴァイオリンという楽器が互いに対等で丁々発止のやり取りが繰り広げられる「ヴァイオリン・ソナタ」の中から、フランクの作品をお聴き頂きました。矢部君と16年ほど前にレコーディングした作品ですが、今でもよく二人で演奏しています。ヴァイオリンは、あんなに小さいにも関わらず音量もピアノに負けていませんし、名手の手にかかると素晴らしい表現力を発揮する楽器です。僕にとってヴァイオリンという楽器は特別な存在で、子どもの頃からとても好きで、実は何度かチャレンジしたことがあります。でも顎と肩に楽器を挟むあの独特のポーズがどうしても出来ないんですよね・・・もし僕がヴァイオリンという楽器を選択していたら、今はもう音楽をやっていなかったかもしれません。


【オンエア楽曲】
♪M1 メンンデルスゾーン 《ヴァイオリン協奏曲》より第1楽章
  演奏:ヤッシャ・ハイフェッツ
  指揮:トーマス・ビーチャム、ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
♪M2 クライスラー《愛の悲しみ》
  ヴァイオリン:イツァーク・パールマン、ピアノ:サミュエル・サンダース
♪M3 フランク《ヴァイオリン・ソナタ》より第2楽章
  ヴァイオリン:矢部達哉、ピアノ:横山幸雄

【今後の演奏会予定】

◎横山幸雄 3大作曲家を弾く ピアノリサイタル
日時:3月3日(日)、午後1時半開演〜4時終演予定
場所:横浜みなとみらいホール
曲目:ベートーヴェン:ピアノソナタ「テンペスト」「熱情」、
   ショパン:バラード全4曲 / リスト:ソナタロ短調

◎ショパンとドビュッシー、ラフマニノフのチェロ・ソナタ (Voyage 第5回)
日時:3月6日(水)、夜7時15分開演
共演:趙静
場所:東京 三鷹市芸術文化センター 風のホール

◎群馬交響楽団定期演奏会
日時:3月 15日 (金)、夜7時開演
場所:すみだトリフォニーホール
曲目:ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 指揮:ダニエル・クライナー

1月27日 名曲の初演

2013.03.01


1月第4週目は、名曲の「初演」(はじめてその曲が公の場で演奏されること)にまつわるエピソードをいろいろとご紹介しました。今でこそ名曲として知られる作品も、初演はうまくいかなかったという例は少なくありません。1曲目にご紹介したのはラフマニノフの《交響曲第2番》。この作品はラフマニノフ自身の指揮で初演され、大きな成功をおさめましたが、実はこの10年ほど前に作曲された交響曲第1番は大失敗に終わったことが知られています。そのショックからラフマニノフは精神的に落ち込み、その後しばらく作曲活動を休止してしまうほどでした。その精神的痛手から立ち直るきっかけになったのが、ピアノ協奏曲第2番であり、今回ご紹介した交響曲第2番の成功でした。
 また同じくロシア出身の作曲家、チャイコフスキーやストラヴィンスキーも初演時に酷評されてしまいました。チャイコフスキーの《ヴァイオリン協奏曲》は今でこそ押しも押されぬ名曲で、演奏される機会も多い作品ですが、なぜか初演時は受け入れられなかったようですね。さらに現代にいくとストラヴィンスキーの《春の祭典》なども、記録的な大失敗に終わったことが知られています。音楽史的にも重要な作品なわけですが、当時の聴衆にはあまりに前衛的すぎたのかもしれません。強烈なインパクトを与えたことは間違いないでしょう。
 不評の要因は様々あるでしょうが、やはりそれまで誰もやらなかったこと、新しい事へ挑戦した結果、そこに聴衆がついて行けなかったということが大きいのではないでしょうか。その他、初演に向けての準備不足など、演奏自体がうまくいかなかったことなどもあるでしょう。このように今でこそ名曲として知られる作品の中にも、初演が不評だったものは案外と多いようです。しかし、初演が不評でそのまま忘れ去られている作品の方がもっと多いと思います。音楽作品は作曲家から一度生み出された以上、その後どのような方向に歩んで行くか・・・それは作品自身のもっている運命といえるかもしれません。


【オンエア楽曲】
♪M1 ラフマニノフ《交響曲第2番》より第3楽章
  指揮:マリス・ヤンソンス、フィルハーモニア管弦楽団
♪M2 チャイコフスキー《ヴァイオリン協奏曲》より第1楽章
  ヴァイオリン:アンネ・ゾフィー・ムター、指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン、
  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
♪M3 ストラヴィンスキー《春の祭典》より<いけにえの踊り>
  指揮:ズービン・メータ、ニューヨーク・フィル・ハーモニック


【今後の演奏会予定】

◎横山幸雄 3大作曲家を弾く ピアノリサイタル
日時:3月3日(日)、午後1時半開演〜4時終演予定
場所:横浜みなとみらいホール
曲目:ベートーヴェン:ピアノソナタ「テンペスト」「熱情」、
   ショパン:バラード全4曲 / リスト:ソナタロ短調

◎ショパンとドビュッシー、ラフマニノフのチェロ・ソナタ (Voyage 第5回)
日時:3月6日(水)、夜7時15分開演
共演:趙静
場所:東京 三鷹市芸術文化センター 風のホール

◎群馬交響楽団定期演奏会
日時:3月 15日 (金)、夜7時開演
場所:すみだトリフォニーホール
曲目:ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 指揮:ダニエル・クライナー

1月13日&20日 成人の日スペシャル

2013.01.31


1月14日の「成人の日」にちなみ、2週にわたって有名作曲家が二十歳の頃に作曲した作品とエピソードをご紹介していきました。

1週目には、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトを、2週目にはシューマン、メンデルスゾーン、ブラームスをそれぞれ取り上げました。歴史に名を残す作曲家たちはどんな二十歳だったのでしょう?幼い頃から「早熟の天才」として活躍していた音楽家もいれば、比較的遅く(といっても10代ですが)に活動をはじめた音楽家もいました。二十歳に作曲した作品を聴いてみると、総じて、二十歳という若々しさもある一方で、すでにそれぞれの作曲家の個性が濃厚に表れている・・・そんなことを再確認しました。それぞれの作曲家が後に作曲した名作を理解するためにも、若い頃の原点を知ることも大切だと思います。

【1月13日 オンエア楽曲】
♪M1 モーツァルト《 ピアノ協奏曲第6番K.238 》より第1楽章
  ピアノ:内田光子、指揮:ジェフリー・テイト、イギリス室内管弦楽団
♪M2 ベートーヴェン《ピアノ協奏曲第2番》より第1楽章
  ピアノ:横山幸雄、ジャパン・チェンバー・オーケストラ
♪M3 シューベルト《ピアノ・ソナタ第4番》より第1楽章
  ピアノ:内田光子

【1月20日 オンエア楽曲】
♪M1 シューマン《 アベッグ変奏曲 》
  ピアノ:ホセ・カルロス・コカレッリ
♪M2 メンデルスゾーン《無言歌集》より第6曲 <ベネツィアの舟歌>
  ピアノ:アンドラーシュ・シフ
♪M3 ブラームス《ピアノ・ソナタ 第3番 作品5》より第1楽章
  ピアノ:ラドゥ・ルプー

1月6日 2013年の演奏会予定

2013.01.31


2013年第1回目は、今年メモリアルイヤーを迎える作曲家の簡単なご紹介と、私・横山幸雄の2013年の演奏会予定についてご紹介しました。

なんといっても、今年2013年は、ロマン派オペラの2大巨頭であるワーグナーとヴェルディが生誕200年を迎えます!すでにいろいろなところで特集が組まれたり、関連企画が目白押しですね。その他には、プーランク没後50年、プロコフィエフ没後60年、ラフマニノフ没後70年などもあります。また機会を改めてじっくりご紹介していきたいと思います。

さて、今年の演奏会予定ですが、大きな柱になるものでは、毎年5月の連休に行っている東京オペラシティでの演奏会。今年もやります!5月3日(金)です。ショパン生誕200年の2010年から3年にわたり、全曲演奏を行ってきましたが、今年は、少し作品を絞ることで、ショパンの生涯をじっくり見てもらいたいと考えています。去年弾いたピアノソロでのコンチェルト2曲にさらにプラスして、ショパンが若い頃に書いた、オーケストラと一緒に演奏するための4作品を取り上げます。演奏される機会は決して多くありませんが、若き日のショパンの魅力がたっぷりつまった作品です。僕自身、はじめての試みになります。その他今回は、ジャンルごとにまとめて各部を構成しました。朝10時開演、作品2の《ラ・チ・ダレム・ラ・マノ》でスタートします。

そして、秋の演奏会は、今年から数年かけてベートーヴェンを軸に進めて行く予定です。まだ少し先の話ですが、2020年にはベートーヴェン生誕250年を迎えます。そこをめがけて、大きなシリーズを組んでいきます。初回の今年は、初期の作品を年代順に取り上げ、その他関連する他の作曲家の作品を加えて大きく3部構成。午前11時から夕方までの長い演奏会になります!その他、今年も日本各地でたくさんの演奏会を予定しています。詳しい情報はまた番組でご紹介していきたいと思います。2013年もよろしくお願いいたします!


【オンエア楽曲】

♪M1 ワーグナー 歌劇《マイスタージンガー》より第1幕への前奏曲
指揮:ダニエル・バレンボイム、シカゴ交響楽団

♪M2 ピアノ協奏曲第3番より第2楽章
指揮:小泉和裕、東京都交響楽団、ピアノ:横山幸雄

12月30日 振返り特集②

2013.01.31


2012年最後の放送では、これまで番組に来て下さったゲストとの共演の中から、横山幸雄プロデュースの作品をご紹介しました!

ショパンの原曲に基づくものとして、鮫島有美子さん(朗読)とのノクターン、そして平原綾香さん(歌)とのノクターンを続けてお届けしました。鮫島さんとの共演は、当時パリのサロンでショパンがピアノを弾き、横でジョルジュ・サンドが演奏を聴き、その周りにはリストやドラクロワなど当時一流の文化人たちが集まっていた・・・そんなサロンの様子を想像しながら、僕自身が台本を書いたものを鮫島さんに朗読して頂き、それに合わせてピアノ演奏しました。平原さんとは、ノクターンの中でもとりわけ有名な「遺作のノクターン」に、平原さんが歌詞を付け、そこに僕が即興的に伴奏をつけて共演しました。そして最後は、僕が10年ほど前に作曲したヴァイオリン・ソナタで、川久保さんとの共演をお届けしました。弾く人によって出てくる音楽が少しずつ違うのですが、演奏者によって時には新しい発見もあり、作曲した側としては、それが楽しみでもあります。

その他、この番組では折にふれいろいろなゲストに来て頂いて、トークだけでなく音楽共演もご紹介しています。普段はなかなか共演する機会のない、ジャンルを超えたゲストと一緒に何か出来るのも、この番組ならではの醍醐味です。またこれからも、いろいろな分野の方々とも共演できたらと思います!

【オンエア楽曲】

♪M1 ショパン《ノクターン第8番 作品27-2》
  朗読:鮫島有美子、ピアノ:横山幸雄

♪M2 ショパン《ノクターン》
  歌:平原綾香、ピアノ:横山幸雄

♪M3 横山幸雄《ヴァイオリン・ソナタ》より第2楽章
  ヴァイオリン:川久保賜紀、ピアノ:横山幸雄

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