ON AIR REPORT オンエアレポート

6月23日 「作品23」

2013.07.07


6月第4週は、少し趣向を変えて、23日にちなみいろいろな作曲家の「作品23」をご紹介しました。作品番号といえば、「Op.(オーパス)○○」と呼ばれるものですが、一般的に、作曲年代順に付けられるものですが、出版順となることも多くあります。作品番号を付けなかった作曲家も多く、その場合は後の学者が整理番号を付けていることもあります。作品番号が用いられ始めたのは、バロック時代と言われていますが、そもそも当時の作曲家の多くは、「自分の作品」という意識も薄く、そもそも「作品」自体の考え方が今とは異なります。そのため、「番号を付けて整理する」必要もなく、楽譜として出版される際に便宜上付けられていました。実際のところ作品番号を自ら付け始めたのは、ベートーヴェン以降の作曲家たちと言えるでしょう。

さて、「作品23」ときいてまず頭に浮かぶのは、ショパンではないでしょうか。ショパンにとって、《バラード第1番 作品23》は、故郷との別れ、そして新天地パリでの活躍、初のバラード・・・人生の一つの節目となった作品といえるでしょう。ショパンの作品の中でも最も長い時間をかけて推敲した作品といわれています。その他、ラフマニノフやこの番組では初めて取り上げましたが、コルンゴルトの作品23もお聴き頂きました。

今回はご紹介しきれませんでしたが、他にも「作品23」をみてみますと・・・チャイコフスキー《ピアノ協奏曲第1番》、グリーグ《ペール・ギュント》、シューマン《4つの夜曲》 (シューマンはop,1からop.23まで全てピアノ曲)、ベートーヴェン《ヴァイオリン・ソナタ 第4番》、ドヴォルザーク 《ピアノ四重奏曲 第1番》など、代表的な1曲からマイナーな作品まで様々ですが、作品1から始まり20番台に入るのは、おおよそ作曲家が20代から30代前半にあたる場合が多いようです。そのため、ちょうど人生の転機、作曲家としての本格的な歩みの時期と重なるのかもしれませんね。


【オンエア楽曲】
♪M1 ショパン《 バラード第1番 op.23 》
  ピアノ:横山幸雄(「プレイエルによるショパン・ピアノ独奏曲全曲集5」より)
♪M2 ラフマニノフ《前奏曲 ト短調 op.23-5 》
  ピアノ:横山幸雄 (三鷹ヴォヤージュ・シリーズ第3回のライブ録音より)
♪M3 コルンゴルト《2つのヴァイオリン、チェロ、左手ピアノのための組曲 op.23 》より第5曲
  ピアノ:レオン・フライシャー、ヴァイオリン:ジョゼフ・シルヴァースタイン、ジョエル・スミルノフ、チェロ:ヨーヨー・マ 

6月16日 グリーグ特集

2013.07.07


6月第3週は、6月生まれの作曲家の中からノルウェーのエドヴァルド・グリーグ(1843〜1907)を取り上げました。グリーグ初期の傑作であり、ピアノ協奏曲史上でも大変重要な作品である《ピアノ協奏曲》、そしてグリーグのピアノ作品の核となっている《叙情小品集》、さらにグリーグ自身による編曲作品などをお聴き頂きました。

僕はこのグリーグのピアノ協奏曲は、小学校時代に聴いて、かっこいいなあと思ったんですが、実はこの作品、そんなに音符が多いわけではなく、分厚い和音の響きもなく、ラフマニノフやリストのような派手な動きもなく・・・最低限のもので最大限の効果を生んでいる作品だと思います。そこがかえって北欧の音楽特有の透明感のようなものを感じさせるのではないでしょうか。

グリーグが活躍した19世紀のヨーロッパでは、それまで音楽の中心地であったドイツやフランス、イタリア以外の国・地域から、独自の個性をもつ作曲家たちが続々と名乗りを挙げるようになり、いわゆる「国民楽派」と呼ばれる音楽が台頭してきた時代です。各地で個性豊かな音楽が花開いた音楽史上、もっとも華やかな時代ともいえるでしょう。


【オンエア楽曲】
♪M1 グリーグ 《 ピアノ協奏曲 イ短調 op.16 》より第1楽章
  指揮:ネーメ・ヤルヴィ、エーテボリ交響楽団、ピアノ:横山幸雄
♪M2 グリーグ 《 叙情小品集 第3集 op.43 》より<蝶々>
  ピアノ:横山幸雄
♪M3 グリーグ 《 2つの悲しき旋律 op.34-2 》より<過ぎにし春>
  ピアノ:横山幸雄

6月9日 ディーリアス特集

2013.07.07


6月第2週は、イギリスの作曲家、フレデリック・ディーリアス(1862〜1934)を特集しました。2012年に生誕150周年、来年2014年には没後80年を迎えます。奇しくも同じイギリスの作曲家、エルガー、ホルストも同年に亡くなっているんですね。ディーリアスは、ドイツ人の両親のもとイギリス生まれ、その後北欧、アメリカ、イギリス、フランスの各地で過ごしていますが、様々な文化の影響が、作品にも現れているように思います。昨年生誕150周年を迎えたこともあり、静かなブームとなっているディーリアスですが、その音楽の普及に務めたのが同じイギリス人指揮者、ビーチャムでしょう。彼はディーリアスの作品を積極的に取り上げ、音源も多く遺しています。代表的な作品から晩年のピアノ曲までお聴き頂きましたが、なにか強烈なメッセージがある作品というよりも、自然と流れて行くような、そんな印象を僕は持ちましたが、皆さんはいかがでしたか?


【オンエア楽曲】
♪M1 ディーリアス《小管弦楽のための2つの小品》より第1番 <春を告げるかっこうを聞いて>
  指揮:トーマス・ビチャム、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
♪M2 ディーリアス 《チェロとピアノのためのロマンス》
  ピアノ:ベンクト・フォシュベリ、チェロ:ジュリアン・ロイド・ウエッバー 
♪M3 ディーリアス《3つの前奏曲》
  ピアノ:チャールズ・アブラモヴィチ

6月2日 ベートーヴェン特集②

2013.07.07


6月第1週は、「ベートーヴェン特集第2回」をお送りしました。前回、第1回目は10代前半の作品から24歳で作曲した記念すべき「作品1」までをご紹介しました。音楽の歴史において、一つの重要なターニングポイントとなったベートーヴェン。第2回の特集は、ベートーヴェンが遺したピアノ曲の中でも、最も重要なジャンルといえる「ピアノ・ソナタ」から初期の作品をご紹介しました。ベートーヴェンはボン時代、ネーフェに師事した成果として、13歳で《3つの選帝侯ソナタ》WoO.47を作曲、出版していますが、作品番号付きの本格的なソナタに着手したのは1792年にヴィーンでハイドンに師事するようになってからです。24歳で作品1を発表後、翌年作品2としてピアノ・ソナタを3つ書き、師匠であったハイドンに献呈しました。今回は、その作品2の3つのソナタをそれぞれお聴き頂きました。ベートーヴェンは、作品番号付きの本格的な作品を発表するのは20代半ばになってからと比較的遅めのスタートですが、それまでの先輩モーツァルトや師匠のハイドンの作品に比べると、その規模、内容の密度、ともにはるかにスケールの大きなものになっています

僕にとって、ベートーヴェンはショパンと並び演奏の柱でもありますが、1998〜1999年にかけて全12回シリーズのピアノソロ全曲の演奏会を開催しました。それらをライブ収録したものが『ベートーヴェン12会』(12枚組)で、2000年にリリースされています。また2002年からは、ベートーヴェンピアノ協奏曲全曲演奏会をジャパン・チェンバー・オーケストラと行い、2005年8月には全5曲を同オーケストラと一夜で演奏するといった試みも行っています。そして今年2013年から、2020年のベートーヴェン生誕250年に向けて「ベートーヴェン プラス」というシリーズをスタートさせます。ベートーヴェンの作品のみならず、ベートーヴェンの影響を少なからず受けた後世の作曲家の作品も含めて演奏する予定です。どうぞお楽しみに!


【オンエア楽曲】
♪M1 ベートーヴェン 《 ピアノ・ソナタ 第1番 op.2-1 》より第1楽章
  ピアノ:横山幸雄
♪M2 ベートーヴェン 《ピアノ・ソナタ 第2番 op.2-2 》より第3楽章
  ピアノ:横山幸雄
♪M3 ベートーヴェン 《ピアノ・ソナタ 第3番 op.2-3 》より第4楽章
  ピアノ:横山幸雄
(2000年のアルバム:「ベートーヴェン12会」より)

5月26日 雨の音楽

2013.07.07


5月最終週は、これからの梅雨本番に向けて、「雨」にまつわる音楽をお届けしました。音楽の中には、物語や風景、自然からインスピレーションを受けて作曲された作品があります。その作曲方法、表現方法は様々ですが、「雨」や「海」など、「水」に関連した作品は比較的多く遺されています。同じ「雨」といっても、雨音をモティーフにしたもの、雨の様子を描写したもの、または雨にまつわる思い出や印象に基づくものなどいろいろありますね。また、日本と外国では雨のイメージも異なるかもしれません。今夜はいろいろな「雨」の音楽をお聴き頂きましたが、何か気になる作品はありましたか?


【オンエア楽曲】
♪M1 ドビュッシー《版画》より<雨の庭>
  ピアノ:セドリック・ティベルギアン
♪M2 武満 徹 《雨の樹 素描》
  ピアノ:小菅 優
♪M3 ブラームス 《ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」》より第1楽章  
  ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ、ピアノ:ミシェル・ベロフ

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