ON AIR REPORT オンエアレポート

2月16日&23日 ロシア特集

2014.04.15


2月後半は、ソチ・オリンピック開催の地、ロシアに注目し、2週連続で「ロシア音楽」を特集してお送りしました。

後期ロマン派に当たる19世紀後半になると、音楽先進国であるドイツを中心とした西ヨーロッパのロマン派音楽が周辺諸国へ波及し、その国々の民族的要素と融合した新しい音楽様式が生まれました。
この自国の民族主義を取り入れた新しい音楽様式を「国民楽派」または「民族楽派」と呼びます。この国民楽派の勢いは、まずロシアへ押し寄せます。そこで活躍したのが「近代ロシア音楽の父」と呼ばれるグリンカです。グリンカの生み出したこの新しい音楽様式が、ロシア国民楽派の基礎となり、その後ロシア5人組(ボロディン、キュイ、バラキレフ、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフ)に受け継がれました。一方で、それまでの西洋音楽の伝統的な流れを受け継いだのが、チャイコフスキーです。チャイコフスキーの師匠であったアントン・ルビンシュタインはショパンやリストとも面識があり、ピアニストとしても活躍しました。ヨーロッパの音楽的伝統をロシアに根付かせるために貢献をし、1862年にロシア最初の専門的な音楽教育機関であるサンクトペテルブルク音楽院を創設しました。
 そして、もう少し近代になると、スクリャービン(1872-1915)やラフマニノフ(1873〜1943)さらにその後にはイーゴリ・ストラヴィンスキー(1882〜1971)やショスタコーヴィチ(1906-1975)などが続きます。今回2週にわたり、いろいろな作品をご紹介しましたが、ロシアの民族色を前面に出した音楽と、どちらかというとロマン派の伝統的な流れを重視し、民族色は控えめな音楽とがあったように感じましたが、みなさんはいかがでしたか?


【オンエア楽曲】
○16日分
♪M1グリンカ:歌劇《ルスランとリュドミラ》より 序曲
   指揮:レナード・バーンスタイン、ニューヨーク・フィルハーモニック
♪M2ムソルグスキー:《展覧会の絵》より<プロムナード><グノーム>
   ピアノ:ウラディーミル・ホロヴィッツ
♪M3チャイコフスキー:《ピアノ協奏曲 第1番》より 第1楽章
   ピアノ:横山幸雄、指揮:小泉和裕、東京都交響楽団

○23日分
♪M1スクリャービン:12の練習曲集 Op8より 第12曲
   ピアノ:横山幸雄
♪M2ラフマニノフ:《練習曲集「音の絵」》より 第5曲
   ピアノ:横山幸雄
♪M3ストラヴィンスキー:《火の鳥》より 終曲
   指揮:ピエール・ブーレーズ、ニューヨーク・フィルハーモニック
♪M4ショパン:《ワルツ 第1番「華麗なる大円舞曲」》
   ピアノ:横山幸雄

2月9日 アルベニス

2014.04.15


2月第2週は、スペインのアルベニス(1860〜1909)を特集してお送りしました。なんといっても
組曲《イベリア》がよく知られていますね。《イベリア》は、3曲ずつ4巻に分かれて出版されました。全12曲からなる本作は、スペイン音楽のみならず、近代ピアノ音楽の最高峰のひとつに数えられるのではないでしょうか。アルベニスは、初演から約3ヶ月後に亡くなっており、この組曲《イベリア》が事実上、最後の作品となっています。幼い頃から天才的なピアニストとして知られていたアルベニスですが、その生涯は破天荒だったようで、様々なエピソードが伝えられています。素直な少年というよりは、好奇心旺盛で、気の向くままに出かけてしまうような子どもだったようです。
でも、この放浪癖(幼少よりスペイン国内のみならずヨーロッパ各地を転々とした)のおかげで
各地の民族音楽を吸収し、それが自然と音楽作品へ反映されているのかもしれませんね。
オーケストラ作品も遺していますが、やはりピアノ作品が多く、当時からヨーロッパの音楽界では高い評価を受けています。またピアノ曲の多くが、スペインギターの要素を合わせもち、実際ギター編曲版で演奏される機会も多い作曲家としても知られています。今回はアルベニスの代表作品2曲とスペインからインスピレーションを得て作られたピアノ曲をご紹介しました。

【オンエア楽曲】
♪M1アルベニス:組曲『イベリア』より 「ヘレス」
   ピアノ:アリシア・デ・ラロチャ
♪M2アルベニス:『スペイン組曲』より 「セビリア」
   ギター:ジョン・ウィリアムス
♪M3ドビュッシー:『前奏曲 第2巻』より 「ヴィーノの門」
    ピアノ:横山幸雄
   (2012年6月「ヴォヤージュ第2回」三鷹芸術文化センターでのライブ録音より)

2月2日 メンデルスゾーン

2014.04.15


2月第1週は、2月3日生まれのメンデルスゾーン(1809-1847)を取り上げました。メンデルスゾーンといえば、モーツァルトと並び称される「早熟の天才」として知られます。大変裕福な家庭に生まれ、音楽だけでなく、語学、芸術などあらゆる分野の才能に恵まれていたといいます。
実は多作の作曲家で、38年の生涯で断片を含めると750曲以上も遺していると言われています。作曲家、指揮者として活躍した以外、音楽史上の功績も見逃せません。それまで独立していなかった指揮者という職務を確立し、指揮法の創始者として、弟子たちに指揮法を教えたことも知られています。また重要な業績として、当時すでに忘れ去られていた大バッハの楽譜を自ら発掘してその価値を見抜き、1829年《マタイ受難曲》を再演し、その価値を世間に知らしめた点が挙げられます。
ご紹介した作品は、メンデルスゾーンのもっとも有名な作品の一つに挙げられるヴァイオリン協奏曲、そしてピアノ作品より無言歌集です。《無言歌集》は各6曲ずつの計8巻、全部で48曲残されており、当時のドイツロマン派音楽の中で作曲されたピアノの性格的小品集の中でも、最もよく知られた作品の1つとなっています。メンデルスゾーンが活躍した時代は、ちょうどピアノがブルジョワの家庭を中心に普及した頃で、家庭で気楽に演奏できる作品が多く作られた時代でもあります。《無言歌集》もその一つといわれ、比較的、弾きやすい作品が多くなっています。今回は、その無言歌集より2曲を、ピアノとヴァイオリンのヴァージョンでお聴き頂きました。


【オンエア楽曲】
♪M1メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調より 第1楽章
   ヴァイオリン:五嶋みどり
   指揮:マリス・ヤンソンス、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
♪M2メンデルスゾーン:無言歌集 第1巻より 第1番「甘い思い出」
♪M3メンデルスゾーン:無言歌集 第1巻より 第3番「狩りの歌」
   ヴァイオリン:ジャン=ジャック・カントロフ、ピアノ:ジャック・ルヴィエ

1月26日 モーツァルト

2014.04.15


1月最終週は、1月27日生まれのモーツァルト(1756〜1791)を久々に特集しました。ハイドン、ベートーヴェンと並び、ウィーン古典派三大巨匠の一人として活躍しました。幼い頃より神童として知られ、35年という短い人生で、未完成の断片も含めるとピアノ曲から交響曲、オペラまで幅広いジャンルに700曲ほどの作品を遺しています。35年という短い人生ですが、モーツァルトの生涯は大きく、生まれ故郷で過ごしたザルツブルク時代と20代後半からのウィーン時代に二分されます。ウィーンでは教会や宮廷に属することなく、フリーの音楽家として演奏会、オペラの作曲、レッスン、楽譜の出版などで生計を立てていました。日中は弟子たちのレッスンに費やされ、夜は毎晩のようにサロンでの演奏。という具合に大変過密なスケジュールを送っていたようです。オペラ《フィガロの結婚》、《魔笛》など成功を収めたものの、晩年は徐々に人気に陰りもみえ、生活も楽ではなかったようです。そしてモーツァルトの病気とその突然の死について真相は今なお解明されておらず、諸説あるようです。ご紹介した作品は20代前半で作ったソナタと、ウィーン時代、モーツァルトが最も成功を収めていた頃に作った協奏曲です。

【オンエア楽曲】
♪M1モーツァルト《ピアノ・ソナタ 第8番 K310》より 第1楽章
  ピアノ:横山幸雄
 (2013年9月の「ベートーヴェンプラス」@東京オペラシティコンサートホールでのライブ録音より)
♪M2モーツァルト《ピアノ協奏曲 第20番 K466》より 第2楽章
  ピアノ:フリードリヒ・グルダ
  指揮:クラウディオ・アバド、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1月19日 ゲーテと歌曲

2014.04.15


1月第3週の1月19日は、ドイツの文豪、ゲーテによる戯曲『ファウスト 第一部』が初演された日です。『ファウスト』といえば、悪魔に魂を売り渡したファウスト博士の伝説を基に、ゲーテが書きあげた戯曲。様々な芸術家に影響を与え、19世紀の作曲家たちも、こぞってこの物語に曲を付けています。ファウスト以外でも、ゲーテの詩や文学は、多くの作曲家のインスピレーションを刺激し、ゲーテの詩に基づく歌曲も数多く存在します。今回は、音楽の世界から少し枠を広げ、文豪・ゲーテの生涯、そしてゲーテに関連する音楽作品をご紹介しました。
ゲーテといえば、ドイツを代表する作家・詩人・科学者・政治家。シラーと共にドイツ文学における古典主義時代を築き、25歳のときに出版した『若きウェルテルの悩み』でヨーロッパ中にその名を轟かせました。大作『ファウスト』は20代から死の直前まで書き継がれたライフ・ワークです。その一方で自然科学者として「植物変態論」『色彩論』などの著作を残しています。文学から科学まで、あらゆる学問領域に精通し、政治家としても手腕をふるったゲーテ。その多彩な才能や生き方は多くの人を惹き付け、当時の音楽家にも多大な影響を与えています。今回ご紹介した『ファウスト』は、オペラだけでも50もの作品が作られました。
そのほか、多くの作曲家がゲーテの詩をもとにした作品(主に歌曲)を遺しています。中でも有名なのは、歌曲王として知られるシューベルトでしょう。生涯にわたり600曲もの歌曲を遺したシューベルトですが、そのうち約70曲がゲーテの詩がもとになっています。最後にご紹介したのは、シューベルトの代表作でゲーテの詩をもとにした『魔王』です。皆さん一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?


【オンエア楽曲】
♪M1シューマン:ゲーテの「ファウスト」からの情景より 序曲
  指揮:ヨハネス・ヴェルトナー、ポーランド国立放送交響楽団 
♪M2ベルリオーズ:<ファウストの却罰>より ラコッツィ行進曲
  指揮:レナード・バーンスタイン、ニューヨーク・フィルハーモニック
♪M3シューベルト:魔王(詩 ゲーテ、訳 松本隆)
  テノール:福井敬、ピアノ:横山幸雄

«Prev || ... 31 · 32 · 33 · 34 · 35 · 36 · 37 · 38 · 39 ·... | | Next»