ON AIR REPORT オンエアレポート

6月生まれの作曲家、シューマンに注目!

2016.06.13


梅雨に入り、蒸し暑いような寒いような毎日です。風邪などひかれませんように。
今晩もお聴きいただきありがとうございました!

さて、毎月1曲、セルヴィアーノ・グランド・ハイブリッドで横山幸雄さんがこの番組のために演奏した作品を
お送りしていますが、6月は、シューマンの「クライスレリアーナ」から第1曲でした。

そして今夜は、6月生まれのシューマンのピアノ曲を特集。
すべて横山幸雄さんの演奏でお楽しみいただきました。

1810年6月8日 ドイツのツヴィッカウに生まれたロベルト・シューマン。
法律を学んでいたものの、ピアニストを目指し挫折、作曲家、音楽評論家として
大活躍しました。
ピアノの師匠の娘、クララとの結婚は、猛反対する師匠ヴィーク氏との裁判にまで発展し
勝ち取ったというドラマチックな人生を歩んだ人です。

お送りした曲は・・
M1 シューマン 《クライスレリアーナop.16》より 第1曲
横山幸雄(セルヴィアーノ・グランド・ハイブリッドでの演奏)

M2 シューマン 《交響的練習曲》 作品13 より
横山幸雄(ピアノ)2015年9月「ベートーヴェンプラスVol.3」@東京オペラシティ・コンサートホール

M3 シューマン 《ピアノ・ソナタ 第1番》 より 第1楽章
横山幸雄(ピアノ)2013年のCD「横山幸雄プレイズ・シューマン」より

シューマンはピアニストになりたくてなれなかった人なので、そのピアノ作品には、
こんなことをピアノでやってみたい、という夢がつまっています。
同時代のリストやショパンの作品に比べて、技術的に無理のあるむずかしさを含んだ曲も多く、
果たして人間の指でどうやって弾くのだろう?!と思わせるパッセージも多いのだそうです。
しかし、うまく弾けるとたとえようもない魅力をもっているのがシューマンの作品です。

シューマンは、ある年にはピアノ曲、ある年には歌曲、と1つのジャンルを集中して作曲した
珍しいスタイルの作曲家でした。
46歳のとき、精神の病で亡くなっていますが、情熱的であったかと思うとすぐに気が変わる、
きまぐれな要素は若いときの作品にも感じられ、それが作品の魅力となっています。
自分が感じた音楽の魅力を作品にめいっぱい反映させてそうなっていること、
強い魅力を発散する作品が多いと改めて感じました、
と横山さんはおっしゃっていました。


世界のヴィオラ奏者、今井信子さんを迎えて2

2016.06.06


今週も、ヴィオラ奏者の今井信子さんをお迎えしました!

M1 ヘンデル/細川敏夫編曲 歌劇《リナルド》 より<私を泣かせてください>
    ヴィオラ:今井信子  (今井さんの著書「憧れ」に付録のCDより) 

M2 シューベルト 《冬の旅》より <からす>
    バリトン:フィッシャー=ディスカウ、ピアノ:ジェラルド・ムーア


1曲目にお送りしたヘンデルの「私を泣かせてください」、ヴィオラ独奏バージョンを聴いて、
まさに人間の声で歌っているようですね、と横山さん。
ヴィオラは人の肉声に近い中音域をもち、自分の感情を乗せやすい楽器です、
歌うことは音楽でもっとも大切ですね、と今井さん。

また、ヴィオラの形や大きさは、楽器の作り手によって違うので、
奏者は四苦八苦しながら弾きこなす、とても個人的な楽器で、
今井さんがご使用の1690年代のヴィオラは、楽器の個性が強くて1年ぐらいして
「やっと会話ができるようになった」、そうです。

シューベルトの「冬の旅」は、お父様の思い出につながる1曲、
「菩提樹」など有名な曲も多いですが、今井さんに「からす」を薦めてくれたそうです。
11月に伊藤恵さんのピアノと、今井さんのヴィオラで全曲を演奏予定です。

横山さんは、ヴィオラの人たちは仲がいいですね、
というと、演奏者どおしでごはんを食べたり、一緒に曲を弾くことも多いですよと今井さん。
ピアニストは一人で行動することも多いのでうらやましそうでした。

今井さんはソロだけでなく、アンサンブルにも愛着があり、
若いときに在籍したフェルメール弦楽四重奏団以来、ずっとカルテットをまたやりたい
と願っていたそうです。
現在は、ソロとして教える側として活躍するという同じ境遇のメンバーで集まる
ミケランジェロ・カルテットを楽しんでいらっしゃいます。

今年は、武満徹さんの没後20年のコンサートで「ア・ストリング・アラウンド・オータム」を
ドレスデンで弾いたり、バルトークをハンガリーでオーケストラと共演したり、
日本、アメリカ、スペインと世界を飛び回る日々だそうです。



ヴィオラ・スペースの開催にあわせてお忙しい所、スタジオにお越しいただいて
スタッフ一同感激いたしました!ありがとうございました。






世界のヴィオラ奏者・今井信子さんを迎えて 1

2016.05.30


今夜もお聴きいただきありがとうございました。

2週間にわたってヴィオラ奏者の今井信子さんをゲストにお迎えします。
今井さんは、桐朋学園で、ヴァイオリンとヴィオラを学び、
大学卒業後、イェール大学大学院、ジュリアード音楽院を経て、
1967年ミュンヘン、68年ジュネーヴ両国際コンクール最高位入賞。
フェルメール四重奏団に在籍したのち、ヴィオラのソリストに。
現在は、日本はもとより世界のヴィオラ界を牽引する存在で、
これまで40タイトルを超えるCDをリリース、
ソロ、室内楽、オーケストラで幅広く活躍され、国内外で後進の指導にも尽力されています。

横山さんとは、上野学園の先生同志という間柄でもあり、かねてより、
ぜひゲストに来ていただきたいとおっしゃっていた憧れの方でした。
今夜の1曲目は、石橋メモリアルホールでの初共演から、超豪華な四重奏。

M1 ブラームス《 ピアノ四重奏曲 第1番 op.25 》より第3楽章
   矢部達哉(ヴァイオリン)、今井信子(ヴィオラ)、原田禎夫(チェロ)、横山幸雄(ピアノ)
 (『上野学園 石橋メモリアルホール・オープニング・ガラ・コンサート』[2010年10月リリース]より)

ヴィオラの魅力は、あまり表に出なくても、音の味わいや色あいが深く、相手に先行して音楽をリードできるところ、
私は、ヴィオラを弾くと自分を解放できました、取りつかれてしまったのです。
今でこそ、ヴィオラのために現代曲が毎日のように作曲され、編曲(トランスクリプション)も多くなされて
ヴィオラは独立した楽器とみなされていますが、昔はそうではなかったんです、と今井さんはおっしゃっていました。


M2 ヴィヴァルディ 《ヴィオラ・ダモーレ協奏曲 ニ短調》 より 第1楽章
  パリス・マッシモ(ヴィオラ・ダモーレ)、 イ・ムジチ合奏団

2曲目は、開催中の<ヴィオラ・スペース2016>で演奏される曲。
<ヴィオラ・スペース>は、今年25回目を迎える、世界でも珍しいヴィオラの祭典、
開催のきっかけとなるリサイタルから、現在も、企画・演奏、すべてにわたって今井さんが中心となって
作り上げています。世界で活躍する人材を出している成果は大きい、とお感じだそうです。

今回のヴィオラ・スペースのテーマは、「ヴィオラの誕生!バロックへの回帰」。
当時の楽器、ヴィオラ・ダモーレも、今回今井さんは演奏します。
ヴィオラ・ダモーレは、ヘッドのところに天使の彫刻があり、共鳴弦をもつユニークな楽器。
1曲ごとに調弦がちがいます。バロックの時代はそれが普通だったそうです。
今回はさらに、ピッチを半音下げてバロック時代の本質に迫ります。
ピアノで、ドのところを弾いているつもりが、ちがう音がでたら混乱して弾けませんね!と
横山さんも興味津々でした。

来週も、今井信子さんにお話しを伺います!

今井信子さんと


5月22日は、パガニーニ特集

2016.05.23


今夜もお聴きいただきありがとうございます!

今回は、5月27日に命日を迎えるニコロ・パガニーニ(1782年ー1840年)に注目しました。

パガニーニは19世紀を代表するイタリアのヴァイオリニストで、自ら演奏するための作品を
多数作曲しました。
聞き手を圧倒する超絶技巧で、悪魔に魂を売り渡してそれを手に入れたにちがいない、
と噂されたほど。同時代、そしてのちの音楽家にも大きな影響を与えました。

今夜は、パガニーニの代表的な作品「24のカプリース」から有名な24番、
そして、この24番の主題を用いた多くの作品から2曲ご紹介しました。

M1 パガニーニ 《24のカプリース》作品1 より 第24番 イ短調
   五嶋みどり(ヴァイオリン)

M2 ラフマニノフ 《パガニーニの主題による狂詩曲》 作品43 より 第18変奏
   ラフマニノ自身のピアノ、ストコフスキー指揮、フィラデルフィア管弦楽団

M3 ブラームス 《パガニーニの主題による変奏曲》作品35 より
  フランソワ=ルネ・デュシャーブル(ピアノ)

パガニーニの演奏を直接聞いた同時代の音楽家、
リスト、ショパン、シューベルト、シューマンなどが、自身の人生が変わるほどの衝撃を受けています。
そして、ブラ―ムス、ラフマニノフなどのちの音楽家も、パガニーニの主題をモティーフにして
たくさんの作品を産みました。
インスピレーションがわきやすい主題といえると思いますが、多くはそこから自分なりの作曲を
展開しているのに対して、リストの作品だけは珍しいタイプですね、と横山さん。

パガニーニは、技術が他人に知られるのを好まなかったため、生前はほとんど自作を出版しませんでした。
オーケストラにすらパート譜を配るのは演奏会の数日前(時には数時間前)、
演奏終了後は配ったパート譜をすべて回収したというほどの徹底ぶり。
パガニーニ自身が死の直前に楽譜をほとんどを焼却してしまったので、大部分の作品は廃絶しています。

自分が死んだあとなら、技術が盗まれるといっても別にかまわないのではないかなと思います。
ショパンとパガニーニ、ショパンはピアノのために作曲し、パガニーニはヴァイオリンのために作曲、
そこは似ていますが、ショパンは「遺作」もたくさん残っている、その点は違いますね、と横山さんはおっしゃっていました。

来週は、世界的なヴィオラ奏者、今井信子さんをお迎えします!
今井さんは、世界でも珍しいヴィオラ音楽の祭典「ヴィオラ・スペース」を1992年に始められ、
今年は25回目です。
大阪では、5月25日にフェニックスホールで、
東京では5月28日と6月1日に上野学園 石橋メモリアルホールでコンサートが行われます。
お楽しみに!

5月15日は、5月生まれのブラームス特集!

2016.05.16


こんばんは、今夜もお聴きいただきありがとうございました。

今回は、5月7日生まれのブラームスに注目しました。
1833年ドイツのハンブルクに生まれ、20歳で出会ったシューマンは、ブラームスの才能を高く買い、
世に紹介した恩師。シューマンは若くして亡くなってしまいますが、その後もブラームスは
シューマン一家との交流を続け、特にクララ・シューマンとは、深い絆で結ばれていました。

1862年29歳からウィーンに定住、39歳でウィーン学友協会芸術監督に就任しますが、
負担の重さに42歳で辞任。43歳でようやく「交響曲第1番」を書きあげます。

晩年は、室内楽の傑作、ピアノ作品の小品を残しています。
1896年にクララ・シューマンが亡くなると、
翌1897年4月3日、63歳で、ブラームスも肝臓がんで亡くなりました。

今回は、ブラームスの生涯の若年、熟年、晩年、3つの時代の代表作をお送りしました。

M1 ブラームス《ピアノ・ソナタ 第2番 op.2》より 第1楽章
   横山幸雄(ピアノ) 2014年9月「ベートーヴェン・プラス vol.2」@東京オペラシティのライブ録音

M2 ブラームス 《ピアノ協奏曲 第2番》 より 第1楽章
   ピーター・ゼルキン(ピアノ)、ユージン・オーマンディ(指揮)、フィラデルフィア管弦楽団

M3 ブラームス 《6つの小品》より第2番<間奏曲 イ長調>op.118-2
   横山幸雄(ピアノ)  この番組のための東京FMのスタジオでライブ収録

M1は、実際はブラームスが最初に作曲したピアノ・ソナタ。
出版に際して、クララ・シューマンに献呈しています。
ブラームスのピアノ・ソナタは若い頃に第3番まで作曲、後年は1曲も作っていません。

M2のピアノ協奏曲は、50分ある大作で、オーケストラもピアニストもここぞというときに演奏する
曲だそうです。横山さんは、デビュー5周年記念に、1番と2番の演奏会を行いました。

M3は、晩年の作品です。
18歳以前の楽譜はすべて破棄してしまったという1面も。年代によって作風がちがう作曲家です。

★セルヴィアーノ・グランド・ハイブリッドでこの番組のために横山さんが演奏した作品を
聴いていただくことができます。右側のバナーにぜひアクセスしてみてくださいね!


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