ON AIR REPORT オンエアレポート

バカンス・旅にまつわるピアノ曲

2016.07.18


今夜もお聴きいただきありがとうございます。

フランスでは、7月14日のフランスの建国記念日、「パリ祭」は、
バカンス・シーズンの始まりでもあるそうです。
そこで、今日は、バカンスで生まれたピアノ曲をお届けしました!

<プレイリスト>
M1 ショパン 《24の前奏曲op.28》 より第15番「雨だれ」
横山幸雄(ピアノ)、アルバム『シェール・ショパン』(ピアノ)

M2 ブラームス 《2つのラプソディop.79》 より 第2番
ラドゥ・ルプー(ピアノ)

M3 スクリャービン 《24の前奏曲 op.11》 より 第12曲、第14曲
横山幸雄(ピアノ)、”ボヤージュ”第3回のライブ録音(2012年6月7日三鷹市芸術文化センター)


M1の「雨だれ」は、ショパンが、ジョルジュ・サンドと付き合い始めたころで、療養をかねて滞在した地中海のマヨルカ島で作曲されました。
晴れる日が多いことで有名なマヨルカ島ですが、あいにくの雨続きで生まれたのがこの名曲。サンドとの絆を深めた旅、中間部が雨のしずくのようです。

M2の「2つのラプソディ」を作曲したブラームスは、30代でウィーンに定住してからは夏のあいだは1年の例外もなく
バカンスにでかけています。この曲は1877年から79年にかけて、オーストリア南部の風光明媚な保養地、ペルチャッハで作曲されました。
クララ・シューマンにペルチャッハから「たくさんの旋律が飛び交っていて、
それらの旋律を踏みつけないようにしなければならない」と書き送っています。

M3のロシアの作曲家・スクリャービンは、ショパンの前奏曲に大きな影響を受けていると言われています。
第12曲、第14曲は、23歳のときの最初の西欧旅行で作曲されました。
第14曲はスイスのバステイで橋の上に立っていた時アイデアがうかび、ドレスデンで作曲しました。

地中海の沿岸、孤島、スイスやオーストリア・・バカンスの目的地はさまざまですが、
集中できる環境を整え、非日常の生活、異国の文化から刺激をうけて多くの名曲が生まれています。

横山さんは、夏は太陽と海をもとめてのバカンスがお好みですが、
まだ作曲に集中できるほど長いバカンスは取れたことはない・・・んだそうです。

来週は、ブゾーニとバッハに注目します!

7月生まれの作曲家、ヤナーチェクに注目!

2016.07.11


今夜もお聴きいただきありがとうございます。

今回は、1854年7月3日生まれのチェコの作曲家、レオシュ・ヤナーチェクの
作品をお送りしました!

<プレイリスト>
M1 ヤナーチェク 《ピアノ・ソナタ「1905年10月1日の街角で」 》より第1楽章 <予感>
ヨゼフ・パーレニチェク(ピアノ)

M2 ヤナーチェク 《ヴァイオリン・ソナタ》 より第1楽章
ヨゼフ・スーク(ヴァイオリン)、ヨゼフ・ハーラ(ピアノ)

M3 ヤナーチェク 《シンフォニエッタ》 より第1楽章
クリーブランド管弦楽団、ジョージ・セル(指揮)

M1は、ヤナーチェク唯一のピアノソナタ。
チェコでの民族復興運動の機運が高まる中、1905年ブルノでチェコ人の青年が武力抗争の犠牲となり亡くなってしまった事件を受け、書き上げられた作品。
当初は3楽章構想だったが初演直前に最終楽章の譜面を焼き捨てたという。初演も満足行かず、自筆譜自体を捨ててしまったが、初演で演奏したピアニストが写しを持っており、
初演から18年後にようやく出版されることとなりました。日々の挫折や希望が直接作品に表れています、と横山さん。

M3は、村上春樹『1Q84』の中でこの曲が使われていることから、近年とりわけ知名度が増しました。


ヤナーチェクが活躍した19世紀後半から20世紀前半は、音楽はロマン派の時代が終わり、新しい時代に移り変わろうとしていました。
西ヨーロッパ中心から、周辺諸国の音楽家が目覚ましい活躍を見せ始めた時代です。
「国民楽派」「民族主義」といわれるこの流れは、ポーランドのショパン、ハンガリーのリスト、ロシアのグリンカなど
19世紀の初めに生まれた作曲家たちが第一世代。
全盛期の第二世代は、ロシアのチャイコフスキーやムソルグスキー、フィンランドのシベリウス、
ノルウェーのグリーグ、チェコのスメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェクなど。
第三世代は、ハンガリーのバルトーク、スペインのファリャ、ブラジルのヴィラ・ロボスなどなど

ヤナーチェクは、モラヴィアの民族音楽にこだわって作曲をつづけました。
20歳で音楽の勉強をするためにライプツィヒやウィーンに行くものの、満足できずにチェコのブルノに戻ります。
30代から故郷モラヴィアの民族音楽を収集し始めます。民族復興運動、政治にも関心をもちインスパイアされた作品も。
そして、50代以降精力的に作曲活動を行い、自らの作風を発展させました。

そうした熱い、魂の叫びが作品からも聞こえてくる作曲家ですね、と横山さんはおっしゃっていました。

ドビュッシーとラヴェルの「水」にまつわる作品を聞き比べ

2016.07.04


今夜もお聴きいただきありがとうございます。

7月のカシオのCELVIANO Grand Hybridでの横山さんの演奏は、
ドビュッシー 《映像 第1集》より 第1曲<水の反映>を
ウィーン・グランドの音色で お送りしました。

M1 ドビュッシー 《映像 第1集》より 第1曲<水の反映> /横山幸雄
  CELVIANO Grand Hybrid、TOKYO FMホールでのこの番組のためのライブ録音

M2 ラヴェル 《水の戯れ》/横山幸雄
  1994年のアルバム「イマージュ」より

M3 ラヴェル 《夜のガスパール》 より第1曲<オンディーヌ>/横山幸雄
  1994年のアルバム「イマージュ」より

M4 ドビュッシー 《前奏曲集第2巻》 より<オンディーヌ>/横山幸雄
  2012年6月東京三鷹市芸術文化センターでの「ヴォヤージュ第3回」より

ドビュッシーは、ラヴェルの「水の戯れ」に影響を受けて、
「水の反映」を作曲したと言われています。
ラヴェルは1901年26歳のとき「水の戯れ」を作曲。若手作曲家として成功していましたが、
アカデミズムの世界のローマ賞の1位だけはとれない、という時期でした。
一方、ドビュッシーは、1905年43歳『映像(イマージュ)第1集』の第1曲である「水の反映」を作曲しました。

ラヴェルとドビュッシーの「オンディーヌ」の聞き比べ。
ラヴェルは緊張の連続、ドビュッシーは、音と音の間合いや響き
ー余白の部分に音楽が潜んでいる、といった特徴が感じられました。

2人は長い歴史の中では同じ時代の似ている音楽家ですが、2人の中では全く違う個性が感じられます。
今夜お送りしたCELVIANO Grand Hybridでの演奏は、右側の<生演奏音源>のバナーでお聴きいただけます。


8月3日の大阪での公開収録決定!ご応募お待ちしています!


来週の「ピアノでめぐり逢い」、TOKYO FMは特別番組のため、7月10日(日)25:00−25:30
(7月11日(月)の1時ー1時30分)の放送になります。

ベルギーと日本の友好150周年、セザール・フランクに注目!

2016.06.27


今夜もお聴きいただきありがとうございます。
ベルギーのブルージュでは、「日本伝統文化芸術祭」がこの週末開かれています。
これは、ベルギーと日本の友好150周年を記念しての行事。

ベルギー出身の音楽家には、作曲家のセザール・フランク、
ヴァイオリニストのイザイ、指揮者のアンドレ・クリュイタンスなどがいます。

今回は、ちょうど日本とベルギーのお付き合いが始まった1866年をはさんで、
1822年ベルギーで生まれ、フランスで活躍、1890年に亡くなった作曲家、セザール・フランクを特集しました。

<プレイリスト>
M1 フランク 《前奏曲、コラールとフーガ》 よりプレリュード
  ベルトラン・シャマユ(ピアノ)
M2 フランク 《ピアノ五重奏曲》 より 第1楽章
  ムーザ・ルバツキーテ(ピアノ)、ヴィリニュス弦楽四重奏団
M3 フランク 《ヴァイオリン・ソナタ 》 より 第4楽章
  矢部達哉(ヴァイオリン)、横山幸雄(ピアノ)アルバム『エシェゾー』(1997)

M1は、1884年、62歳の作曲。管弦楽曲、室内楽曲、宗教音楽、さらに歌曲など幅広く作品をのこしたフランク。
ピアノ曲は若い頃に集中してつくっていますが、途中ブランクを挟みます。62歳のフランクが実に40年ぶりに作曲したピアノ曲です。
M2も、円熟期、1878〜1879年にかけて作曲。(56−57歳)。
サン=サーンスに初演で演奏してもらい、献呈しようとしましたが、サン=サーンスは曲に不満で舞台にフランクの献辞の書かれた自筆譜を残したまま立ち去ります。
軽妙でおしゃれなサン=サーンスと、重厚なフランク、二人の作風の違いを考えれば、この結果も納得かも。
M3も、1886年作。近代ヴァイオリン・ソナタの最高傑作の一つに数えられる。
ベルギーの後輩であるヴァイオリニスト、ウジェーヌ・イザイ(ヴァイオリニスト)に結婚祝いとして作曲され献呈された。
フランクの生前に好評を博した、数少ない一曲となった。

フランクは、幼い頃から音楽の才能を発揮し、12歳でリエージュ音楽院を卒業、パリ音楽院でも数々の賞を受賞しますが、
作曲家を希望、教会のオルガニストをしながら質素な生活をしていました。
次第に認められ、パリ音楽院で教鞭をとり、1871年49歳でサン=サーンスとともにフランス国民音楽協会を設立、
初代会長となります。
1872年、パリ音楽院のオルガン科の教授に就任。多くの弟子をそだてました。
大器晩成、遅咲きの人生、作曲家としての名声もその死後に高まった芸術家です。

フランクは、ショパンやリストより一回り後輩、ロマン派の時代の作曲家です。
ワーグナーなどドイツ系ロマン派の強い影響を受け、半音階進行、転調を多く用いた作風です。
オルガニストなので、ピアノ曲であっても、重厚感や宗教的な印象がある、と横山さん。

M3の「ヴァイオリン・ソナタ」は、その重厚感に外交的な部分ももった華やかな作品で、演奏する機会も
多いとのこと。現在演奏される作品は決して多くはありませんが、今夜は個性が強い作曲家だと改めて感じました、と
横山さんはおっしゃっていました。


横山幸雄ニューアルバム『アンプロンプチュ』特集!

2016.06.20


今夜もお聴きいただきありがとうございました。
今回は、6月8日にリリースされたばかりの横山幸雄ニューアルバム『アンプロンプチュ』を
ご紹介しました!

タイトルになっている「アンプロンプチュ」はフランス語で
「即興曲」という意味。シューベルトのピアノ作品を代表する即興曲8曲が収録されています。
そこからお送りしたのは・・・

M1 シューベルト 《4つの即興曲 作品90 D.899》より 第3番
M2 シューベルト 《4つの即興曲 作品142 D.935》より第4番
M3 シューベルト 《4つの即興曲 作品142 D.935》より第1番
いずれも 横山幸雄(ピアノ)アルバム『アンプロンプチュ』SONY MECO1034 より

横山さんにとって、初のシューベルト・アルバム!
シューベルトは、ベートーヴェンより27歳年下ですが、ベートーヴェンを慕い、尊敬し、崇拝し、
ベートーヴェンが亡くなった翌年、31歳の若さで亡くなっています。
早熟の天才で、ベートーヴェンと同じ数のシンフォニーを作曲、
歌曲やピアノ曲、室内楽にも傑作を残しました。

ベートーヴェンとショパンの間に生まれ、作曲のスタイルもその中間に位置づけられます。
ベートーヴェンは「ピアノ・ソナタ」を完成させ、ドラマチックな傑作を多く残しましたが、
シューベルトはやさしい、自然な流れをもつ作品、得意の歌の要素がピアノ作品にも存分に感じられる、
そんな作曲家です、と横山さん。

「即興曲」とは、ソナタ形式をもたない作品で、出版社がつけたタイトルですが、
シューマンは、今夜お送りしたM2、M3を含む作品142についてひとつのソナタではないかという説を唱えました。
横山さんは、4つで1つの組曲と考えていたことはまちがいないと思うが、ソナタとしての作品もシューベルトは書いているし、「即興曲」はソナタより自由な感じがする、という見解を持っているそうです。

必ずしも弾くのが難しいという作品ではなく、学習者にも頻繁にとりあげられます、
僕も小学生の時から演奏していますが、こうしたシンプルな作品に秘められた美しさを
お聴きいただければと思います。


横山幸雄『アンプロンプチュ』
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