ON AIR REPORT オンエアレポート

【前編】『トーク&ライブ・イン・大阪』イベントレポート

2016.08.22


大阪で初となる公開収録



『天才ピアニスト 横山幸雄のピアノでめぐり逢い』。2016年8月3日に大丸心斎橋劇場にて大阪での初めての公開収録が行われました。会場には抽選で選ばれたリスナー200人が来場し、横山幸雄さんによるCELVIANO Grand Hybridの生演奏とトークを楽しみました。途中リスナーからの質問やメッセージのコーナーもあり、和やかな雰囲気で行われました。またロビーにはCELVIANO Grand Hybridの試奏ブースも設けられ、多くのリスナーが楽しむ姿がみられました。



バッハからベートーヴェン

まず1曲目に演奏されたのはバッハの《イタリア協奏曲 BWV971》。バッハが生まれた17世紀、芸術の中心はイタリアで、「協奏曲」という形式もイタリア生まれです。本来「協奏曲」といえば独奏楽器とオーケストラが共演する演奏形態のことですが、本作はチェンバロ1台で演奏されます。もともとこの作品は「二段鍵盤のチェンバロ」のために書かれていて、二段の鍵盤を使い分けることで、異なる響きでダイナミックな合奏部分と技巧的なソロ部分の両方を表現することが可能となっています。音量も音色も幅広いレンジを持つ近代的なピアノでは、チェンバロ以上に豊かな表現が可能となり、横山さんいわく「一人アンサンブル」が存分に楽しめる作品となっています。急?緩?急の3楽章構成となっており、バロック時代に続く古典派のピアノ・ソナタの源流ともいえる作品です。



続いてはバッハの時代から約1世紀のちに活躍したベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ第14番「月光」》。ちょうど楽器としてのピアノが急速に進歩し大きく発展した時代に生まれたベートーヴェンは、生涯で32曲のピアノ・ソナタを残していますが、第14番「月光」はちょうど30歳を超えたころの作品です。20代後半から耳の病が進行していったといわれるベートーヴェン。横山さんは、「演奏家は頭の中で鳴っている音を聴き、演奏するときも常に自分の音を聴きながら確認する。それが不可能になるというのは音楽家にとっては致命的。そのような絶望感と、そこに至ったからこそ音楽に救いを求めていく…そんな両面が感じられる作品」と解説。横山さんにとって、ベートーヴェンはショパンと並び演奏活動の大きな柱であり、ライフワークとなっている作曲家。白熱した演奏に会場も熱狂に包まれました。



後編は来週オンエアいたします。お楽しみに!

「ベートーヴェン・プラスVol.4」予習第一弾!

2016.08.15


残暑お見舞い申し上げます。

9月22日に東京オペラシティコンサートホールで行う横山幸雄「ベートーヴェン・プラス VOl.4」。コンサートまでに3回の予習スペシャルを番組でもお送りする予定です。

2013年よりスタートした「ベートーヴェン・プラス」も今年で4回目となります。ベートーヴェンが生誕250年を迎える2020年に向かって年1回のペースで、作品番号が付けられて出版された全曲と、ベートーヴェンに関連する他の作曲家の作品をあわせて毎回テーマを決めて進めています。今年は、デビュー25周年なので豪華に、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲を演奏します。

共演は、トリトン晴れた海のオーケストラ。コンサートマスターは矢部達哉さん。指揮者なし、アンサンブルのスタイルでお送りします。

<今夜のプレイリスト>
M1 ベートーヴェン 《 ソナタ第5番 op.10-1》より 第1楽章 
横山幸雄(ピアノ)、2015年「ベートーヴェン・プラスVol.3」のライブ録音。

M2 ベートーヴェン 《ピアノ協奏曲 第1番》より第1楽章 
横山幸雄(ピアノ)、ジャパン・チェンバー・オーケストラ (2005年『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集』のアルバムより)

M3 ベートーヴェン《ピアノ協奏曲第2番》より 第3楽章
横山幸雄(ピアノ)、ジャパン・チェンバー・オーケストラ (2005年『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集』のアルバムより)

昨年の演奏会からお聴きいただいた「ピアノ・ソナタ第5番 作品10-1 」は、1795年〜97年、ベートーヴェンが25歳頃に作曲されています。
同じころ「ピアノ・ソナタ第4番」「ピアノ協奏曲第1番」「ピアノ協奏曲第2番」も書いています。耳の不調が現れる前の、若々しい、チャーミングな作品群。
「ピアノ協奏曲第1番」「第2番」は、出版の順番でこう名付けられていますが、作曲は、2番が先です。演奏の順番も悩むところですが、今回は、ベートーヴェンが堂々とした1番を自分の最初のピアノ協奏曲として世に出したいという彼の意思を尊重して番号通りに演奏します。

ベートーヴェンの時代は、ピアノという楽器が飛躍的な発展を遂げました。ピアノの魅力をベートーヴェンも感じながら作曲し、楽器製作者たちも競って開発しました。

来週、再来週は、先日の「ピアノでめぐり逢い トーク&ライブ・イン・大阪」の演奏を中心にお送りします。
ご応募、ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました!
お楽しみに!



8月生まれの作曲家、アントニオ・サリエリ

2016.08.08


今夜もお聞きいただきありがとうございます。

1750年8月15日イタリア生まれ、作曲家、指揮者、教育者として活躍したアントニオ・サリエリに注目しました。
ベートーヴェンやリストの師であるサリエリは、映画『アマデウス』のイメージで、モーツアルトを毒殺した悪役のイメージですが、実際はどうだったのでしょうか?

<プレイリスト>
M1 サリエリ 作曲 《ダナオスの娘たち》 より 序曲
ジャンルイジ・ジェルメッティ(指揮)、ローマRAI(らい)交響楽団

M2 サリエリ 作曲《ピアノ協奏曲 ハ長調》 より 第1楽章
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)、コンチェルト・ケルン

M3 ベートーヴェン 作曲《ヴァイオリン・ソナタ 第3番》 より 第3楽章
イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)、ヴラディ―ミル・アシュケナージ(ピアノ)

サリエリは、当時の音楽家の最高位である宮廷楽長として活躍し、生涯人気を誇った作曲家でした。
その作曲の中心は、オペラで、生涯でおよそ40の作品があります。中でも最も成功した作品のひとつが「ダナオスの娘たち」。
1784年、サリエリにとって初めてのパリでの公演だったため、当時絶大な人気のグルックが自分の作品として発表し、歓迎されたあとで、実はサリエリの作品だと明かしたとされます。

サリエリは、モーツァルトより6歳年上ですが、35歳で亡くなったモーツァルトよりはるかに長く、75年の人生を送りました。2人は常にライバルという形で表現されますが、実際は、サリエリが積極的にモーツァルトの作品を取り上げて指揮、モーツァルトもオペラ「魔笛」に招待し、サリエリが見に来て、ほめてくれた」と手紙に書いています。モーツァルトの死後、「レクイエム」を初演。今年の2月には2人の共作が発見されています。確かに、モーツァルトは、サリエリの存在のために宮廷楽長につけなかったため、サリエリの悪口を書いた手紙も残っていますが、少なくともサリエリの方は敵意を抱くようなことはなかったというのが現在の見解です。

サリエリは、ベートーヴェン、ツェルニー、シューベルト、フンメル、モシェレス、リスト、モーツァルトの息子のフランツ・クサヴァーなどの師でもありました。

横山さんは「サリエリの作品は、モーツアルトかな?ベートーヴェンかな?という部分がありますが、流れがぶつぎれで、モーツァルトのような空間の緊張感や、ハイドンのような意外性、ベートーヴェンのメッセージ性どの点も及ばず平均的な作曲家のイメージです。だからこそ耳なじみがよく一般に支持されたのかもしれません。ベートーヴェンは、「ヴァイオリン・ソナタ」の1番から3番をサリエリに捧げています。人格者だったのかもしれませんね。」と話していました。

ギリシア神話とクラシック

2016.08.01


こんばんは、TOKYOFM、FMOSAKAに加えて、今回からFMFUKUOKAでもお聴きいただけることになりました!
どうぞよろしくお願いします!

リオデジャネイロでのオリンピックも近づいてきました。近代オリンピックは、古代ギリシアのオリンピアの祭典をもとに始まっていますが、これはギリシア神話に起源があると言われています。ギリシア神話は、クラシック音楽にも深く関連しています。今日は、「ギリシア神話」にまつわる音楽に注目しました。

<プレイリスト>
M1 グルック作曲、 歌劇《オルフェオとエウリディーチェ》より<精霊の踊り>
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

M2 ドビュッシー(横山幸雄編曲) 《牧神の午後への前奏曲》 
横山幸雄(ピアノ)(1994年のアルバム『イマージュ』より)

M3 ドビュッシー 《前奏曲集 第1巻》 より第1曲<デルフィの舞姫>  
横山幸雄(ピアノ)、東京 三鷹市芸術文化センター、Voyageシリーズ第2回(2012年3月4日)のライブ録音

M1のグルックはオーストリアとフランスで活躍したオペラ作曲家。マリー・アントワネットの音楽教師でもありました。「オルフェオとエウリディーチェ」は、竪琴弾きの夫オルフェオが、死んでしまった妻エウリディーチェを冥界から連れ戻す途中、決して振り返ってはならぬ、と神から言われていたにも関わらず、不安にさいなまれ振り返ってしまい、妻は絶命する、しかし愛の神によって再び命を取り戻す、という物語です。初演は1762年のウィーン。本作は音楽界に衝撃を与え、オペラを改革した作品。当時は歌手至上主義のイタリアオペラが流行していましたが、グルックは音楽とドラマ、ソロ歌手と合唱が一体となった作品にしたのです。また、このオペラは日本人が最初に上演した本格的な歌劇として、日本洋楽史上においても重要な作品です。

M2は、もとは1892-1894年にかけて作曲された管弦楽作品。 詩人マラルメ の『牧神の午後』(『半獣神の午後』)に感銘を受けて書かれた作品。 " 夏の昼下がり、牧神が昼寝のまどろみの中で官能的な夢想に耽る"という内容で、牧神の象徴である「パーンの笛」をイメージする楽器としてフルートが重要な役割を担っています。 作曲者による二台ピアノ用編曲(1985年出版)、モーリス・ラヴェルによる連弾用編曲(1910年出版)、イギリス出身のピアニスト、レナード・ボーウィックによるピアノ独奏用編曲(1914年出版)も知られています。今夜は編曲:横山幸雄版をご紹介しました!横山さんは、オーケストラの個々の楽器の音色や雰囲気にピアノでどこまで近づけるかを追求して編曲したそうです。

M3も、ドビュッシー。各曲のタイトルは、固定観念に縛られないようにとドビュッシーの配慮から、各曲の終わりの余白に小さく書込まれました。第1集の冒頭を飾る本作は、ギリシャの古い都であるデルフォイの有名なアポロンの神殿の遺跡で、神に捧げる踊りを柔らかく描いています。ルーブル美術館の彫刻にインスピレーションを得て作曲したと言われます。

ギリシア神話を題材にした音楽は、ほかにも、ベートーヴェン《アテネの廃墟》《プロメテウスの創造物》、シューベルト《ギリシャの神々》、ラヴェル《ダフニスとクロエ》など数多くあります。そして、たとえば、音楽(ミュージック)、アミューズメント、ミュージアム、モザイクなど学問や芸術をつかさどる9人の女神たち<ミューズ>を語源にした言葉もたくさんあります。









バッハの校訂や編曲を行ったプゾーニに注目

2016.07.25


こんばんもお聴きいただきありがとうございます!

今回は、J.S.バッハとバッハの作品の校訂や編曲を数多く行ったイタリアの作編曲家、ピアニストのプゾーニに注目。
プゾーニは、今年生誕150周年、そして、7月27日が命日。翌28日はバッハの命日でもあります。

<プレイリスト>
M1 J.S. バッハ《平均律クラヴィーア曲集 第2巻》より第14番
  スビャストラフ・リヒテル(ピアノ)
M2 J.S.バッハ 《ゴルドベルク変奏曲》
  横山幸雄(ピアノ)
M3 J.S.バッハ(ブゾーニ版) 《ゴルドベルク変奏曲》より
  サラ・デイヴィス・ビュークナー(ピアノ)
M4 J.S.バッハ/ブゾーニ 《シャコンヌ》
  横山幸雄(ピアノ)

バッハの時代は、現代の形のピアノが発明されたばかりで、バッハがピアノを弾いたことがあるかはわかっていません。
「ゴルトベルク変奏曲」は2段鍵盤のチェンバロのために作曲され、1段のピアノ弾くと手の交差がうまくいきません。
とはいえ、楽器がちがっても作品の素晴らしさが変わらないのがバッハの作品のすばらしいところです。

バッハのオリジナルは、最初と最期の美しいアリアのあいだに30の変奏曲が置かれ、演奏にもよりますが1時間超の大作です。主題を発展させて変化に富んだ表情を見せる変奏曲はそれぞれに個性があり、どの変奏もゴルトベルクに不可欠、と思われます。

さて、プゾーニは、この「ゴルトベルク変奏曲」を校訂、というよりは「編曲」に近い作業、30の変奏曲のうち9つを省いて、およそ30分の作品にしてしまいました。
ブゾーニは、ゴルトベルグ変奏曲を校訂した際、楽譜の序文に次のように記しています。

「この傑出した作品をコンサートホール用にするには、短縮されるかパラフレーズされる必要がある。こうして作品を、聴き手の鑑賞能力や演奏者の力量にふさわしいものにするのである。聴き手の耳に堪えるようにするには、繰り返しの省略を推奨したい。さらに、公の場での演奏ではいくつかの変奏を完全に省くことが適切だと考える」

「バッハが聞いたらなんと思うのでしょうね・・」、「バッハのエッセンスを利用したプゾーニの作品として、超絶技巧を堪能することもできますね」と横山さん。

最後にお送りしたバッハ作曲、プゾーニ編曲の「シャコンヌ」は、「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番(BWV.1004)を、ピアノ用に編曲した有名な作品です。横山さんは、ヴィルトーゾ名曲集『ラ・カンパネラ』の1曲目に収録しています。「プゾーニのおかげでピアノでは弾けなかった作品が弾けるようになったという醍醐味が生まれるわけですね」とのことです!

大阪での公開収録「ライブ&トーク」にたくさんのご応募ありがとうございました!発表は招待状の発送をもってかえさせていただきます!


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